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多くの一流企業を生んだ近江商人に学ぶ投資の極意

2017.10.06

■“世間よし”じゃないと自分も本当の意味で豊かになれない……世の中のために投資

 近江商人と言えば、“三方よし”の経営哲学も有名だ。これは、

売り手よし……売り手がきちんと利益を上げていること
買い手よし……買い手が適正価格で良質な商品を購入できたこと
世間よし……そのビジネスのおかげで、世の中全体がより良いものになっていること

 を意味する。

 売り手と買い手だけが得をしてそれ以外に悪影響を及ぼすようでは、事業を拡大すればするほど世の中の多くの人から恨まれることになり、その事業は長くは続かないという。その他にも、『陰徳善事』(人が見てないところでの良い行い)も奨励していた。

 このような考え方から、近江商人は積極的に利益を地域社会に還元し、また慈善事業にも莫大な金額を出資してきた。たとえば、瀬田唐橋の架け替え工事や、逢坂山の車石(牛馬車の車輪幅に合わせて道路に敷かれた舗石)、主要街道の常夜灯設置などだ。

 以下は、童門冬二著『近江商人のビジネス哲学』(サンライズ出版)から引用したエピソードだ。前述の初代塚本定右衛門は、江戸城無血開城で知られる政治家の勝海舟のところへ、たびたび事業の相談に訪れていた。その際、定右衛門は、

<近所に住む人びとは貧しくて、働くのに精一杯でなかなか京都のモミジや吉野山のサクラを見にいくような暇がありません。ですからいっそのこと、吉野山に咲いているサクラや京都の美しいモミジの苗木を荒れ地に植えて、近所の人びとが季節になれば花見をしたり、モミジ狩りができるような場をつくったらいかがかと思いまして>

 というアイデアを提案し、海舟は感心しつつ賛成したという。定右衛門は、この他にも治水事業などにも精力的に取り組んだ。

 「自分さえ良ければいい」「弱肉強食だから騙されるほうが悪い」という発想を常に頭の中に持っていると、じわじわと時間をかけながら、いつしか自分自身を蝕んでいく。

 ここまで大規模な寄付をしなくても、まずは財布の中の小銭からでもいいので、できる範囲で世のため人のために投資してみるのもいいかもしれない。

文/吉野潤子

※記事内のデータ等については取材時のものです。

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