先行きがわからない今の時代、組織は結束力がますます求められている。多くの企業は、その社員同士や、上層部と社員との絆を深めるさまざまな取り組み実践している。その取り組み例を知ることは、社内の人間関係をいかによくするか、すでに良い関係があれば、それをいかに深めていくかの参考になるだろう。また、最近では、社員の絆を強くするために、各企業ではどのような福利厚生を取り入れているのだろうか。そのトレンドも紹介したい。
■社員の絆を強くした企業施策事例
●社長が社員一人ひとりに戦略を語り明かす
現在のKDDIである第二電電や京セラの創業者であり、JALを再建した稲盛和夫氏は、その著『燃える闘魂』の中で、不況を乗り越える策のひとつとして「従業員との絆を強くする」ことを挙げている。不況はむしろ、従業員との絆を深める絶好のチャンスであるというのだ。経営的に厳しい状況になれば、従業員へ賃金削減などをお願いすることになり、当然、反発する社員も出てくる。そんなときこそ、その人間関係が試されるのだ。
稲盛氏が行った絆を深める策は、経営理念を社員全員に共有するということだ。そして、京セラがまだ小さい時分、風邪で高熱を出して点滴を打ちながら、当時50以上もあった部署すべての忘年会に参加し、全員と杯を酌み交わし、膝を交えて熱く語り合い、己の構想をすべて語り尽くしたという。経営理念を従業員へと移したからこそ、組織全体が燃える闘魂を持って突き進むことができたのだ。従業員の立場からすれば、このような熱き経営者には強く賛同し、日々の業務にも果敢に取り組もうと思うに違いない。
●ご褒美の社員旅行で結束を深める!
社員同士の結束を深める方法として最もポピュラーなのは、社員旅行だろう。描く企業では当たり前のように行われているが、改めてその意義を見直してみたい。旅行費は会社の経費となり、家族や恋人なども同伴可能な企業もある。社員同士だけでなく、家族ぐるみの付き合いが社員間、上層部と社員間で生まれれば、さらにその絆を深めることができそうだ。
先の稲盛氏も、売上目標を達成したら香港旅行へ連れ出すと宣言し、見事に目標達成した後、飛行機をチャーターして全社員を香港2泊3日の旅へと連れ出し、さらに結束を深めたという。
●社員同士でプレゼント交換!コミュニケーション手当
企業によっては、社内コミュニケーションを活性化する手当を出す制度を用意しているところもある。3000ブランド以上ものファッションアイテムを取り扱うZOZOTOWN運営で知られるスタートトゥデイ株式会社は「FRIENDSHIP手当」という制度を設けている。
これは、毎月、ランダムに社員から40名が選ばれ、それぞれ1万円分のZOZOTOWNで使える「ZOZOポイント」を進呈し、そのポイントで、あらかじめ決められたペアになった社員にプレゼントを贈り合うというものだ。贈る日は毎月20日の「FRIENDSHIP DAY」と決まっていて、その日に向けて、互いの好みをリサーチし合うために自ずと交流が促進される。実際、このプレゼント交換をきっかけに、食事や飲みなどに発展することも少なくないという。プレゼントを通して絆を深める、今ドキの方法といえそうだ。