広告チラシなどで見る、1000万円以下の住宅とはどんな家なのか? そもそもなぜそこまで安くできるのか? 誰もが「大丈夫?」と感じる疑問を徹底調査! これを読めば、夢のマイホームがぐっと身近な存在になる。
◎住宅の既成概念を見直せば、その価値を把握できる
結婚して子供ができたら、「いざ、マイホーム!」というセオリーは、今や遠い昔の話。上がらない給料、増えない貯金……と、将来への不安が渦巻く中では、家を持つことなど〝夢のまた夢〟とあきらめてしまうのも仕方がない。
そんな世相を反映してか、数年前から大手ハウスメーカーが〝アンダー1000万円の家〟を販売し始めた。高級車1台分で家を持てるなら、本気で一国一城の主になろうと考える人もいるはず。
そこで、住生活ジャーナリストの田中直輝さんに、気になるローコスト住宅の実情を聞いた。
「大前提として、その金額だけで完成するわけではありません。各社、価格に注意書きがあるのですが、地盤補強工事や下水道工事費など付帯工事と呼ばれるものが含まれていないことが多いのです。2〜3割増しになると思ってください。とはいえ、どんな工事が必要かは土地ごとに千差万別。狭い路地の住宅街だったり、山奥だったり、現場を見ないことにはわからないので、表示価格どおりではないと責めるのは酷です。大手ハウスメーカーの平均建築費が3310万円であることを考えれば、お得であることは間違いありません」
平均建築費の3分の1と聞くと「いわゆる安普請なんじゃないか?」と不安に思うのがフツーだろう。いったい、どんな家なのか?
「各社とも耐震実験をきちんと行なうなど、構造体もある程度の信頼性はあるのではないでしょうか。一般的な注文住宅と違うのは、デザインをフォーマット化していること。その多くは正方形や長方形の建屋なので、所有または購入予定の土地に、ハマるか否かが問題になります。変形した土地や道路の方角によっては、建てられない場合もあります」
販売するうえで制限が生じるのにもかかわらず、メーカーがフォーマット化するのはなぜだろうか? その理由は「様々なコスト削減を図れるから」と田中さん。
「営業コストを最小限にとどめられるのです。一般的な注文住宅は、建築士やインテリアコーディネーターなどとの打ち合わせを何度も行なう必要があり、そのたびにコストがかかる。が、定型化することで、その回数を大幅に減らせるのです。中には営業マン1人で完成まで担当するメーカーもあるくらいです。さらに、建材を一括大量購入することで材料費も抑えている。ゆえに、注文住宅よりも選べる建材や設備の種類は少ないのですが、価格を考えれば、一定の選択肢を用意していると思います」
一方、人によっては不安を感じる部分もある。それは「長期優良住宅」というお墨付きをもらえないケースもあるからだ。「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」に基づいたもので、簡単に言えば、長期にわたり住宅を良好な状態で長持ちさせることで、国民の住宅に対する負荷を軽減する基準だ。
「ただ、誤解してはいけないのが、長期優良住宅は品質を保証するものではない。しかも、バリアフリーや省エネルギーも認定の条件となり、人によっては不要な機能も多い。特にこだわりのない人なら問題ないのでは?」
ここまで聞いてどうだろうか。アンダー1000万円でも決して劣っているわけではない。ただ、自分の土地にハマるかどうか、用意されたプランに満足できるかどうか、すべては考え方次第。また、「一般的な住宅は築20年で資産価値がゼロになる」と田中さん。なるほど、私たちはマイホームに夢を詰め込みすぎていたのかもしれない。2代、3代と長く住むことにこだわらず、ファストファッションのように、低価格で家を建てるのも選択肢のひとつなのだ。