『8番出口』の社会現象級ヒット以降、ゲーム業界で存在感を高め続けるインディーゲーム。今年は独特すぎる世界観と口コミによって話題を呼んだ『めっちゃカメレオン』が、累計2000万本超という大ヒットを記録した。
今や個人や少人数のチームが手がけた作品が、大手メーカーの人気タイトルと肩を並べて注目を集める時代。インディーゲームはゲーム市場の新たな主役へと躍り出ようとしている。
そこで今回は、インディーゲーム実況で高い人気を誇り、先日開催された「東京ゲームショウ2026」で5年連続となるインディーゲーム公式アンバサダーを務めた映像クリエイター・ゲーム実況者のポッキーさんを直撃。数え切れないほどの作品に触れてきた彼の目に、現在のインディーゲームブームはどう映っているのか。さらに、次なるヒット作に共通する条件とは何か。ゲーム実況の最前線から、その背景を探る。

ポッキーさんプロフィール
YouTube チャンネル「ポッキー」の登録者数が 370 万人を超え、動画の総アクセス回数が 40 億回を突破した人気クリエイター。主にゲーム実況者として活躍し、インディーゲーム好きとして知られる。TGS インディーゲーム公式アンバサダーには 5 年連続で就任。SOWN 応募作品の中から、動画クリエイターの視点で優れた作品を選出し、「ポッキー賞」を授与。授賞タイトルの実況プレイ動画は多くの方に視聴され、独創的なインディーゲームの面白さを広く伝えている。
「大手では通らない企画」がインディーゲームの武器
――東京ゲームショウでは5年連続でインディーゲーム公式アンバサダーを務め、普段からインディーゲームを数多く配信されているポッキーさんですが、ここ数年、インディーゲーム界隈で起きているトレンドの変化はありますか?
ここ1~2年で一番感じるのは、昔のインディーゲームは1人プレイが中心だったのに対して、近年は複数人で遊ぶゲームがすごく増えたことですね。今年流行した『めっちゃカメレオン』もそうですが、個人で遊ぶのではなく、大人数で遊べるゲームがかなり増えました。オンライン対応作品が増えたことに加え、開発環境やサービスの進化によってマルチプレイ機能を実装しやすくなった影響も大きいと思います。
――個人で遊ぶゲームのほうが手軽で広がりやすそうな印象もありますが、なぜ今はマルチプレイが支持されているのだと思いますか。
SNSの影響は大きい気がしますね。インディーゲームって、切り抜き動画やSNSでバズって人気になることが多いんです。それなら、NPC(※人間のプレイヤーが操作しないキャラクター)よりプレイヤー同士で遊んだほうが面白い行動が起きやすいじゃないですか。予想外のハプニングだったり、「何それ!」みたいな瞬間だったり。そういう場面のほうが拡散されやすいので、それも関係しているんじゃないかな。
――ここ数年でインディーゲーム市場自体もかなり盛り上がっています。なぜここまで注目されるようになったのでしょう。
やっぱりインディーゲームって、尖った作品が多いんですよ。大手のゲーム会社だと企画の段階で「いや、それは違うでしょ」って止まってしまいそうなアイデアでも、インディーゲームなら自由に形にできる。マニアックだったり、尖りすぎていたりする作品も積極的に作れるし、そこが一番の強みだと思います。
「昼は会社員、夜はゲーム開発」という開発者も
――インディーゲームの開発者の方々と話す中で、何か感じることはありますか?
僕はゲーム実況を歓迎してくれているクリエイターさんと話す機会が多いんですけど、「こういうテーマを伝えたい」とか、「こういう作品を作りたい」という何かしらの〝想い〟を持っている人がすごく多いですね。ちゃんとテーマがあって、「僕たちはこういうことを表現したいんです」と説明できる開発者の方が多い印象です。
――とはいえ、収益性だけを考えると、大変な世界にも見えます。開発者のみなさんは、どんなモチベーションで続けているのでしょうか。
彼らは、「自分の作りたいもの」を世の中に出したいという気持ちがすごく強いのだと感じます。それに、インディーゲームの良さって専業じゃなくても続けられることなんですよ。日中は会社で働きながら、夜にゲームを作るとか。ゲーム会社で働きつつ個人制作もしているとか。そういう方の話も多く聞きますね。
年間300本遊ぶ中でも「尖っていた作品」とは?
――ポッキーさんは年間300本ほどインディーゲームをプレイされているそうですが、その中でも特に尖っていると感じた作品はありますか。
東京ゲームショウのインディーゲーム審査企画で「ポッキー賞」として選出した『Become』はかなり尖っていますね(笑)。内容はちょっとここでは言えないくらい衝撃的なんですけど、ビジュアルもかなり独特で。「これ、インディーゲームじゃなかったら絶対作られてないだろうな」と思う作品です。
最近だとAIを活用したゲームにも注目ですね。『妹に車の運転を教える』というゲームがあるのですが、これは助手席から実際に口頭で運転を教えていく内容なんです。相手がAIなので、会話を続けているうちにどんどん話がめちゃくちゃな方向へ転がっていって(笑)。難しいゲームじゃなくて、ただ会話して意思疎通するだけなので誰でも遊べますし、めちゃくちゃ笑えます。
大手メーカーだと、AIとの会話そのものをゲームの軸にした作品をいきなり出すのはなかなか難しいと思うんです。でも、インディーゲームはそういう新しい技術をすぐに取り入れられる。その身軽さはすごく強いですし、大きな魅力ですね。
――確かに、どれも「インディーゲームだから実現できた」という部分が面白さのカギになっていそうなゲームです。ちなみに、知る人ぞ知るおすすめのゲームはありますか?
おそらくあまり知られていないものでいうと、ミミズをただ写真に撮りまくる『セルフィー・ワーム』かな。いろんな場面でミミズが落ちてきて、それを写真に撮るだけというシンプルなゲームです(笑)。
――では、今後ヒットしそうなインディーゲームのジャンルを教えてください。
注目しているのは、シミュレーター系ですね。例えばゴミだらけの島をきれいにするゲームとか、リフォームとか、お片づけとか。「普通そんな状況になる?」みたいな作業を延々やらされるゲームが最近増えていて(笑)。実際にはなかなか体験できない仕事や状況を遊べるのも、インディーゲームならではの面白さだと思います。
――どんどん人気が拡大していくインディーゲームですが、そもそもなぜここまで大きなムーブメントになったのだと分析されますか?
やっぱり世の中的には『8番出口』の影響が大きかったと思いますね。普段ゲームをあまりやらない人からすると、ゲームって「5000円払って100時間遊ぶもの」という、お金も時間もかけてやるイメージがあったと思うんです。それが、『8番出口』って1時間くらいで終わるじゃないですか。「あ、こういうゲームもあるんだ」って、多くの人に知ってもらうきっかけになった作品だと思います。僕は実況者なので、『8番出口』の実況動画を見た人から、「同じ体験をしたいから買いました」と言ってもらうこともありました。インディーゲームって、見ているだけじゃなく、自分でもやりたくなるんですよ。それに、手に入れやすい価格だから「今から同じ体験をしてみよう」という決断がすぐできる。それもインディーゲームならではの特長ですよね。
――FPSの超絶プレイみたいに練習を重ねないと体験できない面白さとはまた違って、誰もがライトに楽しめる面白さも魅力ですよね。
本当にそうですね。ダウンロードさえすれば、動画で見たことをそのまま自分でも体験できる。それがインディーゲームの良さだと思います。
取材・文/井田愛莉寿




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