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医師は自分や家族ががんになった時、どんな治療をするのか?

2018.01.02

■医者ががん患者になったら絶対拒否する治療法を患者にすすめる理由

 しかしながら疑問なのは、医者はなぜ、自身やその家族ががんになったときに絶対拒否するような治療法を、患者にはすすめること。この矛盾に対する答にたどり着くキーワードが、第3章で示されている、「病院経営」と「エクスキューズ医療」の2つである。

 がんに関わる手術、薬剤などの診療報酬点数が高めに設定されていることから、病院は手術を行なったり抗がん剤などを投与すればするほど儲かる。点数に反映されない手術の丁寧さ、患者さんの希望への寄り添い具合などは二の次になっている病院も少なくなく、何が何でも手術件数を増やすことに躍起になっているところもあるとのことだ。著者も、

「誰でも安く医療が受けられる日本の医療保険制度は、世界に誇れる優れたものです。しかし運用面ではいくつか問題を抱えており、それが『患者さんにとってメリットがない』『患者さんが望まない』治療が行われる、一つの要因になっているといえるでしょう」(第3章 93ページ)

 と憂う。患者に医療を提供し続けるには収益を上げなければならないが、営利に偏重するのは、患者のためにならない。病院経営はさじ加減が難しいことがわかる。

 一方、「エクスキューズ医療」とは著者オリジナルの言葉で、医者が自分を守るために患者やその家族への言い訳のために行なう医療を指す。あとで訴えられないようにしたり、問題が起こったときに責任を問われないようにするために、日本の医者は「診療ガイドライン」に従った治療しかしないケースがほとんど。そして、「エクスキューズ医療」には2つの弊害があるという。

 1つ目の弊害は、患者も一人の人間であるということを医者が忘れてしまうこと。「患者さんには一人ひとり個性があり、がんになった原因も体質も事情も、まったく違います。本来であれば、がんになった原因を探ってそれを取り除いたり、患者さんの価値観や希望に添った治療を行ったりするべきなのです。ところが、患者さんをみてガイドラインを参照するのではなく、がんという病気の進行度だけをみて、ガイドラインに患者さんをあてはめてしまう医者が、とても多いのです」(第3章 p100-101)と著者も指摘する。

 2つ目の弊害は、「診療ガイドライン」に書かれている治療以外に目を向けなくなること。ガイドラインでは、三大療法以外は「エビデンスレベルが低く、おすすめできない」とされていたり、まったく触れられていないこともある。これは患者からすると、個性や価値観に合う治療法があるかもしれないのに、それらを知る機会と提供される機会がないということを意味する。

 しかし、病院や医者、看護師に対して理不尽な要求を突きつけたり不満をぶつける「モンスターペイシェント」の問題もあり、医者が「エクスキューズ医療」に走らざるを得ない現状には、ある程度の理解は必要だ。患者がエクスキューズ医療を受けないようにするには、「医療訴訟を起こされるのではないか」という医者の不安を取り除くことを考えた方がいい。

 そのために著者がすすめるのが、念書を書くこと。「もし一般の患者さんが主治医の治療方針を受け入れることができず、自分で治療内容を選択したいと思った場合は、主治医に『たとえ何か問題が起こっても、先生にはご迷惑をおかけしません』とはっきり伝えるなり、ご家族の名前を明記した念書を書くなりすることをおすすめします」(第3章 p103)と強調する。念書を書くには覚悟が必要だが、同時に、病気や治療法に対する知識をある程度学び、これからどう生きて行きたいかということを明確にしていないとできない。よりよい医療を受けるには、患者にも求められることがあると理解した方がよさそうだ。

■関連情報

医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか

『医者は自分や家族ががんになったとき、どんな治療をするのか』
アスコム 刊/川嶋朗 著
1100円+税
https://www.amazon.co.jp/dp/B01AL8TJN4

文/大沢裕司

※記事内のデータ等については取材時のものです。

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