連日のように企業に対するサイバー攻撃や個人情報漏洩などが報道されている。これは日本だけでなく世界的な傾向だが、はたして日本人のサイバーセキュリティの知識は、世界水準からみてどのぐらいなのだろうか。オランダに本社を置くサイバーセキュリティ企業のNordVPNは、オンラインプライバシーとサイバーセキュリティに関する知識を測る「ナショナルプライバシーテスト2026(NPT)」を発表した。
2026年は世界167か国の2万3181人が日常のデジタル生活、プライバシー意識、デジタル脅威への対応力に関する24問に回答したが、日本のNPT総合スコアは41点で世界9位だった。日本の分野別の正答率は「デジタルリスク」が47%、「プライバシー意識」が44%、「毎日のデジタルライフ」が30%だった。強力なパスワードを識別できた回答者は92%もいたが、AIを悪用した詐欺を正しく識別できたのは56%で、世界平均の74%を18ポイントも下回るなど設問によって理解度に大きな差があったという。ちなみに出題された24の設問内容は次の通り。
1.アプリにどのデータへのアクセスを許可すべきか
2.SNSでフォロワーに公開するコンテンツの範囲
3.アプリやオンラインサービスの利用規約・プライバシーポリシー
4.オンライン上のプライバシーを守るツール
5.アプリをアップデートすることのセキュリティ上のメリット
6.公共Wi-Fiを安全に利用する方法
7.使わなくなったオンラインアカウントの管理
8.Metaによる非利用者からのデータ収集
9.強力なパスワードの識別
10.パスワードを安全に保存する方法
11.インフォスティーラーが窃取する可能性のある情報
12.マルウェアの感染経路
13.AI技術を悪用した一般的な詐欺
14.閲覧データを収集する可能性のある企業
15.フィッシングサイトの識別方法
16.Cookieの主な目的
17.仕事でAIを利用する際のプライバシー上の問題
18.ディープフェイクコンテンツの主な兆候
19.ブラウザにクレジットカード情報を保存するリスク
20.銀行から身に覚えのない出金を知らせる連絡を受けた際の対応
21.AIツールに共有すべきではない情報
22.SNS投稿がAIモデルの学習に利用される可能性
23.公共USB充電ステーションのセキュリティリスク
24.公共の場所にあるQRコードを読み取る際のセキュリティリスク
※上記は、[NPT 2026]の各設問が測定する内容を日本語で要約したものです。
世界トップのシンガポールでも52点
世界全体では、2026年のNPTでもっとも高いスコアを記録したのはシンガポールの52点だった。2位のポーランドは51点、それにドイツ・フィンランドが50点で続いた。最高スコアのシンガポールも52点で、オンラインプライバシーやサイバーセキュリティの知識は世界的にも改善の余地があることがわかった。NPTは、回答結果に応じて知識レベルを4段階に分類しているが、日本は「入門レベル」(1~24点)が11%、「基礎レベル」(25~49点)が55%、「応用レベル」(50~74点)が33%、「最高レベル」(75~100点)が2%という結果だった。世界全体では「入門レベル」3.3%、「基礎レベル」53.0%、「応用レベル」41.5%、「最高レベル」2.2%なので、日本は世界全体と比較して「入門レベル」の割合は約3倍だったが、「応用レベル」は8.5ポイント低かった。
パスワードは92%が正解の一方でAI詐欺の識別は56%
24問を個別に見ると、強力なパスワードを正しく識別できた回答者は92%でSNSでフォロワーに公開するコンテンツへの理解は91%、閲覧データを収集する可能性のある企業については76%と多くの人が正しく回答した。最近の話題であるAIを悪用した一般的な詐欺を正しく識別できたについては56%で、世界平均の74%を18ポイントも下回る結果になった。ディープフェイクコンテンツの兆候を正しく識別できたのも47%で世界平均の50%を下回った。AI関連の設問では、AIツールに共有すべきではない情報については日本の正答率が66%と世界平均の57%を9ポイントも上回っている。SNSへの投稿がAIモデルの学習に
利用される可能性を理解していたのは77%で、世界平均の91%を14ポイントも下回った。仕事でAIを利用する時に考慮すべきプライバシー上の問題を正しく回答できたのもわずか3%だった。
AI関連以外では、銀行から身に覚えのない出金の連絡を受けて、緊急の対応を求められた場合の適切な行動を正しく回答できたのは62%で、世界平均の82%を20ポイント下回った、ブラウザへのクレジットカード情報の保存リスクについても日本の正答率は69%で、世界平均の87%を18ポイント下回った。フィッシングサイトの識別ポイントを正しく回答できたのもわずか8%で、世界平均の20%より12ポイント下回っている。
一方でアプリを速やかにアップデートするメリットについては64%が正しく回答して世界平均の58%を6ポイント上回り、公共USB充電ステーションのリスクについても日本は33%で、世界平均の29%を4ポイント上回るなど世界平均を上回る項目もあった。
プライバシーを守るツールや行動で低い正誤率
日本で特に正答率が低かったのは、自分の情報を守るための具体的なツールや行動に関する設問。デジタルプライバシー保護に役立つオンラインツールの組み合わせを正しく識別できた回答者は0%で、安全な公共Wi-Fiの利用方法は3%、仕事でAIを利用する時のプライバシー上の問題も3%、アプリへのデータアクセス許可については9%と低い数字になった。Cookieの主な目的を正しく理解していたのも17%だった。
今回の設問と回答結果について、NordVPN最高技術責任者(CTO)のマリウス・ブリエディス氏は、次のようにコメントしている。
「プライバシー保護ツールに関する正答率が0%だったからといって、回答者がVPNやパスワードマネージャー、トラッカーブロッカーといった個々のツールを知らないとは限りません。この設問では、それぞれの技術を区別し、どのツールがプライバシー保護に役立つのかを正しく理解しているかを問いました。今回の結果は、プライバシーが脅かされていると知っていることと、それを守るために何を使えばよいかを知っていることは、必ずしも同じではないことを示しています。デジタルセーフティは、もはやルールを知っているだけでは十分ではありません。AIによって詐欺がより巧妙になり、データ収集がより見えにくくなる中、サービスが本当に必要としている情報は何か、コンテンツを信頼できるか、プライバシーツールが実際にどのような保護を提供するのかを見極める必要があります。これからのサイバーリテラシーでは、脅威を見分けるだけでなく、一見普通に見えるものにも再確認が必要だと気づく力が重要になります」
AI時代のオンラインセキュリティとプライバシー
AIの進歩によって情報漏洩防止やセキュリティ対策は、各組織や企業にとって最重要事項になっている。個人でもできるセキュリティ対策は積極的にするべきだろう。NordVPNは、次のような対応を提案している。
・強力なパスワードを作成して安全に保管する:すべてのアカウントで固有のパスワードを使用して、ブラウザやメモ、文書ではなく信頼できるパスワードマネージャーに保管する。利用可能な場合はパスキーも有効にする。
・多要素認証(MFA)を有効にする:重要なアカウントに追加の保護層を設けて、パスワードが盗まれただけではアクセスできないようにしておく。
プライバシーツールの役割を正しく理解する:VPN、パスワードマネージャー、トラッカーブロッカー、エンドツーエンド暗号化のメッセージサービスは、それぞれデジタルプライバシーの異なる側面を保護する。従来型のアンチウイルスはマルウェア対策として有効だが、単体ではフィッシングや詐欺、トラッキング、AIを悪用した攻撃などすべての脅威には対応できない。
アプリの権限を見直して、常に最新の状態に保つ:位置情報、連絡先、マイク、写真など、本当に必要な情報や機能へのアクセスのみを許可して、不要な権限は削除しておく。
公共Wi-Fiの利用には注意する:正しいネットワークへの接続を確認して、見知らぬネットワークでの機密性の高い操作は避けて、VPNで接続を暗号化する。
AIツールに情報を共有する前によく考える:許可されて適切に保護されていると確信できない限り、パスワードや財務情報、社外秘の文書、顧客データなどの機密情報をAIサービスに入力しないようにする。
今後は、AIによってサイバー犯罪やマルウェアはさらに巧妙化していくと思われる。改めてネット環境やパスワード管理やプライバシー保護の設定などを確認して、個人で取り組めるセキュリティ対策を進めておこう。
構成/KUMU




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