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我々にどんな影響がある?米中間選挙が株価と円を動かす理由

2026.10.30

大統領選じゃないのに、なぜ市場は米中間選挙を気にするのか

2026年11月3日に行われる米国の中間選挙は、大統領を選ぶ選挙ではありません。それでも世界の投資家が注目するのは、議会の多数派が入れ替わると、大統領が進めたい政策が通りにくくなるからです。本記事では、下院と上院でそれぞれ何が選ばれるのかという基本から整理します。そのうえで、関税、減税、政府支出といった政策が、議会の構成によってどう変わり得るのかを解説します。さらに、米国株や為替を通じて、日本の株価やNISAで持つ投資信託にどのような経路で影響が及ぶのかを示します。

そもそも中間選挙とはどんな選挙か

米国の大統領の任期は4年です。中間選挙は、その任期のちょうど真ん中にあたる2年目の11月に行われる選挙で、だから「中間」と呼ばれます。2026年は、トランプ大統領が2期目に就任してから2年目にあたります。有権者が大統領のそれまでの2年間に点数をつける場でもあり、「政権の中間評価」とも言われます。

この選挙で選ばれるのは大統領ではなく、法律や予算を決める連邦議会の議員です。米国の議会は下院と上院の二つからなります。日本でいえば衆議院と参議院のような関係で、法律は原則として両方を通らないと成立しません。

下院は定数435で、任期は2年です。そのため中間選挙のたびに全議席が入れ替わります。上院は定数100で、任期は6年です。2年ごとに約3分の1ずつ改選され、今回争われるのは35議席です。通常の33議席に、バンス氏の副大統領就任とルビオ氏の国務長官就任で空いた2議席の補欠選挙が加わりました。

なぜ議会の多数派がそれほど大事なのか

米国の大統領には強い権限があるイメージがありますが、法律をつくり、予算を決めるのは議会です。大統領が新しい減税をしたくても、議会で可決されなければ実現しません。

大統領と同じ政党が両院で多数を握っていれば、大統領の政策は通りやすくなります。反対に、どちらか一方でも野党が多数になると、法案が止まりやすくなります。日本の「ねじれ国会」に近い状態です。市場が中間選挙を気にするのは、この勢力図によって、今後2年間に実現できる政策の範囲が変わるからです。

今の勢力図と、選挙の見通し

現在は、トランプ大統領の共和党が下院と上院の両方で多数派です。ただ、その差は大きくありません。上院は共和党53、民主党47です。下院も、共和党は過半数の218議席をわずかに上回る程度です。

中間選挙では、大統領の政党が議席を減らすのが通例です。過去23回の中間選挙のうち、20回で大統領の政党が下院の議席を失ったとされます。

2026年10月23日時点で、米国の予測市場の一つでは、民主党が下院で多数派を取る確率が92%、上院で取る確率が68%と見込まれています。ある選挙予測サイトは同じ日の数字を下院79%、上院57%としており、予測によって差があります。下院は民主党が優勢、上院はまだ読み切れない、というのが大まかな構図です。

関税:主導権は大統領、ただし議会も無関係ではない

投資家がまず気にするのは関税です。関税は、大統領が議会を通さずに決められる部分が大きい政策です。

ただ、その権限にも限界があります。2026年2月、米連邦最高裁は、緊急時の経済権限を定めた法律を根拠にした関税は認められないと判断しました。政権は別の法律で一律10%の関税をかけ直しましたが、この法律では150日しか続けられず、延長には議会の承認が必要でした。議会は延長せず、この関税は7月24日に期限切れとなりました。

政権は同じ日に、さらに別の法律を使って、日本を含む60の国・地域に10%または12.5%の関税を発動しています。日本は原則12.5%で、自動車は別の枠組みで15%です。日本政府は、昨年の日米合意を超える関税は課されないことを米側と確認したと説明しています。

民主党が議会の多数派になれば、大統領の関税権限を制限する法律をつくることは可能になります。ただ、大統領は法案を拒否でき、それを覆すには両院で3分の2の賛成が必要です。そのため、議会の勢力が変わっても関税がすぐに下がるとは限らない、というのが運用会社に多い見方です。

減税と予算:選挙の直後に山場がくる

税金については、2025年7月に成立した大型の減税法で、トランプ氏が1期目に導入した所得税の減税がすでに恒久化されています。議会の勢力が変わっても、この減税がすぐになくなるわけではありません。変わるのは、追加の減税ができるかどうかです。

より差し迫っているのは予算です。米国の新しい会計年度は10月に始まりましたが、本予算はまだ決まっておらず、12月11日までの「つなぎ予算」でしのいでいます。議会は選挙が終わってから、予算の協議を再開します。

予算が期限までに決まらないと、政府機関の一部が止まる「政府閉鎖」が起きます。米国では2025年秋に43日間に及ぶ過去最長の政府閉鎖があり、2026年に入っても一部の省庁で閉鎖が続きました。議会が割れると予算をめぐる対立が起きやすくなります。閉鎖中は物価や雇用の統計の発表も止まるため、市場は景気の判断がしにくくなります。

見落とされがちな「FRB人事」

上院には、もう一つ重要な権限があります。米国の中央銀行にあたるFRB(米連邦準備制度理事会)の議長や理事の人事を承認する権限です。2026年5月には、トランプ大統領が指名したウォーシュ氏の議長就任が、上院で54対45の賛成多数で承認されました。

上院の多数派が民主党に移れば、大統領が望む人物をFRBに送り込みにくくなります。FRBは9月、物価上昇が続くことを警戒して約3年ぶりに政策金利を引き上げ、3.75〜4.00%としました。誰が金利を決めるのかは、ドルと円の交換レートにも影響します。一般に、米国の金利が日本より高くなるほどドルが買われて円安に、差が縮まると円高に向かいやすいとされます。

米国の選挙が、日本の私たちの資産に届く3つの経路

1つ目は、米国株そのものです。NISAで人気の全世界株式(オール・カントリー)型の代表的なインデックスファンドの月次報告によると、2026年9月末時点で中身の62.8%が米国株で、通貨で見ても65.3%が米ドル建てでした。S&P500連動型なら、ほぼ全額が米国株です。米国株が下がれば、こうした投資信託の値段もほぼそのまま下がります。

2つ目は、円相場です。海外の資産は円に換算して評価されるので、株価が変わらなくても、円高になれば投資信託の値段は下がります。前述のファンドの9月の値動きを要因別に見ると、株価によるマイナスより、為替によるマイナスのほうが大きくなっていました。

3つ目は、日本株への波及です。米国株の動きは、翌日の東京市場に伝わりやすい傾向があります。10月22日に米国のハイテク株がAI投資への警戒から大きく下げると、翌23日の日経平均株価は一時1400円を超えて下落しました。関税の行方は、自動車など米国への輸出が多い日本企業の業績にも直結します。

結果のパターン別に見た、円と株への影響

円や株への影響は、選挙結果の組み合わせによって変わり得ます。

共和党が両院を守った場合は、追加の減税などが進みやすくなります。米国の財政赤字が増えるとの見方から米国の金利が上がり、ドル高・円安に振れやすくなるとの見方があります。

下院だけを民主党が取った場合は、議会が「ねじれ」て新しい法律が通りにくくなります。政策は今の延長線上にとどまり、市場への影響は、予算の期限前後に政府閉鎖への警戒が強まる程度の一時的なものにとどまるとの見方が多いようです。

民主党が両院を取った場合については、米国では株安を警戒する声があると報じられています。株価が大きく下がる局面では、比較的安全とされる円が買われやすくなります。直近でも、AI関連株の下落を受けて10月22日に円が買われ、ドル円は一時156円台後半と、9月30日以来の円高水準をつけました。

過去の中間選挙のあと、米国株はどう動いたか

米国の運用会社などの集計では、1950年以降、S&P500は中間選挙後の12カ月間で一度も下がっておらず、平均の上昇率は約15%とされます。選挙が終わって先行きの不透明感が晴れることが、上昇の理由として挙げられます。

一方で、中間選挙の年は株価の値動きが荒くなりやすく、その年の高値から安値までの下落率は平均17.5%だったとする分析もあります。もっとも、2026年はAI投資の過熱への警戒や中東情勢、FRBの利上げなど、選挙以外の材料も重なっています。過去の傾向が今回もそのまま続くとは限りません。

押さえておきたい日程

11月3日の投票は、日本時間では4日の朝から開票が進みます。接戦が多いと結果の確定には時間がかかり、2022年の中間選挙では、下院の多数派が決まるまで投票日から1週間余りかかりました。その前の週には、10月27〜28日に米国のFOMC(金融政策を決める会合)、29〜30日に日銀の金融政策決定会合があります。選挙後は、12月11日のつなぎ予算の期限が次の焦点になります。

選挙結果を見るときは、どちらの党が勝ったかだけでなく、下院と上院の組み合わせがどうなったかが鍵になります。関税は大統領、予算は議会、FRBの人事は上院というように、決める場所が政策ごとに違うためです。

※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。記事中のデータは2026年10月24日(日本時間)時点のものです。

文/鈴木林太郎

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