★野良猫が増えないよう不妊・去勢手術を行う
全ての猫を捕まえて不妊・去勢手術を行なうのは不可能です。地域猫では、餌場を決めて餌を与えるため、餌を求めて他の地域から猫が入ってきますが、閉鎖された空間ではないので流入を防ぐことはできません。また、地域猫を行なっているため、餌に不自由しないと安易にそこに捨てに来ることがあります。
★餌を与える場所を定め、給餌行為で他人に迷惑を掛けないようにする
これは、お腹をすかせてゴミを漁らないようにするためといわれています。ですが、餌やりは猫を増やす要因になっています。「個体管理をした猫以外には給餌しない」とのルールを課したとしても、現実には集まってきた猫に無分別に給餌することになってしまいます。それに餌を与えることで栄養が行き届くようになり、その分寿命が延びます。それは結局のところ、繁殖回数を増やすことになります。
★放置された猫の糞を掃除する
餌場の周りの公共の場所はちゃんと清掃されるようですが、他人の敷地内は勝手に入れないため、基本ほったらかし状態です。定期的に餌を与えることにより、糞などの被害が発生するような場所に自ずと集中することになります。
残念なことに、「地域猫」というものを、エサやりという批判をかわす手段として正当性を主張する目的で利用する人、自分では世話できないから住民に押し付けている人が多く存在しています。単にエサだけを与える、手術のみしている、周辺地域住民の理解を得ていないといったものは、猫好きの自己満足、地域への押し付けと言われてもしかたがないのではないでしょうか。
「勝手な解釈の地域猫」の広がりによって誤解が生じ、「真の地域猫」を目指している人達への風当たりも強く、影響が出ています。
もともと地域猫活動は、欧米で先行していました。米国やヨーロッパ諸国の自治体の多くで地域猫を制度化しています。しかし磯子区汐見台地域猫と同様、理論通りに野良猫は減らず、近年では地域猫の見直し機運が高まっています。地域猫運動が野良猫減少に役立っているのかどうか、統計上の結論は出ていません。
また、問題点もたくさん浮上してきており、地域猫運動の広まりの足かせになっていることも現状です。どうすればもっとより良い効果的な地域猫運動になっていけるのかは、行政も含めた議論が必要と思います。現状では何もやらないよりまずはやってみる、ということだと思いますが、やはり統計を含めた調査をボランティアに頼らず行い、国や市町村などの行政が中心となるべきでしょう。いいお手本に広島のふるさと納税制度もあるんですから。
文/林 文明(はやしふみあき)
1988年北里大学獣医学修士課程修了。1998年コロラド州立大附属獣医学教育病院に留学し、欧米の先進動物医療を学ぶ。現在は、山梨・東京・ベトナムで5つの動物病院を経営。獣医師、日本動物医療コンシェルジュ協会代表理事。
◆日本動物医療コンシェルジュ協会
http://www.jamca.gr.jp/
◆ノア動物病院
http://www.noah-vet.co.jp/
最新著書『愛犬を長生きさせる食事』(本体1000円+税)好評発売中!
https://www.shogakukan.co.jp/books/09310837
構成/ペットゥモロー編集部