『サハラの幻影をサウナに見るか』
「オレ、サウナにのぼせて幻でも見てるのかな…」
サハラ砂漠で遭難し幻想を見るのと同じ状態なのでは? と我が身の健康状態を一瞬疑うほどに、そのオヤジの健康への執着は一線を越えたものがあった。
サウナ室内の温度は、ベンチの高さが一段変わると10度変わると言われている。だからあのオヤジさんも、一回スクワットするごとに、まぁベンチ2段分は頭部が上下してますから、推察温度で下にいっては60度、上にいっては80度というものすごい温度変化を顔で感じながら運動してるんだなァ。
雰囲気的に常連さんっぽいから『SKセンター』行くと、拝観できるかもしれない、鬼気せまるリアル力石徹の躍動を!
さ、いまのは力石オヤジは前座も前座です。時々いそうだし。
さぁオオトリの“股間ドライヤージジイ”だ!!
いや、オレも人生の中で数人ほど遭遇したことはあるのだが、一部では問題になってるそうですよ。股間ドライヤー!! 家でならともかく公衆の場でやるのは「いかがなもんか?」ってことですよ、股だからさ。
でもオレ、そういのってほとんど気にしないのね。しかし、そのジジイだけは気になった、というか面白かった、壮絶に。そんなジジイのジジツをお伝えしたい。
この連載でも何回か書いてる横浜・鶴見のサウナ『U』。そのジジイは、サウナの洗面所といいますか、カッコよくいえばドレッシングルームにいた。
だいたいああいう所でドライヤーを使う人は、壁に据えられた鏡に向かってイスに座ってるもんだ。ところがそのジジイ、年の頃なら70才前後。頭はキレイにハゲあがり、ハラもトップリと突き出た“ザ・オヤジジイ”といってもいいその男は、壁から離れた部屋の中央に丸イスを置き、そこに鎮座しながら、股間にドライヤーを当てていた。
もうそのポジション取りが、
「どうだ? オレはこんなこと恥ずかしがらずに堂々とやってるぞ! 男だからな!!」
という“オレは男”主張なんだろうけど、あえて“恥ずかしがってない”ってことを主張すればするほど、その裏に潜んでいる“恥ずかしさ”が見え見えなんですよ。
その証拠に延々話をしているんですよ、それも大声で、洗面所に入ってくる知り合いと思わしき人を見つけては、
「お〜久しぶり、元気? そうか元気か? そうだな元気か?」
話をすることで、オレは股間を乾かすのなんて、話の片手間でやってるだけで真剣になんかやってないんだもんね〜ということを訴えたいのである。しかし訴えたくても実はその神経はやっぱり股間ドライヤーにいっちゃってるので、どうしても会話が“元気か?”から拡げられることができない。
「いや〜元気か…ガッハッハッハッハッ!!」
話が続かないので、男としての豪放磊落さを見せるために、豪快に笑って見せる。しかし!