「コスパがいい」「タイパがいい」――といったフレーズが、当たり前のように使われるようになった。できるだけ安く、できるだけ効率よく。そんな価値観が広がるなか、次に注目され始めているのが「メンパ」だ。
メンパとは「メンタルパフォーマンス」を略した言葉。
仕事や消費活動において、お金や時間だけでなく、精神的な負担やストレスをどれだけ減らせるかという視点でモノやサービス、日々の生活を考えるもの。
買い物やサービス利用において「メンタルを削られないこと」「心の負担やストレスを減らすこと」を最優先する消費トレンドである。
かみ砕けば、自分の行動によって〝どれだけ心が満たされたか〟を重視する考え方だといえる。
「安い」「早い」の次は「心がラクかどうか」
コスパは、支払った金額に対してどれだけの価値が得られるかを重視する考え方。タイパは、費やした時間に対してどれだけの成果や満足が得られるかを重視する考え方だ。
一方でメンパが重視するのは、心の負担軽減とそこから生まれる余裕だ。
もちろん、コスパやタイパを軽視するわけではない。大切なのは、安さや効率だけでは測れない価値にも目を向けることだ。「安いから買う」「早いから選ぶ」だけでなく、「これを選べばストレスが減る」「自分が心地よく過ごせる」という判断基準。それがメンパという考え方のポイントといえる。
例えば日々の食事は、食材を買って自炊すれば費用を抑えられるかもしれない。しかし、仕事で疲れ切った日には、献立を考え、買い物をし、調理や後片付けをすること自体が大きな負担になる。
そんなとき、多少費用がかかっても惣菜や宅配サービスを利用すれば、気持ちに余裕が生まれる。
メンパ注目されるもうひとつの背景がデジタル機器とSNSの普及
効率を求めてネットで買い物をしようとパソコンやスマホを開くと、そこには数千もの候補が表示される。選択肢が多いというのはいいことかもしれない。しかしレビューを読んで価格を比較し、膨大な選択肢から最適なモノを選ぶことを強いられるのだ。
外食しようと飲食店を選ぶ時も同じだ。
少しでもおいしいものを、よりお得にと比較を繰り返すうちに、選ぶこと自体がストレスになってしまう。
心理学の世界ではこれを「決定疲労(Decision Fatigue)」とし、選択を繰り返すことで意思決定の質が低下してストレスが蓄積されていく、と説明。
集中力や思考力が低下し、簡単なタスクでもミスを犯したり、時間がかかってしまったりといった結果に陥るきっかけになるのだという。
デジタル機器の使い方にも、その考え方はあらわれる。
日々情報過多の状態に置かれている人であれば、SNSの通知をオフにする、必要のない情報を追いかけない、仕事が終わったらスマホやパソコンから距離を置くようにしたい。あえて情報を遮断することも、心の余裕を確保する方法なのだ。
効率を追い求めすぎると、心が疲れる?
お金を節約したり、時間を効率化したりするあまり、かえって疲れてしまうこともある。メンパを意識するうえで大切なのは、すべてを最適化しようとしないこと。
ある程度の価格差なら納得できる範囲で決める、口コミを調べる時間に上限を設ける、何もしない時間をつくる。こうした工夫によって、余計なストレスを減らせる場合もある。
あえて効率を捨てることが、心の余裕につながる
メンパを意識するうえで、もうひとつ注目したいのが「心の負担を増やさないための行動」をするという視点だ。
すべての誘いに応じる必要はないし、すべての情報を知っておく必要もない。気が進まない予定を断る、SNSを見る時間を減らす、休日には仕事の連絡を確認しないなどと決めることだ。
目的もなく散歩する、好きな音楽をゆっくり聴く、遠回りして気になる店に立ち寄るなど、すぐに成果が得られなくても、気分転換になったり、新しい発見につながったりすることがある。
決定疲労をしないために、あえて選択肢を減らす。これこそがメンタルパフォーマンス消費なのだ。
次に求められるのは「心地よさ」かもしれない
繰り返しになってしまうが、コスパはお金、タイパは時間の使い方。そしてメンパは心の負担や余裕、使い方に目を向ける考え方だ。「安い」「早い」という価値に加えて、「ラク」「疲れない」「気持ちよく過ごせる」という価値をどう評価するか。
そこには、効率だけでは測れない生活の満足度が関係していると筆者は考えている。
これからのモノ選びやサービス選びでは、価格や効率だけでなく、「自分の心にとって、本当に心地よい選択なのか」という視点も大切になっていくのかもしれない。
文/松尾直俊
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