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3000円超でも長蛇の列!外国人が行列を作る京都のホットサンド専門店が人気の理由

2026.11.05

日本有数の観光都市として、国内外から多くの観光客が訪れる京都。中でも伏見稲荷大社は、朱色の鳥居が連なる「千本鳥居」で知られ、世界中の人々を魅了する人気スポットだ。

大社へと続く参道には、土産物店や飲食店が軒を連ね、名物のいなり寿司やうずらの焼き鳥を求める人々で賑わう。参拝客の期待感と活気が交錯するこの界隈は、京都らしい風情と観光地ならではの熱気が同居する場所でもある。

そんな伏見稲荷の参道で、ひときわ目を引く一軒の飲食店がある。店の前の鉄板でジュージューと音を立てて肉を焼き、それをパンに挟んで提供する。『’OHANABATAKE 伏見稲荷店』(京都府京都市伏見区深草一ノ坪町27-22)は人気のホットサンド専門店だ。

しかし、この店は他の店と少し様子が異なる。店の外には多くの人が並び、その大半は外国人観光客。しかも頭にはスカーフを巻いている人が多い。この店はインバウンド客の中でも、特にイスラム圏のムスリムの人たちに人気の店なのだ。

今、日本を訪れるイスラム教徒(ムスリム)の観光客は、東南アジア諸国からの訪日増加や中東(GCC)富裕層の拡大により急増している。日本政府観光局(JNTO)の2025年のデータによれば、インドネシアからの訪日客は64万600人(前年比23.8%増)、マレーシアからは63万6600人(同25.6%増)に達し、両国とも年間過去最高を更新している。

‘OHANABATAKEがイスラムの人たちに人気の理由の一つは、そのメニューにある。ここではハラル認証を受けた黒毛和牛を使ったホットサンドなど、「ムスリムフレンドリー」な商品を提供しているのだ。

イスラム教徒の人には食の禁忌があり、豚肉や豚由来のもの、アルコール、イスラム法(シャリーア)に則って処理されていない食肉など、食べられないものが少なくない。日本を旅行するムスリムの人たちが直面する「食」の難しさは、主に見えない豚肉やアルコール成分と外食・表示環境の不足にある。

飲食店側も理解していない店が多い中で、’OHANABATAKEは「ムスリムの人でも安心して食べられるものを出したい」と、店のメニューをいち早くムスリムフレンドリーなメニューに切り替え、さらに店舗の3階には礼拝室も設置した。それがSNSなどで話題となり、行列を作るまでの人気となったのだ。

しかし、ただムスリムフレンドリーだからと言って行列ができるわけではない。この店の魅力はその豪快でボリューム感のあるホットサンドなどメニューそのものにある。他の店ではみることがないオリジナリティのあるホットサンドは、どう生まれたのだろうか。

‘OHANABATAKE創業者の長谷川宜弘さんは、京都生まれ京都育ちで大の「B級グルメ」好き。自分が美味しいと思うホットサンドを作りたい、今までにないホットサンドを作りたいと独学でホットサンドの開発をスタート。何度も試行錯誤を重ね、濃厚な味わいでインパクトのあるオリジナルホットサンドを作り上げた。

2017年に1台のキッチンカーで創業すると、全国各地で大行列を作る人気のキッチンカーとなり台数も増え、2021年には東大阪に初の店舗を構えた。2023年に京都祇園へ出店、その後も石垣島や千葉にも出店を広げ、全国のリゾートのフードプロデュースも手がけている。その自由な発想で「行列仕掛人」の異名も持つ、飲食業界でも異端の存在だ。

ムスリム客をはじめ、インバウンドに人気が高い一品が「特製黒毛和牛トリュフビーフ」のホットサンドだ。手に持つとズシリと感じる重厚感で、パンからは肉が溢れ出ているほどのボリューム。このホットサンドに使われている黒毛和牛は驚きの135g。ホットサンドを食べているというよりも、牛にガッツリとかぶりついているような感覚になる。

店先にある大きな鉄板を使い、客の目の前で注文を受けるごとに黒毛和牛を豪快に焼き上げる。牛肉を焼いている間にパンも鉄板で焼いて、肉もパンも熱々の状態で提供する。観光地の調理オペレーションとしては非効率で手間のかかる作業だが、効率よりも美味しさを求めたこだわりの結果だ。

そして香ばしく焼き上げられた黒毛和牛をパンの上にドサっと山盛りに載せる。これだけのボリュームの肉をパンで挟めるのか不安になるが、長谷川さんの「美味しいものはたっぷりと食べて欲しい」という思いがこのホットサンドを生んだ。パンの枠に収めるのではなく、パンからはみ出すのが’OHANABATAKEの当たり前なのだ。

そこに長谷川さんしかレシピを知らないというオリジナルの「オハナソース」と、たっぷりの黒トリュフを振りかけて完成となるが、お店おすすめの最強トッピングがとろとろととろけるチーズ。こちらもありえないほどのチーズがたっぷりとサンドの上からかけられる。黒毛和牛とトリュフ、そしてチーズの三つが一体になって美味しさが数倍にも膨れ上がっていく。

「うちのホットサンドの味の決め手は、当店オリジナルの『オハナソース』です。一般的なステーキソースでは味に一体感が出ないと感じ、肉にも野菜にも合う味わいのオリジナルのソースを一から作りました」(『OHANA GLOBAL COMPANY』代表 長谷川宜弘さん)

そして、ホットサンドと並ぶ人気メニューとなっているのが、これもオリジナルのユニークな「おにぎり棒」だ。きりたんぽのように串に刺さった細長いご飯を鉄板で香ばしく焼き上げ、その上に和牛や鰻を盛り付ける。日本ならではの食材を一本の串で楽しめると、インバウンドの評判も上々だ。

作り置きよりは出来立て、既製品よりは手作り、少ないよりは多く。長谷川さんが手掛けるフードには一切その妥協がない。ある意味で飲食業界の常識から外れたものが多いが、実は長谷川さんは飲食経験が一切ない。飲食業界の常識は知らないからこそ、自分が美味しいと思うものだけを愚直に作り続けてきただけなのだ。

「ボリュームに関してはやはり価格以上の価値をお出ししたいのと、自分が満足出来る量にしたいと思って決めています。そしてハラル認証の黒毛和牛を使ったり、和牛と鰻を合わせるのも、ムスリムの方をはじめ日本に来てくれた外国の方たちに喜んでもらいたいという一心で、僕はただただお客様に美味しい、楽しいと思っていただきたいだけなんです」(長谷川さん)

今日も伏見稲荷の参道にある’OHANABATAKEの前は、多くの外国人観光客が列を成している。日本人も外国人も誰もが楽しめる食の世界を、この小さな店が実現しているのだ。

文/山路力也

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フードジャーナリスト・ラーメン評論家・かき氷評論家/年間700軒外食生活/ラーメン累計15,000杯以上/飲食店プロデューサー・飲食店アドバイザー/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら、テレビ・雑誌・WEBなど様々な媒体にて情報発信中。

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