「中目黒を選んだ理由は、大きな人の流れがある場所であると同時に、緑が多くあるというのも大きな要素になっている。ロースティングということで、自然とマッチしている環境かどうかを重視した結果、中目黒は非常に魅力的な街だった。シアトルの店舗を見ても非常にユニークな場なので、地元の方はもちろん、東京だけでなく日本全国、海外の方も来ていただけると思っている」(水口氏)
目黒川沿いの自然豊かな場所で、敷地面積は1200平方メートルと通常の店舗と比べるとかなり大きい施設になる。店舗で生豆から焙煎してコーヒーとして提供するのは日本のスタバでは初めての試みだ。ロースタリーではマーチャンダイズも改良を加え、イタリア料理で有名なロッコ・プリンチ氏が監修した高級ベーカリー「プリンチ」のフードやパンも取り扱う予定。
中目黒のロースタリーのデザインは、スタバの「太宰府天満宮表参道店」を手がけた隈 研吾氏が担当する。伝統的な木組みを用いて、日本の職人の技を世界にアピールできるようにデザインをしたという太宰府天満宮の店舗は、世界中から客が訪れる有名店となっている。(※画像は「GOOD DESIGN AWARD」より。(C)JDP)
「外国で講演会をやる機会も多いが、講演後に学生さんに“スターバックス、行きました!”と言われることがとても多い。太宰府天満宮の店舗は私にとっても思い出深い仕事だった。
今回のプロジェクトだが、まず中目黒にこんなに広い敷地があったことに驚いた。目黒川沿いの場所で、桜並木があって、川の音が聞こえる。住宅エリア、商業エリア、工業エリアと限定されず、いろいろな要素が全部ミックスした新しい時代のライフスタイルを予感させ、しかも東京なのに自然を感じさせる特別な場所。スターバックスの新しいコンセプトのロースタリーはぴったりのマッチングで、ここでデザインできるのはハッピーでエキサイティングなことだと思っている。
21世紀は人間が自然の重要さに気づく時代だと思う。ロースタリーは自然が生んだ生豆がプロセスを経てコーヒーになる過程を体感できる、21世紀の姿を予感させる特別な場所になると思う。これからの建築は自然素材をどう使うかが大事になるという思いで作っているが、今回も自然素材をピュアに力強く見せることを考えてデザインしている。店舗と周囲の景色が完全に溶け合って、自然と人間のつながりを暗示させるような建物にしたい」(隈氏)