昨年、英国のミュージシャン、デヴィッド・ボウイが亡くなった。その死因は肝がんだったと報じられている。その69歳の命を奪った肝がんは、誰もがリスクがあるがんである。このがんについて、気になった方も多いだろう。ところで、実際に、この肝がんの原因や予防策はどのようなものがあるのか、チェックしていこう。
■肝がんの原因は?
日本肝臓学会によれば、肝がんの死亡者数は2000年代前半に最多となり、現在は減少してはいるものの、年間粗死亡数は3万人超えの状況だという。肝がんの主な原因は、B型肝炎(HBV)やC型肝炎(HCV)の持続感染による慢性肝疾患であり、わが国ではC型肝炎と肝硬変から肝がんに至るケースが多いのだという。
日本では、C型肝炎ウイルス感染による肝がんが最も多く70%を占めており、その他のB型肝炎ウイルスとアルコールなどは10~20%程度にとどまっている。肝臓を悪くするというと、どうしても飲酒の影響をイメージする人も多いかもしれないが、実際には、直接的な原因ではないようだ。
■ビジネスパーソンができる肝がんの予防法
肝がんを予防するためには、C型肝炎ウイルスの感染を防ぐことが現実的な対策といわれている。このC型肝炎ウイルスに感染するルートは、輸血、血液製剤、注射針の使い回しなどによるものだといわれている。しかし、肝臓は“沈黙の臓器”といわれているように、肝がんは他のあらゆるがんと比べて、症状がほとんどなく、気づきにくい病気。つまり、定期的な検査が必要なのだ。しかも、オムロンの記事によれば、C型肝炎ウイルスに感染していたとしても、実際に慢性肝炎や肝硬変などに発展するには、20~30年もの歳月がかかるという。40歳以上の人は、一度、過去の感染を疑い、検査を受けておいたほうがいいかもしれない。
■コーヒーに予防効果。ただし、感染確認が先
では、日常生活において、肝がんのリスクを下げるにはどうすればいいのか。実は、国立がん研究センター(当時は、研究を行なったのは厚生労働省研究班)の調査で、コーヒーを1日1~2杯飲んでいると、肝がん発症リスクが半分程度に低下するということが明らかになった。これは、コーヒーに含まれるポリフェノールの効果ともいわれている。しかし、以前、国立がん研究センターが発表した資料によると、C型、B型肝炎ウイルスに感染していない限り、コーヒーをいくら飲んでもほとんど予防策にはならないという。ただ、炎症を和らげる作用があることは、確認されているようだ。
C型、B型肝炎ウイルスに感染する機会は、他人の血液に触れるような状況が起きない限り、日常生活ではほとんど考えにくい。輸血や血液製剤などの感染も、通常であれば起こりえないことだ。国立がん研究センターは、思い当たることがなくとも、中高年の世代は昔、受けた医療行為によって感染していないとは言い切れないため、一度地域の保健所や医療機関で検査を受けるべきだと呼びかけている。
取材・文/石原亜香利
※記事内のデータ等については取材時のものです。