6「ザ・クリスマス・ソング」
タイトルがタイトルだけに、なにやら伝統的な重みまで感じられる曲ですが、1961年に白人男性ジャズ・ヴォーカリストのナンバー・ワン、メル・トーメが作詞家のボブ・ウェルズとともに作った曲です。「定番」クリスマス・ソングの中で、もっとも新しい1曲というのは意外に感じられるのではないでしょうか。
7「メリー・リトル・クリスマス」
ヴィンセント・ミネリ監督、ジュディ・ガーランド主演の1944年のミュージカル映画『若草の頃』のために作られた1曲。クリスマスのシーンでジュディが歌いました。この曲の人気もあって映画は当時大ヒット、現在も不朽の名作として評価されています。というのは、この前向きなクリスマス・ソングが、第二次世界大戦中の暗いアメリカ世相に灯りをともしたのです。
8「ホワイト・クリスマス」
アメリカを代表するソングライター、アーヴィング・バーリンが作詞・作曲、1942年にビング・クロスビーが歌い大ヒットを記録したポピュラー・ソング。知らない人はいませんね。何しろシーズンごとにヒット・チャートに入り続け、シングル盤の累積売上げが5000万枚超という、ギネスブック認定の史上もっとも売れたレコードなのです。「クリスマスを夢見る」という直球の歌詞と穏やかなメロディはクリスマス・ソングの王道。第2次世界大戦中に前線に送られた兵士たちから、ラジオにリクエストが殺到したというのが最初のヒットの理由。「メリー・リトル・クリスマス」同様、じつは暗い世相の反映でもあったのです。
9「きよしこの夜」
これは1818年にオーストリアで書かれた正真正銘の賛美歌で、「クリスマス・キャロル」(キリストの誕生の歌)の決定版です。キリスト生誕の情景を歌っているのですから、ほかのポピュラー・ソングと同列に並べるのは本来は筋違い。ただ、ビング・クロスビーら多くのポピュラー・シンガーが歌ってヒット・チャートに入ってきた、誰の心にも響く曲なのですね。
10「もろびとこぞりて」
この曲も賛美歌です。ヘンデルの「メサイア」を元にして、1836年にローウェル・メイソンが作曲しました。「メサイア」とは「メシア=救世主」の英語読みで、キリスト到来に関する楽曲のこと。こちらも多くのポピュラー・シンガーがカバーしています。決定版は、ナット・キング・コールでしょう。キングならではの圧巻の表現力には、ポップス系シンガーでは到底及ばない、神聖なキブンを感じることでしょう。
発売中のCD付きマガジン『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』(小学館)の第16号は「ジャズ・ヴォーカル・クリスマス」。CDにはビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」、ジュディ・ガーランドの「メリー・リトル・クリスマス」、ジュリー・ロンドンの「アイド・ライク・ユー・フォー・クリスマス」、メル・トーメの「ザ・クリスマス・ソング」などの「本家」ヴァージョンと、さらにルイ・アームストロングのダミ声「ウィンター・ワンダーランド」、ナット・キング・コールの「もろびとこぞりて」ほか、「定番」ヴァージョンなど極め付きの全10曲を収録。「季節もの」のレベルを超えた究極の選曲は、10年、20年後も廃れることのない永久保存盤といえます。
『ジャズ・ヴォーカル・コレクション』第16号
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文/編集部
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