EXIT・兼近大樹さんが雑誌『Oggi』で連載中のエッセイが待望の書籍化。『あくまでも個人の見解です。~こじらせ男のひとり言』とのタイトルからもわかるように、〝普通〟ではない半生を生きてきたという兼近さんが、自身の考え方や社会の見方を赤裸々に綴った本書。「恥ずかしくて、自分では何回も読み返せない」と笑う本人に、あらためてこの本に込めた心根をうかがった。
かねちかだいき/1991年生まれ。北海道出身。2017年、りんたろー。とお笑いコンビ・EXITを結成。『メシドラ~兼近&真之介のグルメドライブ~』にレギュラーで出演中。
著書に小説『むき出し』(文藝春秋)など。
今となっては修正したい発言も、あえてそのまま残しました
──まずは、3年分の連載エッセイがこうして一冊の本になった今の気持ちをお聞かせください。
兼近:いちばんの感想は、素直に恥ずい(笑)。3年ってやっぱり長いですし、考え方だって誰でも変わると思うんです。別にそれが、良いとか悪いとかではなく。それでも僕は、〝いつまでも変わらない芯を持ち続けてるぜ!〟っていうツラをして生きているので(笑)、こうやって本になって明らかに変化しているのがわかると、やっぱり恥ずいです。
──では、今回のように、書籍化することに葛藤や迷いもあったんでしょうか?
兼近:いえ、それはなかったです。照れはありましたけど、〝3年間でどんどん変化してる俺もカッケーじゃん!〟って思えたし、そんな自分も大好きですから。ね、こじらせてるでしょ(笑)。
──(笑)。本書のまえがきにもありましたが、この連載はインタビュー形式で行われていたそうですね。
兼近:そうです。僕が話したことをライターさんが毎回、まとめてくださっていました。
──自分が口にした考えを第三者が客観的に文章にしてくれると、それを読み直したとき、自分の〝現在地〟がよりクリアに見えるのかなという気がします。
兼近:まさにその通りです。ですから、この連載のやり方って最高だなと思っていて。最初は自分で書くことも考えたのですが、それだとどうしても背伸びしちゃうんですね。無意識にカッコつけた文章にしてしまうから、どこか嘘っぽくなる。でも、こうして客観的な視点を持ったライターさんに書いていただくと、そのときの温度感やテンション感、言葉遣いをそのまま残してくださるので、自分でもいろんな発見があるんです。〝あ、俺ってこんな人間なんだな〟って知れたり。それがすごく楽しかったので、連載時も事実関係を確認したこと以外は完全にノータッチでした。
──書籍化にあたって連載時の内容を修正される方も多いと聞きますが、それもなさらず?
兼近:していないです。本当は直したいんです。ちょっとしたボケとか、今読むと時代差もあって、恥ずかしくて全部カットしたくなりますし(笑)。でも、それをするとダサいじゃないですか。どれだけ情けない内容でも、その過去をなかったことにすると、自分のことを嫌いになりそうで。ですから、書籍に関しても何も変えていないです。
──本書の中でも「過去のこじれた感情がつながって、今のオレをつくっている」と書かれていましたが、どんな過去でも決してネガティブに捉えないところが兼近さんの魅力だなと感じました。
兼近:ありがとうございます。だって、よく「過去の汚点」という言い方をする人がいますが、たとえ汚点であっても、今の自分を作り上げた〝点〟の一つであることに変わりはないですからね。だったら、それを頑張って忘れようとしたり、なかったことにしたりするよりも、今を変えることで、自分にとって必要だった点にするほうが生き方としてはラクだと思うんです。何より、過去の自分の行動を失敗だと思い込む行為って、自信をなくすことにつながっていくような気がしますし。それもあって、どれだけ恥ずかしいことを本の中で語っていたとしても、そのまま残すようにしました。
どんだけ失敗しても、それをプラスに変えていけばいいんですよ
──この連載期間の3年を振り返り、ご自身がいちばん変化したと感じるところはどこでしょう?
兼近:わかりやすく変わったのは生活環境ですね。約13年間、いろんな芸人仲間と男3人で暮らしてきましたけど、今、初めて一人暮らしを経験していますから。一人になった寂しさからか、まったく結婚願望がなかったのに、少し結婚を考え始めたのも自分にとっては革命的な変化です(笑)。
── 一人暮らしするようになって、特に何が変わりましたか?
兼近:当たり前ですが、一人の時間が増えました。今まではわざわざ一人になれる時間を作るようにしていたんです。でも、その必要がなくなったのが大きいですね。で、そのときに思ったのが、独身の芸人仲間がよく言ってた、「一人の時間を大切にしたい」っていうのは一体何だったんだってことで(笑)。大切にするもなにも、ずっと一人じゃん!って。たまに『自分探しの一人旅をする』とか言ってる知人もいましたが、それって、カッコつけて自分に酔ってるだけでしょってツッコミたくなりました。……まあ、これも僕がこじらせた性格だからこその、嫌なものの見方ではあるんですけど(笑)。
──(笑)。ただ、そういった、こじらせた内容が多く語られているなか、漫才に対してだけは、一貫して揺るぎない情熱を注いでいます。本書を読み、そこに強い感銘を受けました。
兼近:漫才だけは本当に、人生をかけてやりたいことなんです。でも、実をいうと、僕は昔からお笑いに興味があったわけではないんです。もともとは小説が書きたくて、芸人になったんです。そのスタート時点ですでに思いっきり間違っているんですけどね(笑)。その後、芸人と小説になんのつながりもないという事実を知り、〝じゃあ、俺はなんのためにここにいるんだろう?〟と愕然としていたところ、同期からお笑いの楽しさをあらためて教えてもらい、どんどんとのめり込んでいったんです。
──その頃、兼近さんに大きな影響を与えた芸人さんはどなただったのでしょう?
兼近:NON STYLEさんが大好きで、ネタの作り方とかをすごく勉強してましたね。ただ、当時の相方からは、誰が目標かを聞かれたら、別の芸人さんの名前を出すように言われていたんです。NON STYLEさんがダメということでは決してなく、〝この名前を出しておけば、通ぶれる〟みたいなのってあるじゃないですか。今で言えば、ランジャタイの名前を言っておけば、お笑い好きの仲間内から一目置かれるみたいな(笑)。
──王道から少し外れたニッチなものを挙げてマウントを取るみたいな感じですね。
兼近:そう(笑)。でも、何を評価するかなんて、人それぞれなんですよね。むしろ、周囲に流されて自分の評価軸がブレてる人間のほうが信用できない。そのことに、あとから気がついたんです。
もちろん、他人が評価している物事に共感したり、賛同するのはいいんです。けど、SNSとかを見ていると、それをあたかも自分の意見のようにはき違えてる人が増えてきてる気がして。表面をなぞっただけの中身を伴わない意見ですから、説得力もない。その意味でも、自分だけの評価軸を持つのは大事だなと今では強く思います。
──兼近さんがそうした考えにいたるようになった背景には、報道番組の『ABEMA Prime』などに出演し、いろんな方と対峙して鍛えられたからというのもあるのでしょうか。
兼近:それもありますね。『ABEMA Prime』には確実に炎上するような爆弾発言をされる方がたくさんいらっしゃいますから(笑)。ただ、炎上と言っても、それこそ自分の評価軸を持たない人たちが、放送内容の一面だけを見て騒いでる気がするんです。もちろん、叩かれることを覚悟の上で発言されるゲストの方もいます。でも、それに対して脊髄反射で叩くのではなく、〝この人はなぜこんなことを言うんだろう?〟と、その人の背景なんかを調べたうえで、〝それでもやっぱり自分はおかしいと思う〟と感じれば議論すべきなんですよね。
──他人の意見に乗っかったり、自分の評価軸を持たなかったりするのは、間違った主張をしてしまうことで失敗するのを怖がっているというのもあるような気がします。
兼近:確かに。けど、そのときは、最初の話しに戻りますけど、僕みたいに失敗をなかったことにするんじゃなく、今後のプラスに変えていけばいいと思うんです。だって、今回の書籍にしても、僕にとっては恥ずかしい内容ばかりなわけですし、言ってみれば、この本を出すのは人生の大きなミスみたいなもんですよ(笑)。でも、本として残すからこそ、〝そうか、昔はこんな考えだったのか〟と自分を振り返れる。その意味では、人生のミスって、自分を大きく変えられる武器でもあるんですよね。
雑誌『Oggi』にて連載中のエッセイを書籍化。こじらせた視点で自身や社会を見つめながらも、真理をつく鋭い言葉の数々が読む者をハッとさせる。巻末にはラランド・サーヤ、山田裕貴、武尊との特別対談も収録。
取材・文/倉田モトキ 撮影/江藤大作 編集/寺田剛治




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