■ガムを噛むことで得られる頭部の血行促進効果
そしてステップ3では、しっかりとした髪の毛を育むためには血行を良くすることを説く。そのために、薄毛のタイプ別に合った育毛マッサージ方法や、どのタイプでも効果的なマッサージ方法のほか、どのタイプの薄気の人にも抜群に効果があるエクササイズも紹介。血行を改善する豊富なメニューの紹介に著者の親切心を感じるが、「なるほど」と思ったものの1つが、ガムを噛むこと。ガムを噛むことで得られる効果を、次のように紹介している。
「ガムを噛んでいるときに、こめかみに手を当ててみてください。ガムを噛んでいるあごだけでなく、こめかみまで動いていませんか。こうして、顔の表情筋の多くを動かすことで、頭部全体の多くを動かすことで、頭部全体の血行が促されるのです」(第1章 p55)
■育毛の観点から見た食事の重要性
しかし、本書で一番印象的なのが、第4章で触れている食事の重要性。育毛というと、髪や頭皮だけにスポットが当たりがちだが、髪は体の一部。人間お体は食べたものでつくられている以上、食事は無視することができないというのは大いに頷ける。
本書では、炭水化物抜きダイエットで髪が薄くなってしまった女性の例が紹介されている。PULAで施術を受けていたその女性、施術を受ける前よりヒドい状態になってしまったので、その原因を探っていたところ、ダイエットのレッスンを受け、炭水化物を大幅に減らす指導を受けていたとのこと。体重は10kg減り引き締まった見事なスタイルを手に入れた代償として、髪が抜けてしまったというわけだ。
見事なスタイルを得る代わりに髪を失うという、笑うに笑えない事態。これは、食事制限で真っ先に影響を受けるのが、髪や爪など生命活動に直接影響を受けない末端部分のため。栄養が行き届くのが後回しになることによる結果だ。行き過ぎた食事制限は体にとってよくない結果しかもたらさない、と心得ておくべきなのだろう。
当然、食事は栄養バランスが大切だということになる。同じものばかり食べ続けたり、丼ものなど手軽に食べられるものばかりを昼も夜も食べるのは、薄毛予防の面からいって好ましくないことになる。
これと同時に、著者は朝食をしっかり摂ることが大切だと言う。それは、
「昼や夜に摂る栄養は、活動後の食事のため、筋肉の生成やホルモン分泌に消費されやすい傾向があります。朝食のほうが、育毛のためにしっかりと栄養が使われる傾向が強いのです」(第4章 p127-128)
というためである。本書を読むと、規則正しい生活を送り、栄養バランスの良い食事を摂り、そしてストレスを溜めない、といった人間の健康に資することが育毛や薄毛予防にいいことが実感できる。髪も体の一部だと再認識した方がよさそうだ。
『世界一簡単な髪が増える方法』
アスコム 刊/辻敦哉 著
1300円+税
https://www.amazon.co.jp/dp/4776209233
文/大沢裕司