血糖値が慢性的に高い状態が続く糖尿病は、初期症状に自覚症状がほとんどなく、健康診断などで指摘されるケースが多い。進行すれば血管や神経に影響して、心筋梗塞や脳卒中などのリスクも高まる。生活習慣病の一次予防を中心に、成因、診断、治療、リハビリテーションに関する知識の普及啓発、生活習慣病に関する調査研究を行う日本生活習慣病予防協会は、医師と一般生活者に『血糖値・ヘモグロビンA1cに関する意識調査』を実施した。調査では、「血糖値」と「ヘモグロビンA1c」の認知に医師と生活者では大きな差があり、糖尿病のリスクを把握する上で認識のギャップが浮き彫りになったという。
「血糖値」と「ヘモグロビンA1c」
「血糖値」は採血をした時点での血液中にどれだけ血糖があるかを示す指標で、エネルギー源である血糖は食事直後に上がるが、糖尿病がなければ時間とともに空腹状態の値に戻る。食事をするとまた上がり、それを繰り返すので1日のうちでも数値が変動する。糖分の多い飲み物などを摂取することで一時的に血糖が急上昇する「血糖値スパイク」など糖尿病リスクが高い人でも、食後10時間以上あけた「空腹時血糖値」は低く測定されることがあり、「血糖値」だけでは糖尿病の予備群を見逃す「血糖値の落とし穴」にハマってしまう可能性もあるという。
一方の「ヘモグロビンA1c」は、過去1か月から2か月の血糖の平均状態を反映した、1日のどこで測定してもほとんど変動しない数値。空腹時に血糖の異常がなくても食後の血糖値が長時間高くなる人には、特に有用な検査項目だ。血液の中では、取り込まれた糖のうち一部が赤血球の中に入り、ヘモグロビンと結合するが、糖と結合したヘモグロビンがどれだけの割合で存在しているかを示すのが「ヘモグロビンA1c」で、一度結合するとその赤血球が寿命を迎えるまで蓄積されるので、血液中に糖が多い状態が長く続く人ほど糖と結合したヘモグロビンの割合が高くなり、「ヘモグロビンA1c」が高くなる。
医師は「ヘモグロビンA1c」、生活者は「血糖値」
医師に「健康診断で、患者により見てほしいのはどちらか」を質問すると87.0%が「ヘモグロビンA1c」と回答したが、生活者に「糖尿病のリスクを把握する上で、より重視するのはどちらか」を質問すると68.7%が「血糖値」を重視していた。糖尿病リスクを把握するために見てほしいところでは、医師と生活者に認識のギャップがあった。
医師が重要視する「ヘモグロビンA1c」は生活者の知名度ワースト
医師と生活者の認識ギャップが生まれる要因は、「ヘモグロビンA1c」が生活者にあまり知られていないという背景がある。医師は「各指標が健康管理の観点でどのくらい重要か」について、78.2%が「ヘモグロビンA1c」を非常に重要と回答しているが、これは血圧に次いで2番目に高く、血糖値は64.4%で5番目だった。一方の生活者に健康診断で測定される各指標の認知度を調査すると、「ヘモグロビンA1c」を知らない人は約4割と全指標のもっとも高い割合だった。ちなみに血糖値を知らない人は2.3%で、認知度の差も大きかった。
生活者の意味を知っている7割は「ヘモグロビンA1c」が重要と回答
「ヘモグロビンA1cを知っている」と回答した人の理解度の状況で、糖尿病リスクの把握に対する重視する指標にも大きな違いがあった。「意味まで知っている人」の70.8%は「ヘモグロビンA1c」を重視すると回答したが、見聞きした程度の人で「ヘモグロビンA1c」を重視すると答えたのは29.2%だった。「ヘモグロビンA1c」の認知を広げるには、名称だけでなく血糖値との違いや指標としての意味まで伝えることが必要といえる。
医師が考える「ヘモグロビンA1c」が重要な理由
医師は「ヘモグロビンA1c」を重視する理由について、もっとも多かったのは「過去1か月から2か月の血糖状態を反映するため」(82.1%)だった。それに「検査当日の食事の影響を受けにくいため」(62.1%)、「糖尿病の診断基準に用いられているため」(47.6%)が続いた。
生活者の8割以上が血糖値でリスクを把握できると思っている
「血糖値」を知っている生活者のうち、その測定や数値によって糖尿病予備群などのリスクを把握できると思う人が87.5%もいた。血糖値が身近な指標なので、「血糖値を見ていれば大丈夫」と受け止められやすいことも“血糖値の落とし穴”になりそうだ。内訳では、「非常にそう思う」は20.5%で「そう思う」は67.0%、「そう思わない」と「まったくそう思わない」は合わせて12.5%だった。医師調査では、「ヘモグロビンA1c」を重視する理由として「血糖値では「予備群」を見落としてしまうため」を挙げた医師が36.4%もいた。大半の生活者が十分にリスクを把握できると感じる「血糖値」だが、医師が挙げる「予備群の見落とし」との間に意識のギャップがあるようだ。
医師の9割が考える避難生活での血糖コントロールの重要性
令和8年熊本地震や各地で発生している豪雨災害など大規模な災害が複数発生しているが、災害時の避難生活は食事の偏りや運動量の低下、生活リズムの乱れなどから血糖コントロールが難しくなることが考えられる。避難生活における血糖コントロールの重要性に関しては、医師の9割は重要性が高まると回答している。調査結果を踏まえて日本生活習慣病予防協会の代表で東京慈恵会医科大学客員教授の和田高士氏は次のようにコメントしている。
「今回のアンケートにおいて健康管理上の重要性として、医師が血圧の次に「ヘモグロビンA1c」を挙げたこと、これら以外の順位も医師の立場からすると図星でした。一方、生活者対象の調査結果では「ヘモグロビンA1c」が最下位でした。その理由は、健康診断では糖尿病検査としては血糖か「ヘモグロビンA1c」のいずれか実施でよいこと、空腹状態が必要な中性脂肪も同時実施するなら採血側が血糖を選択してしまうこと、その結果、生活者に「ヘモグロビンA1c」を認知される機会が減るためと考えられました。「ヘモグロビンA1c」は変動する血糖と異なり、過去1か月から2か月の血糖平均状態を反映するため、糖尿病状態を容易に評価でき、健康管理には必須の血液検査項目です」
普通の人は「血糖値」の高さを見れば糖尿病リスクを把握できると考える人が多かったが、実際には認知度が低い「ヘモグロビンA1c」を重視する必要がある。自覚症状を感じにくい糖尿病は、医師からの指示をきちんと把握してリスク管理をしたい。
『血糖値・「ヘモグロビンA1c」に関する意識調査』概要
医師調査:全国の医師331人を対象に健康診断項目の重要度、患者により確認してほしい指標、「ヘモグロビンA1c」を重視する理由などを調査。
生活者調査:全国の20歳~69歳の男女310人を対象に健康診断項目の認知度、糖尿病リスク把握で重視する指標、「ヘモグロビンA1c」の認知度などを調査。
調査時期:2026年9月
調査方法:ウェブ調査
調査主体:日本生活習慣病予防協会
協賛:明治
※構成比(%)は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合や内訳の合計と「計」が一致しない場合があります。
https://seikatsusyukanbyo.com/
構成/KUMU




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