「毎週、必ず1日は欠勤するんですよね、体調が悪いとか言って。あまりに毎週のことなので、私もずる休みじゃないかと思いながらも、普段の勤務態度や仕事内容には特に問題がないので許してしまっていました」
こうぼうやくのは、某大手メーカーで中間管理職の立場にいる40代前半の社員だ。彼が問題にしているのは、後輩社員のことではなく、契約社員として長年勤務している30代後半の女性のこと。
「その契約社員の女性は独身なんですが、地方出身でひとり暮らし。能力はあるのに、やる気がないというか。美人といわれるタイプなのに、影があって地味な感じ。御馳走になるような飲み会には来ますが、自腹の会となると来た試しがない」
大手の契約社員の場合、同じ業務内容でも給与が正社員の3分の1というケースもある。それだけの格差があれば、微妙な軋轢もあるだろう。都内でひとり暮らしとなると、貯蓄もままならないはずなのに、職場でのストレスをプライベートで晴らすために金を浪費してしまい、気がつけば消費者金融で借金してしまうほど困窮した生活に陥ってしまう……。そんな働く“貧困女子”が注目されている。
以前話題になっていた貧困女子は、シングルマザーなどが多かったが、最近では短大や大学を卒業した30代の女性たちが貧困状態に陥っているのだ。学生時代の奨学金の返済が予想外に大変だとか、親からDVを受けていたり、コンプレックスから男性にセックス依存してしまったりと様々な理由から決して多くはない給料が底をつき、借金をしてしまう。なかには、金銭的に困っているにもかかわらず、毎月ブランド品を買い、ペットの犬まで飼ってしまい、ますます困窮する女性もいる。一種の中毒状態で、そこから抜け出せないわけだが、こうした貧困女性は企業の契約社員や派遣社員というケースも多いという。
来年度から在籍する契約社員を正社員として雇用するという企業も出てきているが、その裏で、こんな貧困を抱えているとなると、職場で微妙な問題も起こりかねない。『貧困女子のリアル』(小学館新書)では、実際に困窮している30代の女性11人から、その凄まじい現実と他人には明かせない本音を聞き出している。母親に依存して自立できない、見栄を張って浪費してしまう、だらしない性格から不倫に走るなど、彼女たちの言い分を聞いていると甘えも垣間見える。
あなたの職場にも隠れ貧困女子やその予備軍がいるのでは? 部下や同僚など身近な30代女性がどんな現実に直面しているのか、早い機会に知っておいて損はないはずだ。
小学館新書
『貧困女子のリアル』(沢木文・著)
740円+税
http://www.shogakukan.co.jp/books/09825263
※記事内のデータ等については取材時のものです。