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がんにかかりやすい県は?「全国がん登録」で浮き彫りになった意外な事実

2018.01.02

●中部・東海地方:がん死亡率が非常に低い長野県

長野県は、がんも含め総じて病気にかかる人が多い県だが、一方でがん死が非常に低い。青森に多いとされる病院嫌いの逆で、病院で診察を受けることへの心理的抵抗の低さが、反映されていると考えられる。山梨県は、がんにかかりにくい県だが、肝がんが多い。これは、むかし日本住血吸虫に寄生され肝炎にかかった人が、肝がんへと進行した可能性があるという(現在は日本住血吸虫は撲滅されている)。他の県は、医療体制の充実を反映してか、比較的がん死が少ない。

●近畿地方:京都府に胃がんが多いのはピロリ菌のせい?

食塩摂取はさほど多くない京都府だが、その割に胃がんが多いのは、ピロリ菌の持続感染が推測される。大阪は、男女ともに肝がんが多く、女性については女性喫煙率が全国3位のせいか肺がんや食道がんの割合が高い。また、大阪は検診受診率が極めて低いため、がん死亡率が高い。そして貧富の地域格差が大きいのが特徴で、可処分所得の低い地域に住む人の、がん死亡率が非常に高い。兵庫県や和歌山県も大阪に似た傾向を示すが、滋賀県と奈良県はなかなかの優等生となっている。

●中国・山陰地方:鳥取県は子宮頸がんが平均の1.5倍

鳥取県は、比較的がんにかかりやすい県だが、特に子宮頸がんの罹患率は全国平均の1.5倍もある。その原因は不明だが、統計的なぶれの可能性も指摘されている。島根県は隣接する鳥取県と似た傾向を示すが、子宮頸がんは多くない。他の県は、罹患率・死亡率ともさほど高くない。

●四国地方:左党が多いのにがん罹患率の低い高知県

酒類消費量は全国2位の高知県。なのに、なぜか飲酒が関わるがんの罹患率が低いのが特筆される。徳島県と香川県は、婦人系のがん罹患率が気になる高さを示すものの、総体的にみて優等生の部類に入る。しかし、この2県は、糖尿病患者数ではワーストクラス。糖尿病にかかると、がんにもかかりやすくなるので、今後は注意が必要。

●九州・沖縄地方:佐賀県は肝がんの多さで全国ワースト

福岡県は、肝がんと肺がんの罹患率が高く、死亡率も高い。これは、患者が医療機関を訪れる動機づけの低さが考えられるが、死亡率を高くしているのは、肝がんと肺がんのどちらも予後が悪いことが主因。隣の佐賀県も肝がんが多く、全国ワースト1を記録するが、肺がんは少ない。長崎県は、九州北部で目立っていた肝がんは少なく、そして消化器系のがんになると極めて少なくなる。死亡率の低さについて言えば、原爆投下の歴史から、がん検診に積極的なことが関係しているのかもしれない。大分県と宮崎県は、肝がんが多い点で九州北部と共通するが、消化器系がんの少なさで長崎県と似ている。鹿児島県は、白血病で亡くなる人は多いが、やはり消化器系がんは少ない。南九州に消化器系がんがあまり見られないのは、ピロリ菌の持続感染を助長しない食文化であることが一因と考えられる。沖縄県は、かつては長寿県の名声を誇ったが、生活習慣病にかかる人が増えて、今では平均寿命は全国平均を下回る。ただし、最もがんにかかりにくい県となっている。

こうしたデータが物語るのは、生活習慣や(子供を持たないといった)ライフスタイルの、がんのかかりやすさに対する影響の大きさであろう。がんと遺伝に関して大げさに扱われることが多いが、実は遺伝に起因するがんは、全体の5%に過ぎない。たばこ、酒、肥満は、明らかにがんのかかりやすさを助長する一方で、がんを抑える食品というのは特定できていない。本書の著者、松田智大がん登録センター全国がん登録室室長は、「一汁三菜」の和食を実践するのが一番よいとしている。そして、長野県のケースを見てわかるように、医師に積極的に相談し、診断から治療につなげる流れが構築されているところは、がんで死ぬ率が低い。

結局のところ、がんについては、平凡に勝る妙手はないといえそうである。

文/鈴木拓也

老舗翻訳会社の役員をスピンオフして、フリーライター兼ボードゲーム制作者に。英語圏のトレンドやプロダクトを紹介するのが得意。

※記事内のデータ等については取材時のものです。

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