■連載/オンナは男のココが気になる!
ある50歳の男性のお話です。おしゃれで素敵な方なのですが、なぜかいつも前髪をまっすぐおろしているのが実はずっと気になっていました。「西島秀俊を意識?」「それともよくある生え際後退隠しかな?」と、秘かに気を使ってそっとしていたのですが、実はそうではなかったのです。
「おでこに一本シワがあって、だから前髪下ろしてるの」ある日そういって前髪を上げて見せてくれました。確かに、額の真ん中に、一文字にクッキリとシワが刻まれています。(額は、全く後退していませんでした!)目もとにも口もとにもほとんどシワがなく美肌なのに、額にだけ深くクッキリと一本。こういう方は実は珍しくないんです。40歳前後から、まぶたの筋肉がゆるんで目が開けにくくなる「眼瞼下垂(がんけんかすい)」が進んでいくので、無意識に力を入れて目を開くため、額の筋肉が緊張してシワになるのです。
「ボトックスで固めちゃえばいいんだろうけど、それって永遠じゃないんでしょ?始めたら打ち続けないと元に戻るんでしょ?」
この彼の言葉には、2つの大きな誤解があります。
まず、彼のように「ボトックス」と聞くと、「顔を固める」と思われる方がとっても多いのですが、実はそれは大きな誤解。「固める」のではなく、極度に緊張する筋肉を「リラックスさせる」治療です。
そしてもう1つ。彼の場合、ボトックス治療(ボツリヌス療法)は効かないんです。ボトックスは、シワはシワでも、「表情ジワ」への治療法。表情に関わらずクッキリと深く刻まれてしまったシワには、残念ながら有効でないのです。ボトックスとヒアルロン酸を組み合わせて、なんとか目立たなくする手はあるけれど、それこそ治療頻度は少なくとも3ヶ月に1度くらいは必要になります。この手のシワを何とかするなら、ボトックスではなく、外科手術が必要になってしまうんです。
逆にいえば、彼のクッキリ一本ジワも、「表情ジワ」の段階で相談してくれていれば、ボトックスを早めに始めて、クッキリ刻まれるのを防ぐことができたはずなんです。笑ったり、顔をしかめたり、目を見開いたりという顔の筋肉の動きにあわせて出たり消えたりする表情ジワは、そのうち肌に記憶され、徐々に固定したシワへと変化していきます。
出たり消えたりしている段階、もしくは、固定されていてもまだ浅い段階が、実は「手術なしで注入だけで治療できるチャンス」なのです。だけど、多くの方(特に男性)が、「これくらいならまだいいか」と、その効率的に治療できる段階をのんびりと見送ってしまうんですよね。
額の表情ジワ、出始めていませんか?真顔で鏡に向かう時には出ないものなので、歩いている時にショーウィンドウなどに写った自分の顔をふと横からチェックしてみてください。斜め向きに目を見開く筋肉の動きで、表情ジワの有無はチェックできます。見つけたら、刻まれる前に、お早めに対策を。
文/今泉明子
医学博士・皮膚科専門医。東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノアージュ院長。しわの注入治療では認定指導医を務めるなど、肌のスペシャリストとして活躍。美容を中心に手掛ける皮膚科でありながら、患者の40%が男性という、美肌男子のかけこみドクター。
■連載/オンナは男のココが気になる!