日本人なら縄文時代を参考にするのが吉!?
15万年前になるとようやく現在の我々とほぼ同じ容姿のホモ・サピエンスが登場した。仮にこの時代の人が現代の遺体安置所に運び込まれたとしても、そこの病理学者は現代人と見分けがつかないという。つまり、私達とほぼおなじ消化器官を持っていたということだ。そして、ご先祖様たちは約7万年前から全世界に拡散していったのだ。
突然だが、あなたは乳製品をとったあと消化不良や下痢などの症状が出ることはないだろうか。一般的に哺乳類は、生まれてから母乳を飲む数年間だけ乳糖(ラクトース)を消化するための酵素ラクタマーゼを体内で作りだし、成人すると大多数の成人はラクターゼをつくる能力失う。
しかし、100人に35人は乳糖耐性を持ち成人しても乳製品をとることができる。この耐性を多く持つ人達を辿ると、北ヨーロッパ人やアフリカおよび中東で酪農をおこなっていた文化を持つ方に行き着くのだ。この方達に比べ、東洋人は「乳糖不耐症」という乳糖を分解できない方が多いそうだ。
動物の家畜化がはじまったのは紀元前8000年頃なので、ここ数千年でも住む地域により多少体質の違いができているのかもしれない。というわけで、日本人が農耕をはじめる前、つまり縄文時代の食生活を見ていけばかなり体質にあった食事がわかるのではないだろうか。
貝塚が語りかける縄文時代の食生活
縄文人の主要な食物は,堅果類と根茎類を中心として,補完的に魚肉や獣肉を食べていた。具体的には、1日70gのタンパク質と1,200~3,500カロリーの摂取という条件を満たす食べ物群を解析した結果、タンパク質についてはその約40%が魚介類から、30%が獣肉、30%が堅果類や野生のヤマイモ類植物という食事をしていたと推定されている
ちなみに、四季の変化に合わせた生活環境も判明している。春は土器を作りながら野山で野草、海でアサリやハマグリをとり、夏は漁労が最盛期を迎えアザラシやカツオを食べる。秋は石器を作りながら森で木の実を拾い、川でサケやマスをとり、飛来するガンやカモを仕留め冬に備える。冬から春にかけては、家造りをしつつクジラやイノシシ、シカなど狩猟をする季節であった。
学生時代に勉強した縄文時代と様子が異なり驚いている方もいるのではないだろうか。本文とは関係ないが、ネアンデルタール人やホモ・デニソワ人は絶滅したというのが定説だったが2010年の遺伝学者の研究により数%だが彼らの遺伝子が一部の地域の人の遺伝子に入っていたそうだ。びっくりだね!
私たちの心は今もまだサバンナに
現在、進化心理学の分野では、私達を取り巻く社会的特徴や心理的特徴の多くは、狩猟採集生活に適応していると主張されている。私たちはサバンナで日がな一日食べ物を探せるように進化したが、毎日のように満員電車に乗り、パソコンをいじるように体ができているわけではない。このギャップが精神病などにつながっているそうだ。
「パレオダイエット」はこの面から見ても現代人にとって良いものかもしれない。しかし、注意しなくてはいけないのは「大食いの遺伝子」説だ。サバンナや森では食べ物は常に不足していたので、カロリーの高い熟れた果物があればその場で食べられるだけ食べるのが理にかなっていた。
この遺伝子は現代にも脈々と受け継がれており、冷蔵庫にアイスがあれば空になるまでせっせとスプーンで口に運び、ラージ・コークで胃袋に流し込んでしまう。
狩猟採集生活を心がけるパレオダイエットではお腹が空いたらその時に食べるとされているが、食べすぎてしまう遺伝子があるという有力な説があるので(経験的にも納得できるのではないだろうか)、くれぐれも本能に従いすぎないよう注意して欲しい。
■参考文献:
ルース・ドフリース(2016)『食糧と人類』日本経済新聞出版社
ユヴァル・ノア・ハラリ(2016)『サピエンス全史』河出書房新社
『山川 詳説日本史図録』(第6版)(2015) 山川出版社
ジャレド・ダイアモンド(2012)『銃・病原菌・鉄』草思社文庫
■参考URL:
http://ofgs.aori.u-tokyo.ac.jp/kawahata/chishitsu_news_n669_p11-20.pdf
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/20140819/411813/
http://www.jpof.or.jp/prevention/milk/
文/荒井慎一郎
構成/メンズビューティー編集部(http://beauty-men.jp/)