ウルトラマンシリーズは昭和・平成・令和で様々な作品が生まれ、その中で、各時代の子供に寄り添った〝マイ ウルトラマン〟が誕生していった。60年の時を超えて支持されつづけるヒーロー像の源流にあるものを特撮研究家に聞いた。
※本稿はDIME (ダイム) 2026年 12月号に掲載の「僕らに宿るウルトラマンの遺伝子」より一部を抜粋・再編したものです
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ゴジラからウルトラマンへキャラクター文化の革新

アニメ・特撮研究家/ZEN大学教授
認定NPO法人アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)副理事長。大学時代にアニメ雑誌『月刊OUT』でデビューした。近年の著書に『空想映像文化論 怪獣ブームから「宇宙戦艦ヤマト」へ』など。
ウルトラマンシリーズを制作する円谷プロダクションの創業者で、ゴジラシリーズの特技監督として知られる〝特撮の神様〟の円谷英二さんが、VFX(視覚効果)の分野で最も権威ある組織VES(Visual Effects Society)で、日本人初の殿堂入りを果たした。
ウルトラマン誕生には、彼の2つの功績が関係していると特撮研究家の氷川竜介さんは言う。
「空想映像に科学力を加えることが日本の空想キャラクターの大きな特徴で、恐竜が水爆実験の影響で変貌したゴジラは、その原点なんです。特撮技術を使って、ゴジラが居ると信じさせるように仕立てたことが、円谷さんの一番大きな功績ですね
また、円谷さんはアニメ『鉄腕アトム』の放送が始まり、テレビまんがブームが起きた63年に、円谷プロダクションの前身である、円谷特技プロダクションを設立。『アトム』が生み出した新潮流に上手くジョイントさせたのが第二の功績だと思います」
円谷特技プロダクションは特撮テレビ番組の企画を考案し、紆余曲折を経て66年放送の『ウルトラQ』に結実。怪獣による事件や怪現象を描いた本作は、子供たちから熱烈な支持を集めた。
『ウルトラQ』の後継企画として『ウルトラマン』が誕生するのだが、その前にデザイン・造形的なターニングポイントがあった。
「『ウルトラQ』は、放送局であるTBSの作戦で、全話制作してから放送していたので、放送順と実際に制作した順番が違うんです。
制作順では14話目にあたる第5話の『ペギラが来た!』からデザイナーとして彫刻家の成田亨さん、怪獣づくりの名人であり画家の高山良策さんが参加した。この2人が手がけたペギラが誰も見たことがないけど、実際に居るような気がする怪獣になったんです。
テレビ時代の〝怪獣像〟を生み出したことが、『ウルトラQ』最大の功績であり、『ウルトラマン』につながる歴史の転換点でした」

現在でも変わらずに伝えつづけるメッセージ

最高視聴率42・8%を記録する大ヒットとなった『ウルトラマン』は、ウルトラマンを倒したゼットンに人類が勝利し、迎えに来た仲間のゾフィーと共に地球を去るというラストで締めくくられた。そこでのやり取りには、後のシリーズにも影響を与えた問いかけがあったそうだ。
「一番すごいのは、最終回でウルトラマンが自分の命をハヤタにあげてもいいと言ったことなんですよ。
寿命が短くて圧倒的な弱者である地球人のために、自分の命を捨てても構わないと。それに対してゾフィーが『ウルトラマン、そんなに地球人が好きになったのか』と驚いて問うのです。
ソフィスケートされた存在であるウルトラマンがなぜ、原始的な地球人を好きになったのかが、永遠のテーマとして残っているんですね。私は、人間は与えられた知性や感性を適切に使う資格があるのかというテーゼを作り手は織り込んでいたのではないかと考えています。
様々な時代、様々な作り手、様々なウルトラマンによって、そういう扉を開くためのネタが60年間蓄積されて、今では〝神話の列伝〟のようになっているんです」
60年の歴史の中で、初期作品に次ぐエポックメイキングとなったのが、96年に放送開始した平成ウルトラマンシリーズ第1作の『ウルトラマンティガ』だ。
「ウルトラマンシリーズには、超越的な存在と普通の人間の対立軸みたいなものがあって、『ティガ』はそれを一番意識しているんです。
『今ウルトラマンを作る意味は?』『そもそもウルトラマンって何?』というテーマを扱い、その結果ウルトラマン=宇宙人という設定をやめて〝光〟という言葉を使い、人間の限界を超える力の象徴として、光になるとはどういうことなのか、光を得る資格とは何か……という話を描いたんです。
ノストラダムスの大予言のカウントダウンが迫る中で生まれた『ティガ』には、人間は意外と捨てたものじゃなくて、光にもなれる存在なんだよという、願いの結晶みたいなものが感じられます。そういった願いが60年間ウルトラマンを引っ張ってきたのだと思います」
ウルトラマンが60年の時を経ても、子供たちを魅了しつづけている理由はどこにあるのだろうか。
「ウルトラマンは子供たちが初めて出会う、巨大な他者なんです。自分と他者の区別がついていない、つまり身近な親や家族の延長線上に世界があると思っている時期に、圧倒的に異なる存在があり得るんだということを、ビジュアル的に楽しめる形で見せていく。
そういった親が生活の中では気づけないことを物語化して、新しく生まれた子供のために伝える役割は、今も機能している気がします」
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取材・文/佐久間翔大 撮影/江藤大作(氷川竜介) 編集/寺田剛治
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