1980年に産声を上げてから37年。当初わずか40品目からスタートしたそのアイテムは、家庭用品、衣料品から家具、そして家に至るまで、今や7000品目以上にも及ぶ。そんな中、「コスパが高い」「シンプルなデザインが良い」など注目される同社の家電がどのように進化したのか、その足跡を追った。
◎必要な機能とカタチを極めるものづくり哲学
無印良品の始まりは、田中一光という稀代のクリエーターと実業家・堤清二の2人がタッグを組んで生み出した西友のPBだった。
「1980年の創業当時は品質度外視の安価な製品と、付加機能が多い高額製品の二極化時代。そんな中で無印良品を、合理的な価格で〝良い品〟を提供するブランドに育てたいと考えていました。それは〝消費を良しとする社会へのアンチテーゼ〟でもあります」。そう話すのは、良品計画の宣伝販促室長・矢島 岐さん。
今では世界的なブランドとなったが、その歴史の中で家電が登場するのは1995年。「ごくありふれてない家電。」のコピーで12モデルがデビューを飾る。
「90年代は高付加価値を謳う多機能家電があふれていた時代。その中で、余計な機能を排除したシンプルな家電の提案はインパクトが大きかったと思います」(矢島さん)
そして2000年には、ヒット商品『壁掛式CDプレーヤー』が登場。そのデザインを手掛けた深澤直人は2年後、同社のアドバイザリーボードに就任し、その存在を推進力として、2005年には世界的なデザイン賞も受賞。世界に「MUJI」の名を轟かせた。
「2000年代後半は注目されるような家電は生み出せなかったのですが、2010年に入り、『もう一度、家電をしっかりやろう』という話になり、深澤さん陣頭指揮の下、新たなプロジェクトがスタートします」(矢島さん)
しかし、そもそも同社は家電メーカーではない。それゆえ、他社の協力が必要になる。ちょうどこの頃、海外メーカーの製造技術が熟成。細かい要求に応えられるレベルまで達し、オリジナル設計の家電づくりも積極的に行なうようになる。「色を変えただけ」というイメージから脱却する第一歩を踏み出したのだ。
ブランドを立ち上げた田中一光がこだわったのは、「簡素な効果に引け目を感じないものづくり」。そのスタイルを確立するかのように、「バルミューダ」社と協同開発した空気清浄機、ミル付きコーヒーメーカーなどをヒットさせる。その気になる今後は?
「チャレンジは続けますが、だからといって家電だけで勝負する気も、家電領域を広げるつもりもありません。目立つことなく生活の中にあればいい。それが家電メーカーとの違いでもあり、無印良品の特徴ですから」(矢島さん)
【1980】
●西友のPB(プライベートブランド)として「無印良品」誕生
生活雑貨9品目、食品31品目で出発。ラベルには安さのわけや商品の成り立ち理由が明記された。写真は、当時のポスター。
【1983】
●東京・青山に第1号店出店