加齢とともに、髪のボリュームがなくなり、気になってくる「抜け毛」。育毛剤や頭皮スプレーなどで対策をされている男性読者も多いのではないでしょうか。そして、テレビや雑誌などを見て「抜け毛は病院で治療できるらしい」と気になってはいるものの、どんな治療なのか、あるいは市販の育毛剤を使う対策と何か違うのかといった疑問や、病院(皮膚科)に行くのも勇気がいるといった声も耳にします。そこで今回は皮膚科での育毛治療についてお話ししたいと思います。
◎皮膚科で処方される育毛剤と市販の育毛剤の違い
まず、育毛剤による治療から。「だったら今でも使ってるよ」という方もいるでしょう。しかし市販の育毛剤と皮膚科での育毛剤は、実は中身が異なります。市販の育毛剤は医師の診察がなくても販売できるものですから「多くの方に広く使っていただける安心処方」というのが前提となっています(ただし、注意書きはきちんとお読みください)。一方、皮膚科では患者の健康状態を見極めたうえで最も適した育毛剤をすすめています。「誰にでも同じものを」というわけではありません。
例えば、人気の育毛成分ミノキシジルなども市販のものよりずっと高い濃度で配合された育毛剤がありますが、これは医療機関でしか処方されません。
なぜなら、血行促進効果が高いため高血圧の方にはお使いいただけないなど副作用への配慮から、医師の診断が必要となります。効果が高い分だけ、その方に適しているかどうかの見極めが大切になるのです。ただ、市販の育毛剤で満足ができなかった方でも皮膚科での育毛剤でやっと効果が実感できたという方もたくさんいます。
◎頭皮に成長因子を注入する話題の治療法
もちろん育毛剤以外にもいくつかの治療法があります。何といっても今、注目されているのは「HARG(ハーグ)療法」という、頭皮に成長因子などを注入する治療法です。注入といっても注射針は使いません。ベッドに寝転んでいただいた状態で、小さなローラー状の器具で頭皮にコロコロ転がしていくだけの治療で、ほとんど痛みはありません。「成長因子」というと、聞き慣れない言葉かもしれませんが、人間の組織の形成、成長をサポートするもので再生医療などで応用されています。
これらを注入するHARG療法は、医療機関での育毛治療を新時代に推し進めたといわれるほど、画期的な治療法で、何をやっても効果が得られなかった方でも、喜ばれることが多いようです(相性もあるので100%とは言いきれませんが……)。抜け毛や薄毛を本気で何とかしたいという方は皮膚科で相談してみてはいかがでしょう。
病院に行く前に日頃の手入れもお忘れなく。汗をかいていない日でもシャンプーは毎日必ずすること。髪が作られる睡眠時に毛穴に皮脂汚れが詰まったままだと、髪の成長を妨げます。毛細血管を収縮させるタバコも実は頭皮の大敵です!
文/今泉明子
医学博士・皮膚科専門医。東京ミッドタウン皮膚科形成外科ノア―ジュ院長。しわの注入治療では認定指導医を務めるなど、肌のスペシャリストとして活躍。美容を中心に手掛ける皮膚科でありながら、患者の40%が男性という、美肌男子のかけこみドクター。
※記事内のデータ等については取材時のものです。