「地方から上京してきた人あるある」のひとつに、それまで共通語だとばかり思っていた言葉が、実はふるさとローカルな方言だと知って、びっくりするというものがある。
例えば、佐賀県では「あの赤ちゃんやらしかねー」というふうに、「かわいい」の意味で「やらしい」という言葉が使われるが、方言であることを知らずにいると、恥ずかしい思いをすることもあったりする。
そういった方言を一堂に集めて一冊にまとめたのが先日発売された『誤解されやすい方言小辞典』(篠崎晃一/三省堂)。
本書では、共通語とまるで異なる意味で使われている各地の方言が、181語収録されている。飲み会の席などでのちょっとした話題の種や、トリビア自慢に使えそうな面白い方言が満載で、読むだけでも楽しい。
今回は、本書の中から筆者の視点で面白いと感じた方言を、7つピックアップして紹介する。
●「おひめさま」(熊本)
熊本で「おひめさま」と言ったら、まぶたに細菌が感染して起こる炎症の「ものもらい」を指す。「ものもらい」は全国各地に様々な方言があるが、病名を口に出すとその病にかかるという言い伝えから、あえて口にするのも憚られる言葉をあてている所もある。
「おひめさま」も似た発想で、庶民には遠い存在である「お姫様」の言葉をあて、病とのかかわり合いを遠ざけようとする心理が働いているという。
●「からかう」(山梨)
山梨では、「いろいろ手を尽くす」とか「あれこれやってみる」の意味で使われる。例えば「スマホの調子が悪いから、からかってくれ」は、スマホの不具合を診てほしいといった意味合い。
「からかう」は、室町時代においては「関心を寄せる」、「かかわる」の意味で使われ、山梨ではその用法が残ったものと思われる。
●「きもい」(愛知、岐阜)
「気持ち悪い」を縮めた若者言葉として定着した「きもい」だが、これが中部の一部地域では「きつい」の意味がある。
「この服はちょっときもい」とは、服がきついということで、けして気味の悪い服だと言っているのではない。