モバイルバッテリー製品、特にリチウムイオン電池に関しては「危険性」が指摘されるようになった。近年、リチウムイオンモバイルバッテリーの発火事故が相次ぐようになったからだ。
いや、より正確に表現すれば「モバイルバッテリー発火事故が大手メディアで取り沙汰されるようになった」ということだろう。特に衝撃的だったのは、航空機の中で発火事故が発生したことだ。陸上を走る乗り物とは違い、航空機は逃げ場がない。機内火災は何百人もの人命を奪いかねない大事態である。
日本政府はそうした問題を受けて、モバイルバッテリー製品の回収問題に本腰を入れるようになった。が、そこに立ちはだかるのが「地域差」である。

モバイルバッテリーは「永久に使える製品」ではない
我々は普段、モバイルバッテリーを頻繁に利用している。
スマートフォンを使うにしても、その途中で電池切れになってしまったということは珍しくない。もしも出先でそうした事態に遭遇した場合、どうやって再充電するのか? 最も手っ取り早いのは、予めモバイルバッテリーを携帯することである。
しかし、モバイルバッテリーとは永久に使えるものではない。特にリチウムイオン電池は、衝撃に対してあまり強くなく、普段の取り扱いに注意しなければならない。
リチウムイオン蓄電池は、軽量かつ繰り返し充電して使用できるため、現代社会に欠かせない存在になっていますが、その一方で、リチウムイオン蓄電池に起因する発熱・発火事故が増加しています。
事故の原因としては、製造時の異物混入や電極体の巻きズレなど、製品そのものに異常がある場合と、落としたり、高温下に放置したことで製品に異常が発生する、誤使用・不注意による事故の場合があります。
(リチウムイオン蓄電池搭載製品の事故に気をつけましょう! 経済産業省)
ここで注意すべきは、モバイルバッテリーの発火事故そのものはだいぶ以前から問題として指摘されていたという点。事故発生件数が増えているのは、誰しもがモバイルバッテリーを携帯するようになったから、つまり製品が数年前よりも大量に流通するようになったからだ。
我々一般消費者が、モバイルバッテリーの発火事故に対して最近まで関心を持たなかったという側面も見受けられる。航空機内で恐るべき火災が発生してから、ようやく我々は現実に直面するようになったのだ。
が、一瞬でも問題を認識するとそこに課題が浮上する。
使い古しのモバイルバッテリーは、どこに捨てればいいのだろうか? この問題に対して、国は今年に入ってからようやく本格的かつ複合的な手段を実施するようになった。
メーカーによるモバイルバッテリー回収が義務化
今年4月、改正資源有効利用促進法が施行された。
これは大まかに書けば、モバイルバッテリーとスマートフォン、そして加熱式タバコの3品目をメーカーによる義務的自主回収の対象に追加した改正法だ。
自治体や販売店等に回収窓口を設けて、メーカーが手配した輸送手段でそれを引き取っていく仕組みになっている。
家電量販店にこうした回収窓口を設置することは、決して難易度の高い行いではないだろう。問題は自治体である。地方の行政窓口が民間企業とこの分野でどこまで協調できるのか、そのあたりは各自治体で温度差があるだろう。
その上で、環境省は「不要モバイルバッテリーは自治体による回収が望ましい」という声明を既に出している。
これが中国やロシアといった国であれば、中央政権からのトップダウン方式で各地方政府に命令が下る。現に、航空機内でのモバイルバッテリー発火事故が発生した際の中国のアクションはそうした原理に基づくもので、有無を言わさずに機内へのモバイルバッテリー持ち込みに関する規則が導入された。が、当然ながら日本ではそのようなことは絶対にできない。できることは「お願い」もしくは「要請」である。
これではいつまで経っても問題が解決しないのではないか——と思いきや、日本の省庁は実に面白い手法を開発している。全国自治体が参加できるコンテスト形式の取り組みを始めたのだ。
環境省による「実証事業の公募」
環境省の『リチウムイオン電池等に関する特設サイト』の中に、「公募情報 令和8年度リチウムイオン電池等の回収・処理体制の構築等に向けた実証事業の二次公募について」と銘打たれたページが公開されている。
近年、リチウムイオン電池を使用した製品が増加し、リチウムイオン電池及びリチウムイオン電池を使用した製品(以下「リチウムイオン電池等」という。)が廃棄物として処理される過程で、火災事故等が発生し、収集運搬車両や廃棄物処理施設等への被害に加えて、廃棄物の処理が滞ることに伴うその地域の生活環境保全上に支障が出ることが懸念されています。
この状況を踏まえ、リチウムイオン電池等の適正処理体制の構築に向け、令和8年度リチウムイオン電池等の回収・処理体制の構築等に向けた実証事業のうち、①「リチウムイオン電池等の製造・販売事業者等と連携した回収体制構築実証事業」の二次公募を実施しました。
(公募情報 令和8年度リチウムイオン電池等の回収・処理体制の構築等に向けた実証事業の二次公募について 環境省)
この実証事業に採択された場合、「1件あたり原則として800万円(税抜)を上限」とした予算が計上される。スタートアップのピッチコンテストのようなものと言っていいだろう。
こうした方向性で問題解決に我が国の政府は踏み切ったわけだが、言わば「ボトムアップ型」の方法論公募により、世界に類を見ない独創的な仕組みが創出されていくと考えることはできないだろうか。
以上の背景から、「不要モバイルバッテリーの回収事業」はメーカーや自治体にとっての負担になる可能性よりも、むしろ新たな商業的機会を生み出すものになっていくのではないかと推測される。
参考
リチウムイオン蓄電池搭載製品の事故に気をつけましょう! 経済産業省
Vol.681 リチウムイオン電池は、正しく捨てる そして 資源循環! 消費者庁
資源の有効な利用の促進に関する法律の一部を改正する法律について 環境省
市町村におけるリチウム蓄電池等の適正処理に関する方針と対策の通知について 環境省
公募情報 令和8年度リチウムイオン電池等の回収・処理体制の構築等に向けた実証事業の二次公募について 環境省
文/澤田真一
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