■課題はセキュリティと活用のちょっとした工夫
アカウントアグリゲーションは便利なサービスですが、活用にはちょっとしたヒントが必要になります。例えば、全部の金融機関口座を登録すればいい、という単純な話ではありません。
自分の使い方に応じて、「意識的に」登録する金融機関を選択する方法も考えられます。
資産状況の把握だけを目的とするのであれば、クレジットカード会社やポイントカードの登録は不要かもしれません。
家計簿機能を重視するのであれば電子マネーへのクレジットカードからのチャージや、電子マネーの利用状況も反映されるほうが便利でしょう。
また、「そこに残高があることはできれば意識から遠ざけておきたい」という口座もあります。がんばって貯金をしているのに、その残高が「あなたの全財産いくら」としていつでも見えてしまうと使う誘惑にかられてしまうような人は(私もそうですが!)、下ろさない予定の口座については「あえて登録しない」という手も考えられます。自分なりにどこまで登録するか距離感を考えてみるといいでしょう。
また、セキュリティ対策についても注意をしておきたい者です。とはいっても、毎回パスワードを入力しないことがアカウントアグリゲーションの便利さそのものです。そのためにはアカウントごとのIDやパスワードをどこにどう保管するかという問題が生じます。
サービス側のサーバーサイドでパスワードを保管する場合、基本的には暗号化されていますので、漏出のリスクはあまりありません。また、残高情報を閲覧できるIDとパスワードを入手されたとしても、実際の振込指示などでは別パスワードを必要とするのがほとんどなので、この点でもあまり心配はいらないと思います。
スマホ側では、スマホのパスコード、アプリのパスコード、紛失時の検索設定(iPhoneを探すなど)の設定をしておけばかなり安心です。パスコードは指紋認証設定ができればそれほど負担にならないはずです。
「とても便利」が「全部筒抜け」にならないようにしつつ、サービスを利用してみたいものです。
文/山崎俊輔
AFP、1級DCプランナー、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。商工会議所年金教育センター主任研究員、企業年金連合会調査役DC担当など歴任。近著は「お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣」
■連載/山崎俊輔のフィンテック入門
※記事内のデータ等については取材時のものです。