◎胃や食道に亀裂が走る「マロリー・ワイス症候群」とは?
飲み過ぎた日や、出されたお酒が身体に合わなかったときに、吐いた経験のある人も少なくないだろう。そして、居酒屋で話を聞いてみると、吐き出したモノの中に異物がみられたという人も、筆者のまわりでは意外と多いということが分かった。
先日、筆者の吐き出した真っ赤な液体。もうお分かりだと思うが、それはどうやら血液だったようだ。じつは、飲酒後に限らず胃から何かを吐き出したときに「マロリー・ワイス症候群」が発生することがある。
「マロリー・ワイス症候群」とは、嘔吐を繰り返すうちに食道と胃を繋ぐ噴門部の辺りから出血する症状である。嘔吐により腹圧が上がり、上下左右に膨張した食道が耐え切れなくなり、裂傷を引き起こすというもの。発生する割合の多くは飲酒で30%〜50%。続いて、食中毒や乗り物酔い、妊娠時のつわりが原因となる場合もある。
筆者の経験では痛みを感じられなかったのだが、痛みを伴う場合は、マロリー・ワイス症候群ではなく、さらに重度の突発性食道破裂の疑いもある。
万が一、症状が発生した場合にはやはり病院へ行くのが先決で、内視鏡検査などを受け、場合によっては止血する必要もある。筆者の場合は、その日のうちは水だけを飲み、胃に負担をかけないため絶食するという手段を取った。
予防策としては、お酒を前提に考えればやはり適切な量で飲むのが重要。吐いたらまた飲めるなどと自分自身を過信せず、ほどほどを心がけたい。そして、もし吐いてしまった場合には、少しの期間、お酒を控えるという心がまえも大切である。
お酒の場というのは楽しいもので、禁酒するというものなかなかできることではない。しかし、身体を犠牲にしてまで飲むというのは、本末転倒になってしまう。血を吐いた瞬間、筆者は命の危機すら感じたが、冒頭でも述べた「酒は飲んでも飲まれるな」という言葉を胸にしっかりと刻んでおこう。
文=カネコシュウヘイ
※記事内のデータ等については取材時のものです。