■海外で麺をすすって食べるとどうなるのか
海外の現地で、麺をすすり、激しく音をたてながら食べたとしたらどうなるのだろうか。外国マナーに詳しい淑徳大学の千葉千枝子教授に聞いてみた。
「欧米では、音を立てて食事をすることは“ご法度”と、幼いころから厳しくしつけられています。ナイフとフォークを使うときも、カチャカチャと音を立てないよう訓練されています。マナー違反をした場合、周囲から冷たい視線を浴びるだけでなく、店側からも紳士淑女として扱われないなど冷遇を受けることになります」
■麺をすする文化は「観光資源」ラーメンブームも牽引
欧米ではやはり麺を思い切りすするのはためらわれる。とはいえ、日本の麺をすする慣習は、外国人にとって「観光資源」の一つになっているという。
「日本人が麺をずずーっとすするのは、江戸時代、蕎麦を豪快にすする江戸っ子の気質に由来したともいわれています。近ごろでは、その土地特有の“食べ方”自体も観光資源になっています。『旅の恥じはかきすて』と言いますが、幼少期から鍛えられたマナーの本質を覆すのには強い抵抗感を示しつつも、麺をすする光景見たさにラーメン店を訪ねる欧米人も増えているようです」
では、海外の日本のラーメン店では、麺をすすって食べても問題ないのだろうか?
「海外に進出する日本のラーメン店は、どこも人気です。そうした店でラーメンを食べるとき、すする行為が疎(うと)まれることはありません。
中国から渡ってきた中華麺の文化が、日本人特有の“技の極み”で進化した様(さま)は、自動車や家電などで技術立国といわしめた日本という国の姿に、照らし合わせて感心する外国人が増えています。海外のラーメン店では、堂々とすすりたいものです」
麺をすする行為や音を出して食べることそのものは、海外では確かにマナー違反だが、昨今はそれが日本人特有の文化の一つになっているようだ。外国人を目の前に麺類を食べるときには、ぜひ堂々と音を立てながらすすって食べるのもいいかもしれない。
(取材協力)
新横浜ラーメン博物館
http://www.raumen.co.jp/
千葉 千枝子さん
淑徳大学 経営学部 観光経営学科 教授
運輸・観光全般に関する執筆・講演、TV・ラジオ出演などジャーナリスト活動に、長年従事した。国内自治体の観光審議委員のほかNPO法人交流・暮らしネット理事長。
http://chiekostyle.seesaa.net/
取材・文/石原亜香利