■市をあげて地域回想法を事業化
では、なぜここが「高齢者の介護予防」と、「まちづくり推進」の役割を担うのか?
「当館は平成2年の開館以来、昭和史の日常生活用具を収集・保存・展示を行い、来館者の方々の思い出話が沸き起こる場になっていました。これは回想法と呼ばれ、かつて経験してきたことを楽しみながら語り合うことで脳を活性化。気持ち(心)を元気にする心理・社会的アプローチに繋がるものなのです」
と説明してくれたのは、学芸員の伊藤明良さん。そして平成13年末、国立長寿医療研究センターの遠藤英俊医師がこの施設を訪れ、地域での回想法による認知症予防事業を提案したことがきっかけとなり、翌年より市の『思い出ふれあい事業』がスタート。
以後、この施設と市の高齢福祉課、国登録有形文化財の旧加藤家内にある回想法センターが連携。まちづくりも見据えた『地域回想法』という新たな取組みを展開しているという。
思い出ふれあい事業は、おおむね65歳以上を対象にグループでの回想法を愉しむ教室を開催。毎回テーマを替えながら住民同士が交流を深め、その卒業生たちが「いきいき隊」という自主グループを作り、さらに地域の輪を広げていくスタイルが確立されているそうだ。