昇進するほどに部下の数は増え、社歴を重ねるほどに若手社員との年齢差は開いていく。そのため、「部下とのコミュニケーション」に悩みを抱えている管理職は多いのではないだろうか?
シーベースはこのほど、360度フィードバックを導入している企業の従業員を対象に、管理職の意識・行動やマネジメントの実態について調査を行い「管理職・次世代リーダー育成実態調査2026」として結果を発表した。
管理職の40.9%が「部下とのコミュニケーション」に悩み マネジメント経験5年未満では50%
部下を持つ管理職751名に、日頃の部下とのコミュニケーションについて尋ねたところ、40.9%が「部下とのコミュニケーションに困る・悩むことがある」と回答した。
さらに、マネジメント経験別では、経験5年未満の管理職で50.0%と、2人に1人が悩みを感じていた。経験5年以上では約4割となっており、経験の浅い管理職ほど部下とのコミュニケーションに難しさを感じる傾向が見られた。
年代別に見ると、40代では48.0%となり、50代の37.5%、60代以上の34.2%を上回った。40代以上では、年代が上がるにつれて悩みを感じる割合が低くなる傾向が見られている。
管理職になると、自分自身が成果を上げるだけでなく、部下の状況や考えを把握し、成長を支援しながらチームとして成果を生み出すことが求められる。特に管理職経験の浅い時期には、プレイヤーとして培ってきた仕事の進め方だけではなく、相手に合わせた関わり方を新たに身につけていく必要があることが、コミュニケーションの難しさの背景の一つとして考えられる。
約半数の管理職が、期待のすり合わせやフィードバックを実践 対話の機会に加え、「何を聞き、どう伝え、次につなげるか」も重要に
管理職が日頃行っている部下との対話やフィードバックについて尋ねたところ、「期待する役割・成果・行動をすり合わせる」(56.7%)が最も多くなった。
このほか「部下の意見や違和感を聞き、自分自身の対応も見直す」(55.4%)、「日々の行動・プロセスに具体的なフィードバックをする」(52.2%)、「フィードバックや対話後、次の行動を一緒に確認・サポートする」(50.9%)、「相互理解のための対話時間を定期的に設ける」(50.3%)と、いずれも約半数となっている。
年代別に見ると、単純に年代が上がるほど実施率が高くなる、あるいは低くなるという一方向の傾向は見られなかったが、40代と50代を比較すると、「相互理解のための定期的な対話」は40代55.4%、50代45.7%で9.7ポイント差、「期待する役割・成果・行動のすり合わせ」は60.6%と52.1%で8.5ポイント差、「対話後の次の行動の確認・サポート」は56.0%と48.8%で7.2ポイント差で、40代の実践行動の割合が多い結果となっている。
前の設問で「40代は50代以上と比べて、部下とのコミュニケーションに悩む割合が高い」結果となったことを踏まえると、部下とのコミュニケーションへの悩みは、単に「対話の機会や取り組みが少ないこと」だけでは説明できない。次世代リーダー層への多様な育成の機会、そして対話の量に加えて質の向上に有用な手法を掘り下げていく必要があると考えられる。
管理職育成や今後の組織を担う次世代リーダーの育成においては、部下と話す場を設けたり、フィードバックの手法を身につけたりすることに加え、「自分の言動が相手にどう受け取られているか」「自身の関わり方にどのような特徴があるか」を振り返りながら、対話の質を高めていく視点も重要になっていると言えそうだ。
360度フィードバック実施後のポジティブな変化 最多は「自身の強み・改善点を客観的に再認識」(28.2%)
360度フィードバック実施後、対象者(管理職)にどのようなポジティブな変化が見られたかを尋ねたところ、最も多かったのは、「自分の強み・改善点を客観的に再認識し、受け入れるようになった」(28.2%)となった。
次いで、「従来のやり方にこだわらず、柔軟になった」(23.7%)、「結果を踏まえたアクションプランを自主的に策定し、行動を改善している」(22.6%)、「仕事に対するモチベーションが上がった」(16.6%)、「対話を重視するようになった」(16.2%)、「能力、スキルが向上した」(13.3%)となった。「日常的にフィードバックを行うようになった」は9.9%だった。
年代別に見ると、30~40代の回答者では「自身の強み・改善点の再認識」が3割を超え、50代以上より高い傾向が見られた。また30代では、「アクションプランを自主的に策定し、行動を改善している」が36.5%と高くなっている。
今回の結果で特徴的なのは、能力やスキルそのものの向上以上に、「自身の強みや改善点を客観的に捉え直す」という変化が多く挙げられたことだ。管理職は、部下に対して評価やフィードバックを行う立場になる一方、自身の仕事ぶりやマネジメントについて、複数の立場から率直なフィードバックを受ける機会は多くない。周囲から寄せられた評価と自身の認識を照らし合わせることが、自分自身を振り返る一つの機会になっていると考えられる。
なお、実施後に定期的な面談・コーチングがある層では、「自身の強み・改善点を客観的に再認識した」とする割合は53.3%となり、全体の28.2%を25.1ptと大きく上回った。実施後のフォローのあり方によって、360度フィードバック後に認識される変化にも差がみられる。
職場の変化、最多は「メンバー一人ひとりへの気づき」が26.5% 「一方的な指示から、対話・コーチング重視へ」も23.4%
続いて、360度フィードバック導入後の職場のマネジメントスタイルや組織風土について尋ねた。最も多かったのは、「メンバー一人ひとりの気づきの機会を提供する効果があった」が26.5%。次いで、「上司から部下への一方的な指示ではなく、対話やコーチングが重視されるようになった」(23.4%)、「部門やチーム最適な思考から全体最適な思考に変わった・影響があった」(23.0%)となった。
このほか、「ハラスメント事案を抑制する効果」(16.9%)、「顧客の声を重視する思考に変わった」(12.6%)、「自律して仕事に向き合うようになった」(12.6%)、「相互に声をかけ合い、助け合うようになった」(11.7%)と続く。
前の設問では、対象者本人に見られた変化として「自身の強み・改善点の再認識」や「従来のやり方を見直し柔軟になる」といった項目が上位に挙がった。一方、職場では、「メンバー一人ひとりが気づきを得る機会」に加えて「対話・コーチング重視」など、周囲との関わり方に関する変化が上位となっていることがわかった。
分析コメント
今回の調査では、管理職の約4割が部下とのコミュニケーションに悩んでいる一方、別の設問では、半数を超える管理職が期待する役割のすり合わせや、部下の意見を聞いて自身の対応を見直すといった行動を実践していることがわかりました。
管理職育成では、1on1などの対話の機会を設けることや、フィードバックの方法を学ぶことが重要です。一方で、対話の機会を増やすだけで、すべてのコミュニケーション課題が解消されるとは限りません。
同じ言葉や働きかけであっても、本人が意図した通りに相手に受け取られているとは限らないからです。管理職には、「自分は伝えたつもり」だけではなく、自分の言動や関わり方が周囲からどう見えているのかを捉える視点が求められます。
今回、360度フィードバック実施後に見られたポジティブな変化として最も多かったのは、「自身の強み・改善点を客観的に再認識すること」でした。360度フィードバックは、上司・同僚・部下など複数の立場からフィードバックを受けることで、自分だけでは捉えにくい行動の特徴や周囲からの見え方を知る一つの方法です。
管理職育成においては、「何をするか」というスキルや行動に加え、「自分の関わり方をどう捉えるか」という自己認識を深める機会を設けることが、対話の質を考えるうえで重要になると言えそうです(解説/シーベース代表取締役社長 深井幹雄氏)。
<調査概要>
・調査手法:インターネットリサーチ
・都道府県:全国
・実施期間:2026年8月
◆スクリーニング調査対象者
・全国、男女20歳以上
・企業の社員・経営者(人事調査のみ請負社員も対象)
◆調査対象者・サンプル数
751名
出典元:株式会社シーベース
構成/こじへい




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