■マルチvsシングルドライバーの勝負の行方は!
私が最近、ヘッドフォン祭やポタフェスを取材して疑問に思うのは、BA型マルチドライバーは、そんなにドライバーの数を増やしてメリットがあるのかということ。もともとBA型は補聴器用に設計されたユニットなので、レンジが狭く、これを2Way化することで音楽用にしたのは素晴らしいアイデアだと思う。よりワイドレンジにするために3Way化、そして低音の量感を出すためにBASSを2ドライバー化して3Way4ドライバーぐらいまでは理解できるが、これが8ドライバーとか12ドライバーまでいくと位相管理の面でかなり不利になり、レンジは広がっても音場感は悪くなるのではと思ってしまう。これに対してダイナミック型はフルレンジ一発である。スピーカーと違ってイヤホンは鼓膜のすぐ近くで音を出すため振動板が小口径でも充分に低音が出せる。つまりダイナミック型ならシングルドライバーでワイドレンジを実現できる。これはヘッドホンにも言えることだ。最近は高域はBA型、中低域はダイナミック型というハイブリッド型も増えてきた。解像度の高いBA型と量感の出せるダイナミック型の低域を合わせていいとこ取りを狙うのだが、形式が違うので音のつながりが難しいという弱点もある。
DITAはシンガポールを拠点にするメーカーで、社員全員がオーディオマニアである。そしてオーディオマニアによるオーディオマニアのためのイヤホンとして開発されたのがハイエンドモデルの『Dream』なのだ。彼らの考え方は至極真っ当で、BA型を使うとワイドレンジ化のためにマルチにする必要があり、ネットワーク用の高音質パーツが手に入らないから、ダイナミック型ドライバーで勝負することにしたという。また、音質そのものもダイナミック型の方が自然であると。この言葉通り新開発のφ10mmダイナミック型ドライバーを1個のみ搭載。周波数特性10Hz〜25kHz、インピーダンス16Ω、音圧レベル102dB。これを収めるシャーシはチタン製、フラットな周波数特性と左右の音の差を最小限に抑える設計で、全ての接触面を平面研磨するため日本で精密加工されている。
■こだわりのプラグとVan den Hulのハイブリッド構造ケーブルを採用
DITAはまた、リケーブルに反対の立場をとる。理由は接点が増えることで音質劣化の恐れがあるからだ。そこで考えたのがAwesomeコネクターである。イヤホン側ではなくケーブルの端子側にコネクターを付けて、φ3.5mm3pinとφ2.5mm4pinのバランス接続に対応できるようにした。さらにオプションでφ4.4mm5pinプラグを用意した。ケーブルはハイエンドオーディオケーブルメーカーVan den Hulとのコラボにより、同社の導体技術を使った3T導体をコアに使い、その周囲に銀メッキOFC銅線を配置したハイブリッド構造の『The Truth』採用。クリアーでワイドレンジな音を実現したという。今回の製品は2pin端子でリケーブルに対応しているが、これはサードパーティのケーブルを使うためではなく、断線した場合の修理に対応するためと思われる。