みつさん「だから、役割分担なんじゃないか。みんなが5時に帰ったら会社が倒産する。当然だよ。でも、みんなが夜12時まで残るような会社になったって倒産するさ。
彼女が会社を全体的に緩和していることに気づけないのかい? 君だって彼女がいるおかげで、少しだけ早く帰れる環境になっているはずだ」
今井「あ、確かに。彼女が来る前は、10時まで残ってましたけど、彼女が5時に帰るもんで、8時に帰ることへの罪悪感がなくなりました」
みつさん「ほら、彼女のおかげで会社全体の残業時間が減っているじゃないか。君の帰りやすさも彼女がつくっている。それが、新人である彼女の役割だ。新人が一番役に立つのは、何だと思う?」
今井「新人は、役に立ちませんよ」
みつさん「いいや、『役に立たない』という役に立っているんだよ。新人が一番役に立つのは、『役に立たない』という点だけだ。何もできないんだから、当然だよ。
でも、何もできないという価値がとても大事なんだ。5時に帰るなんて最低だと言われながら、君たちが8時に帰りやすい環境を整えてくれている。『仕事もできないくせに』と言われながら、君たちが仕事ができる気にさせてくれる。君の教育係は、彼女だ」
今井「教えているようで、教わっていたということですか?」
みつさん「どっちもだよ。君は教えている。会社の常識を。
そして、彼女は教えてくれている。『常識がおかしい可能性はないですか?』と。どちらも、会社にとってとても重要な役割だ」
今井「確かに、一度彼女に『どうして5時に帰ったらダメなんですか?』と言われた際、反論できなかった。就業規則には書いていないから。雰囲気や慣習で残っているだけで、会社の常識がすべてじゃないかもしれないですね」
みつさん「自分が信じ込んだ常識というのは、世間にとっては非常識なのかもしれない。新しい価値観の彼女の役割は、会社にずっといたせいでわからなくなっていることを、君たちに教えることじゃないか」
今井「会社にいたせいで、わからなくなっていることなんてあるのでしょうか?」
みつさん「あるよ。『わからなくなっていること』なんだから、当然、君たちにはわからないんだけどね」
今井「そうか。ひょっとすると長年の経験のせいで、何かがわからなくなってきているのかもしれない。そして、何が『わからなくなってきているか』は、わからなくなっている私たちには、わからないはずですよね。彼女には、それがわかっているのか」
みつさん「そうだ。彼女は君たちがわからないことを、わかっている。君たちは彼女がわからないことを、わかっている。
この価値観の違いこそが、お互いの理解を深めるんじゃないか。彼女には君たちが必要なように、君たちにも新しい価値観である彼女が絶対に必要なんだよ」
【今週のみつさんの智慧】
(1)彼女が5時に帰るおかげで、良くなっていることがないか探してみよう。
(2)自分たちが信じている常識だけが、正しいとは限らないと知ろう。
さとうみつろう●大学卒業後、エネルギー系の企業に入社。2011年、ブログ『笑えるスピリチュアル』を開始。様々なブログランキングで1位に。14年に会社を辞め、全国各地でトークショー&ピアノライブを開催。現在は那覇市在住。http://ameblo.jp/mitsulow/
文/編集部
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