◆陶磁器への親しみを深めるために
安価な外国製品の輸入や家庭内での意識の変化により、日本の陶磁器生産額はここ10年の工業統計調査によると右肩下がりになっている。
そんな中、明るい話題も。まず、リタイア後の趣味にあげられることが多い陶芸だが、最近は陶芸教室に若い人が増えているとか。土をこねたり形を整えることで無心になれ、ストレス発散にも役立つところが人気のようだ。各地で行なわれる陶磁器市にも、多くの人が訪れている。
食育の現場でも、陶磁器の良さが見直されてきた。学校給食では、栄養素のバランスだけでなく、食文化全体を伝えるために陶磁器は欠かせない存在と認められ始めた様子。より良い食器を使用することは、豊かな食育環境を整え、良好な食習慣やマナー向上などに役立つと考えられ、給食食器に陶磁器が選ばれることが増えているそうだ。食器成分の溶出を避けるといった安全面でも、陶磁器のメリットを感じる。
食器以外にもステーショナリーやインテリア、工業製品などへの展開も進んでいる。特に、岐阜県では高額にも関わらず注文後10ヵ月待ちと言われている次世代型無水鍋「セラ・キュート」のような革新的な商品も誕生している。美濃焼の製造技術を活用してフタと鍋本体の密着性を高めた土鍋で、この開発により、2015年度に東海三県で初めて経済産業省が推進する「ふるさと名物応援宣言」として美濃焼が発表された。
「セラ・キュート」は、この事業の地域産業資源活用事業の第一号に認定されている。地方の中小企業が付加価値の高い製品を生み出す事例を見ると、日本のもの作りのレベルの高さを改めて感じる。まさに、日本の陶磁器は世界に誇れる文化。食育や陶芸に親しむことで、陶磁器の良さを見直したいものだ。
海外では、今、日本茶ブームだとか。特に陶器の茶碗で飲む抹茶の独自性は、洗練された所作とともに人気の様子。これを機に、海外の人にも桃山文化以降培ってきた「侘び寂び」と一緒に日本の陶磁器にも注目してみてはどうだろうか。