ども。ちいかわの劇場版が原稿執筆時点で興行成績150億円を突破したとのこと。えげつないですね。もちろん入場者特典が豊富だったりすることもあるんでしょうが、評価が高いのが内容です。幼児向けコンテンツかと思いきや貧困ビジネスや過酷な労働、理不尽や死まで関わってくるというエグさ。エンドロールが終わって館内に光がついた時の観客のドヨーン感は壮絶だと聞き及んでいます。私も観に行きましたが、しっかり暗い気持ちになりました。この内容を受けて赤身魚の煮付けでコラボをする某コンビニチェーン、なかなかの胆力ですね。
さて。子供向けと思いきや実は大人向けだったという作品といえば「映画クレヨンしんちゃん」ですよね。キッズが興奮する要素は各所に散りばめつつ、「大人にしかわからない」機微のようなものを柱にして泣かせにかかる。劇場版のクレしんで野原ひろしの株は大幅に上がったでしょう。同様のことは「映画ドラえもん」でも起こっていて、特に2014年の『STAND BY ME ドラえもん』は過去の作品を3DCGにしたということもあり大人が殺到しましたね。(個人的には「ドラ泣き」というキャッチコピーに思うところはありましたが)子供を娯楽に連れて行く親御さんは基本退屈しているもの、という従来の常識をぶっ壊し、親子共々ターゲットにし、さらには従来の顧客層ではない世代にまで訴求するという見事な戦略だと思います。
このやり方は私が子供の時にも少ないですが存在していた記憶があります。それもやはりドラえもんで、基本子供向けの内容ですが、『映画ドラえもん のび太の海底鬼岩城』でバギーちゃんが攻撃をするシーンでは親も感動していました。そして何より主題歌の作詞が武田鉄矢さん担当だったのも親世代ターゲットですよね。これまたいい曲なんですよ、全部。渋いんですけどね。正直、子供だった自分はその良さが全くわからなかったのですが、大人になって聴くと沁みる沁みる。

なぜ人は「鬱展開」に惹かれるのか
一方、最初のビジュアルイメージと実際の内容が全然違ったというケースも過去にありました。代表作として挙げられるのがアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』。ぱっと見、アニメファンに受けそうな可愛らしい魔法少女の活躍譚だと思いきや、仲間が闇堕ちして命を落としたり、衝撃的な展開があったりとまさに鬱展開。しかしそのストーリーの美しさから大ヒット、2026年には新作が劇場公開されましたね。
『新世紀エヴァンゲリオン』もその類ですよね。よくあるロボットアクションアニメかと思いきや本編は人間ドラマであって、絶望的な展開の応酬です。劇場版で童謡「今日の日はさようなら」が崩壊のシーンで牧歌的に流れるギャップはトラウマレベルです。実写映画で言えば、『ラ・ラ・ランド』も最初のPRイメージとは全然違う内容で驚いたものです。番宣で流れていた陽気な「Another Day Of Sun」のイメージで観に行ったのですがどんどん暗くなり、終盤はほとんどモノクロ。恋人たちの悲しい心の変化やどうしようもない時の流れをじっとりと表現しており、私号泣ですよ。そんなつもりなかったのに。三回観に行きました。
しかし、いわゆる「鬱展開」になぜ人は惹かれるのでしょうか。『ちいかわ』のように鑑賞後、心がずっしり重くなるのに。みんな予定調和に飽き飽きしているんですかね。このエンタメ飽和社会、大概のものは見たまんまで内容も予想できる。最近のコンテンツはわかりやすさを重視しているものも多く、予想の範囲内の内容にうんざりしているのでは。そこで心を重くする鬱展開は大変に刺激的。これってサウナに似ているなと思います。サウナの血圧遊びと同じく情緒の高低差を楽しんでいるのではないでしょうか。今後『ちいかわ』の成功に味を占めて鬱展開作品増えそうですね。『サザエさん』の鬱展開、ちょっと観てみたい!

ヒャダイン
音楽クリエイター。1980年大阪府生まれ。本名・前山田健一。3歳でピアノを始め、音楽キャリアをスタート。京都大学卒業後、本格的な作家活動を開始。様々なアーティストへ楽曲提供を行ない、自身もタレントとして活動。
文/ヒャダイン 写真/時事通信フォト 編集/石﨑寛明
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