■健康診断はお金と時間のムダ?
また本書では、健康法についても言及。とくに健康面の不安はなく、日頃から体調管理に気を配っている人も関心が高そうなテーマを選定し、回答している。
例えば、ダイエット法としてすっかり定着した感がある炭水化物抜きダイエットにもついては、ダイエットをするなら糖質を食べないのではなく、「食べる順番を変えた方が効果的だ」と指摘する。
「いきなりごはん(米)を食べないこと。若い男性に多いのですが、コンビニでおにぎりを買って、一気に3つぐらい食べてしまう人がいます。こういう炭水化物の一気食いが血糖値を上昇させます。たとえば、はじめに味噌汁を飲む、サラダを食べる、いわゆる低GI(Glycemic Index)食品から食べるのです。これだけで血糖値の急上昇を抑えられます」(第5章 169ページ)
本書でも、糖尿鋲予防のために糖質制限することは論理的にはアリだとしているが、糖質はエネルギー源なので、必要以上に抜くと体は動かなくなるし脳が働かなくなる。したがって、糖質を抜くために炭水化物をいっさい摂らないことは栄養バランスを崩し、健康が犠牲になる。「どの栄養素も人に必要なものですから、バランスを欠いたダイエットは健康にいいことがありません。体重は減るかもしれませんが、肝心な健康が犠牲になるので本末転倒です」(第5章 170ページ)と著者は警鐘を鳴らす。
日頃からできる健康法のほかに、健康診断も健康管理で重要だと考えられている。年に1回は受ける人が多いであろう健康診断に関する著者の見解は否定的。厚生労働省が2004年度に行った調査で、健康診断で検査する24項目のうち、調べることによって健康に有効とされたものは「喫煙」と「血圧」の2つだけというのが、その根拠だ。
「中には健診によって悪いところが見つかってよかった、という人もいるでしょう。しかし悪いところがあれば、その人は遅かれ早かれ病院に行ったはずです。健康な人が健診によって“異常”が発見され、“病気”にされ、クスリを飲まされたり治療することが問題なのです。自覚症状もないのに受ける検査はすべて不要。お金と時間のムダです。どうも調子が変だと思ったら調べればいいのです。自分の感覚をもっと信頼しましょう。自分の体のことは自分がもっともよくわかっているはずですから」(第3章 91ページ)
健康診断に関して著者は、このように手厳しい。ただ、年中行事のように当たり前とされてきたことをいきなりやめるというのは、勇気がいる。それに、受けないと不安だという人もいることだろう。なので、著者のこの主張を無批判に受け入れず、必ず自ら考え抜いた末に結論を出した方がいいように思う。
本書に書かれていることの中には、従来信じてきたことと正反対の記述もあるだろう。すぐには受け入れられないこともあるかもしれないが、そういう場合は自分なりに調べてみるのがいいかもしれない。自分の健康は医者が守るものではなく、自分自身で守るもの。正しい情報・知識を得るために自ら学ぶ、調べるという姿勢が、健康管理ではまず大切なのだと思い知らされる。
『「先生、医者代減らすと寿命が延びるって本当ですか?」』
小学館 刊/近藤誠・倉田真由美 著
1100円+税
http://www.amazon.co.jp/dp/4093884390
文/大沢裕司
※記事内のデータ等については取材時のものです。