次に、「フルボディリフレッシュ」を試してみると、また、発見があった。今までのクルマのマッサージシートでは、グイグイ動くのはシートの背面だけだったが、これは座面もグイグイするのだ。お尻から腿の裏側まで、まんべんなく揉んでくれる。これは、「フルボディストレッチ」でも変わらない。
背中から腿まで、揉むだけでなく、押し上げる動きが心地よい。これを体験してしまうと、他のシートが子供騙しに思えてくる。開発陣は良くここまで仕上げたし、役所との交渉を必要とした全席対応やストレッチモードの採用なども実現した。
マッサージシートは、各自動車メーカーがそれぞれ用意している。もともとは日本車の専売特許のようなもので、欧米メーカーは昔は冷ややかに見ていた。「自動車の本質的な価値とは相容れない」というヨーロッパメーカーの開発担当者の否定的な評価も聞いたことがある。僕もそれに同意していた。
しかし、クルマに求められる価値が単なる移動に留まらなくなりつつある現在、マッサージシートの価値は重要度を増している。運転しながらマッサージを受けることができるのは画期的だし、運転の自動化が進むにつれて、ドライバーが移動時間中に車内で何をして過ごすのかは大きな課題となってくるだろう。快適と健康を欲しない人はいない。
そこまでの未来ではなくても、すでに新型『LS』では運転しながらマッサージを受けられるようになっているのである。ともすると、“半笑い”で語られることの多かったマッサージシートは新型『LS』によって立派な、人によっては必要不可欠のラグジュアリー装備となった。
欧米の高級車の呪縛から完全に逃れることは難しいだろうが、彼らが見向きもしなかったことに光を当て、新しい価値を創り出していくことはレクサスの大きな使命ではないだろうか。新型『LS』に乗ったら、まず、マッサージを“ON”にしてみることを勧めたい。
■関連情報
https://lexus.jp/models/ls/
文/金子浩久
モータリングライター。1961年東京生まれ。新車試乗にモーターショー、クルマ紀行にと地球狭しと駆け巡っている。取材モットーは“説明よりも解釈を”。最新刊に『ユーラシア横断1万5000キロ』。
■連載/金子浩久のEクルマ、Aクルマ