-なるほど、そうおっしゃいますか。でも、そうそう仕事は辞められないし、たぶん、どうしてもサボれない人が、月曜が嫌いなんですよ。
向井:でも、月曜が嫌だということは、嫌なことをして生きているわけですよね。それを例えば、家庭を守るためとか、責任があるからやめられないとか言うのは、自分に対する言い訳です。「仕事頑張ってる俺エライ」みたいな、カッコイイ自分演出です。それで嫌々月曜をスタートする必要はありません。嫌なことをやめて好きなことをやればいい。
-でも、嫌なことがあるのは仕方ないし、もしかしたら、月曜が嫌なことも必要かもしれないと思うんですよ。嫌な日があるから楽しい休日もあるわけだし、苦しい努力も、成長のために必要なのかもしれないと。月曜の憂鬱って、必要な部分もあるんですか?
向井:ないです。楽しい方がいいに決まってる。「刻苦光明必ず盛大なり」という言葉があって、苦しみの先には光があるという意味ですが、苦しくない方がいいです。『アリとキリギリス』のアリはいいですね。アリは、冬支度を一生懸命頑張りましたが、その冬支度を楽しんでやってたんでしょうね。たぶんキリギリスのことを、「アイツ、やばくね?(笑)」みたいな感じで小馬鹿にして、優越感に浸ってたと思う。そのくらいがいいのかもしれません。
-なるほど……。
向井:世の中は「諸行無常」です。現実は変わり続ける。悪いことが起こるのも当たり前だし、あきらめた方がいいです。逆に、悪いことも、ずっと続くわけじゃない。諸行無常な現実を普通だと思い、いかにそれに自分がありたい姿をすりあわせていくか。そうして、自分がありたい姿、つまり「主人公」になって生きるのです。
-わかりました。そのような仏教の考え方のように、人生を送っていけばいいんですね。
向井:まあ、それが一応の答えなんですが……、それって正直、難しいっすね。
-え?
向井:「諸行無常」とか「主人公」とか言われても、座禅をしろと言われても、どうしてもできないやつはどうすんだ、って思いません? 意識しろって言ったって、実際難しいでしょ。ちなみに、お坊さん業界は、逆に土日が忙しいんですが、人によっては重い仕事があると「土日やだな」って思ってますよ。
-そうなんですか!?
向井:僕も、仕事多い土日より、もちろん暇な平日の方が好きですよ。みんな平日仕事してるから、街が空いてて、映画とか空いてるときに見れて超ラッキーって思ってます。
-では……、結局、休み明けの憂鬱を無くす方法って、何なんでしょうか?
向井:うーん……、全然わかんないっすね~。ちょっと、検索してみます。
……。
向井:わかんないっすね……(笑)。
-わかんないんかい。
【今回の、月曜を楽しくするためのヒント】
・人生は諸行無常であり、一週間は「線」ではなく「面」であると捉える。
・とはいえ、嫌なものは嫌なんだから、しょうがない。
話し手/向井真人
1985年 東京生まれ。明治学院大学卒業。2010年 円覚寺専門道場から、深川 陽岳寺にうつる。同年、副住職となる。坐禅会やYOGA、ゲーム会などを開催する、ようがくじ「不二の会(ぷにの会)」を主催。
文/高橋晋平