昔の常識が今の非常識になっていることは多い。特にペット分野では古くて間違った情報が更新されずに残されていて、飼い主さんを不安にさせている。例えば愛犬との散歩では、トイレは家で済ませてから行くのが、今の常識。もちろん、散歩でマーキングする場合は、ペットボトルの水でトイレの跡を残さず流す行為は、ほとんどの飼い主さんがやっていること。今回は今こそ飼い主さんに上書き保存して欲しい、新常識を紹介しよう。
お散歩の新常識その1
一般の道を歩く愛犬との散歩では伸びないリード
散歩中に首輪が外れたり、リードごと逃げる事故は多い。散歩中はリードをしっかり持って、犬が道路に飛び出す事故を防ごう。伸縮性リードは伸びないように固定していても、強く犬が引っ張ると壊れてしまい、紐をコントロールできなくなるケースが報告されている。さらに伸縮性リードは持ち手が固定されている商品が多く、突然犬が引っ張ると手から離れてしまうことも。伸びないリードを手首に巻いて持ち、突然、力が加わっても手から外れないようにしたい。一般道を歩く日常的な散歩では、伸びないリードで愛犬との距離をしっかり保とう。
お散歩の新常識その2
歩くだけの散歩に、大好きな行動を取り入れる
毎日の散歩をもっと犬にとって楽しく、わくわくするような時間にすることで、飼い主と犬との絆が深まる。「食べるのが大好きだけれどお散歩や運動は苦手」という子には、散歩の途中でおやつタイムを取り入れてみよう。公園で枯葉の上をサクサク歩くのが好きな子は、落ち葉を探して歩いたり、何かを探すことが好きな子は、探せる場所の多いごちゃごちゃした小道や川原などに行ってみる。飼い主さんと遊ぶのが好きな子は、散歩の途中で公園にボールを隠して探しながら歩くなど、単純に歩くだけの散歩から、犬の大好きなことを取り入れた散歩を企画して取り入れてみよう。しっかり運動して体力をつけることは、愛犬の健康にも、心の安定にも役に立つ。
飼い主さんの意識に関する新常識その1
愛犬の苦手なことを無理やり力で克服させない
最近のしつけの教科書では、犬種や年齢、育った環境などで、犬にもさまざまな性格があり、怖がることや苦手に感じることは犬によって個性があると考えられるようになった。遊びが大好きな子がいる一方で、静かにくつろぐ時間が好きな子もいる。飼い主さんがやって欲しいことを愛犬に無理強いしても、受け入れられることと、そうでないことがあることを、理解しておくこと。ドックランで遊ばない子を社交性が無いと決めつけ、無理に他の犬と近づけようとするのはストレスを増やすだけ。その子の性格や好きなことに合わせてあげることが大切。
飼い主さんの意識に関する新常識その2
「どんな犬も人間が大好き」ではない。
犬にも個性があり、人好きの子もいればそうでない子もいる。飼い主さんは普段の様子から「うちの子は人が大好き」と思いがちだが、そうでないケースも多い。飼い主さんが言う「人」はほとんどの場合家族や親しい友人のこと。犬にとって面識のない他人は、恐ろしく、警戒して当然である。散歩中に「うちの子は人好きだから」と犬と遊ばせて、咬まれてしまう子供は意外と多い。特に抱っこしている犬を触ることは、犬にとって、逃げ場のない不安を募らせるNG行為だ。他人の犬には目を合わさず、触れ合わないのが現代のスマートマナーである。
日本では犬が人を噛んだ場合、咬傷事故として、飼い主が保健所や動物愛護センターへ事故の発生を届け出る義務がある。ほとんどの場合はかかりつけの動物病院に相談することで、事故発生届の提出方法などをアドバイスしてくれる。犬に咬まれた人の多くが、「嬉しそうに尾を振っていたから手を出した」と言うが、犬は嬉しい時だけ尾を振るのではない。恐れていたり、怒っていたり、緊張した時もゆらゆら尾を揺らすことがある。「怒り」「恐れ」など、犬のボディランゲージを知っておこう。
しつけに関する新常識1
「吠えたら叩く」しつけはNG
昔は叩いてしつけをすることも多かったが、今は問題行動の原因を探り、吠える理由を調べた上で、問題を解決していく「問題解決」が主流である。叩くことで驚き、一時的に鳴きやむことはあっても、原因が解決しないかぎり、吠え続ける。例えば、玄関のチャイムが鳴ると猛烈に吠える犬は、外敵から飼い主を守ろうとして吠えていることが多い。チャイムを鳴らす人が大好きな飼い主さんだと理解したり、安全な場所で守られていると理解すれば、吠えなくなることがある。こうした問題行動についても、かかりつけの獣医師に相談すると、優秀な訓練士を紹介してくれたり、アドバイスしてくれることがある。
しつけに関する新常識2
病気やケガでなくても「しつけ」に困ったら動物病院に相談
動物病院に慣れてもらうためにも、病気にならないためのワクチン接種やノミ・ダニ予防など、動物病院に積極的に行こう。病気以外でも、例えばトイレマナーに悩む飼い主さんが獣医師に相談したところ、病気が原因だったことがわかって、トイレトラブルが解決するケースがあった。病院は病気を治すところであると同時に、飼い主さんとペットの暮らしを改善してくれるヒントをくれる。看護師資格が改定されてから、しつけや訓練を学んだ看護師が適切なアドバイスをくれるようになった。さらに、良いホームドクターは病気にならないための味方になってくれる。快適なペットライフのカギになる「かかりつけ動物病院」をもっておこう。
昔、犬は群れで生活しているため、トップのリーダーが下位の若い犬を押さえつけるという考え方だった。しつけも人間が犬の上位に立ち、力を示さなければ従わないと考え、棒で叩く訓練士もいた。賢い犬は暴力を回避するため、おとなしくなっただけで、環境が変わると問題行動を起こしていた。
動物行動学が進化して、オオカミ集団の中のリーダーは群れを守る役割をもつ指導者というだけで、力による上下関係といったヒエラルキーは存在しないことが明らかになってきた。犬の問題行動に対する理解も深まり、なぜ問題を起こすのか、飼い主がその原因を追究して、犬に理解させるような訓練を促すようになっている。
愛犬が室内で一緒に暮らすようになって、問題が発生した時はその都度、適切に訂正しながら、理解を促すことも可能になってきた。人間との関係が深まるほど、犬は従順な性格へと変わっていく。犬と人が楽しく暮らすための知恵をアップデートして、愛犬との豊かな暮らしを実現させよう。
文/柿川鮎子




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