『暗闇の先に待ち受ける夢の国』
映画『地獄の黙示録』の原作、ジョセフ・コンラッドの『闇の奥』をも彷彿とさせる、わずか10メートル程の歩行の先に、なんと二軒の焼肉屋さんが向かい合って存在してるじゃないか!!
この衝撃! そしてオレはその二軒の中でも、より闇の奥に鎮座する店の入口上でかすかに灯っている『ホルモン焼 大衆酒場』という看板に心奪われた。
もうココ、入店するしかないでしょう! それが焼肉『O(仮名)』だ!!
引き戸を開ると、建物こそは年季を感じさせるが清潔な店内。4人ほどが座れるテーブル3ツとカンウター。その上には焼肉のガスロースターが置いてある。
店をまわしているのは年配の女将さんと、おそらくその息子さんだろうか、中年の若主人。入った瞬間、素晴らしい人当たりのよさで、
「どうぞいらっしゃい!」
と出迎えてくれた。もうこの時点で、さっきまでの恐怖はどこへやら!! その日はオレ、この連載常連のU氏、T氏の三人でいたのだが、三人ともアッという間に夢のような焼肉世界へと突入していくのであった。
上着を脱げば「これにいれてください!」と出してくれたのが衣装ケース! ほら最近見かける無煙ロースターなんてやつじゃない、スリット状の網があって、その下に水を張った受け皿があって、炎は網の下横から出るタイプの懐かしいロースターっすからね。もちろん店内には換気扇も回っているけれど、焼肉を焼いたら服に臭いがつくかもしれない、だからこっちに隔離しておいてくださいという、この最近の日本人が忘れてしまったかのような真心に早くも心はヒートアップ。
壁に貼られた短冊メニューを見れば肉がまぁ安い。で短冊メニューがあるにも関わらず、ちゃんとテーブルには印刷された卓上メニューもある。こういう秘境ッぽい、ましてや年季を感じさせる店だから短冊メニューだけでアグラを書いてるかと思いきや、ここもまた真心ですよ。真心焼肉ですよ。
突き出しにモヤシのナムルが登場したところで我々も注文。まずは川崎といえばこれでしょうという『ハラミ(700円)』。そして『タン(700円)』に『ホルモン(450円)』。そしてアルコールはボトルの『ジンロ(2200円)』。ジンロの氷と水はサービスで付いてまいりました。
ちなみに700円のメニューはこの店では高額メニューの部類で、それより高いのは『カルビ』の750円しかない! ホルモン類はほとんどが450円か500円という真心価格である。
そして、ほどなくして肉が到着するのであった。