現在の世界情勢は、格差社会による政治の不安定や戦争の影響などネガティブなニュースが多く、危機感が増している状況だ。公益財団法人旭硝子財団は、1992年から世界の環境有識者を対象に、地球環境の悪化に伴って回答者が人類存続に対して抱く危機感を時計の針で表示する「環境危機時計」を設定して調査している。時間は、0時~3時を「ほとんど不安はない」、3時~6時を「少し不安」、6時~9時を「かなり不安」、9時~12時を「極めて不安」と設定している。2026年の調査では、2021年から2024年まで4年連続で針が戻っていたが、2025年に前年から6分進み、2026年もさらに6分進んで9時39分という結果になった。
多くの地域で「環境機器時計」の針が進む状況に
世界各地域の「環境危機時計」の時刻
1992年からの「環境危機時計」の時刻の推移
1992年以降の世界と日本の「環境危機時計」の時刻の推移
針の進み具合を地域別でみると、アジア、メキシコ・中米・カリブ諸国、南米、アフリカ、中東、東欧・旧ソ連と多くの地域で針が進んだが、特にメキシコ・中米・カリブ諸国では20分、アフリカは52分、東欧・旧ソ連では27分と大きく針が進んだ。一方でオセアニア、北米、西欧は、17分から25分と大きく針が戻った。ちなみに日本は、2025年から針が9分戻って9時30分になった。調査開始以降の世界全体の「環境危機時計」の時刻の推移は、1996年以降では2000年を除いて常に9時台の「極めて不安」の領域にある。
年代層で「環境危機時計」の時刻が違う
世代別の「環境危機時計」の時刻の推移
地球環境の変化を示す項目の分布図
年代別では、年代が上がるほど進んだ時刻(危機感が高い)を示す傾向はあったが、経年変化では20代から50代は2024年以降に「環境危機時計」の針が進んでおり、危機感が高まっていた。ちなみに調査では、「地球環境の変化を示す9項目」から回答者が住む国または地域でもっとも重要と思われる環境問題を1位から3位で選ぶ形になっている。9項目は次の通りだ。
1. 気候変動、2. 生物圏保全性(生物多様性)、3. 陸域系の変化(土地利用)、4. 生物化学フロー(環境汚染)、5. 水資源、6. 人口、7. 食糧、8. ライフスタイル(消費性向)、9. 社会、経済と環境、政策、施策
「環境危機時計」の時刻で念頭においた項目の選択率は、世界全体は「気候変動」が33%で最多、次いで16%の「生物圏保全性(生物多様性)」が9年連続で同じ順番だった。世界全体の「地球環境の変化を示す項目」を「環境危機時計」の時刻順に並べると「生物圏保全性(生物多様性)」(9時52分)、「気候変動」(9時45分)、「社会、経済と環境、政策、施策」(9時42分)が世界平均の9時39分より進んでいた。
脱炭素社会への転換は低下傾向
「脱炭素社会への転換の進み具合」:3つの観点からの平均値の推移
「野生生物の生息地の保全・再生」の進み具合に関する世界平均と地域、属性別平均
「気候変動」と「生物多様性の喪失」の問題では、「一般の人々の意識」、「政策・法制度」、「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の3つの観点から地球温暖化抑制のための「脱炭素社会への転換」と「野生生物の生息地の保全・再生」の自国内での進捗の認識について集計している。その回答は、「全く進んでいない」を「-2」、「どちらかといえば進んでいない」を「-1」、「どちらかといえば進んでいる」を「+1」、「確実に進んでいる」を「+2」と数値化して平均値を出している。脱炭素社会への転換については、いずれの観点でも2026年は低下して、「政策・法制度」や「社会基盤(資金・人材・技術・設備)」の面は「一般の人々の意識」の面ほど進んでいないという認識に変化はなかった。野生生物の生息地の保全・再生は、進んでいると考える人が少なく、脱炭素社会への転換と比較しても遅れていると認識されており、どの観点でも2025年よりもポイントが低下していた。世代では、20代と30代の回答者は、ほかの世代よりも野生生物の生息地の保全・再生が進んでいると考えていた。
20230年までにSDGs目標の達成は難しい
持続可能な開発目標(SDGs)に関する認識
2026年時点での感覚的なSDGsの達成度(%)の回答分布
17の持続可能な開発目標(SDGs)の中で、自国または地域で2030年に達成度が高い・低いと思う目標をそれぞれ3つ選ぶと、もっとも達成度が高いと思う目標には「達成度が高いと思うものはない」(25%)、「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」(24%)、「4. 質の高い教育をみんなに」(23%)が挙がった。達成度が低いと思う目標では、「1. 貧困をなくそう」(35%)、「10. 人や国の不平等をなくそう」(31%)、「13. 気候変動に具体的な対策を」(31%)の3つを選んだ回答者が多かった。自国・地域または世界を念頭において、17あるSDGsが、全体として2026年時点でどの程度達成できていると思うか、全目標達成を100% として5~100の5%刻みの数値で集計すると、SDGsの達成度を0%と回答した割合は、世界、自国・地域のいずれも10%以上だった。75%以上と回答した割合は非常に少なく、20代から40代は50代以上の回答者と比較して自国または地域、世界のいずれもSDGsの達成度を高く認識していた。ここにも年代による達成度の感じ方に違いが見えた。
地球環境問題解決に必要なのはリーダーシップ
地球環境問題の解決に重要な要素(地域別)
地球環境問題を解決するために、とくに重要だと考える要素として選んだ項目の割合を地域別にまとめると、どの地域でも「政府の環境政策・リーダーシップ」と回答した人の割合がもっとも多かった。「国際協力・グローバルガバナンス」も多くの地域で40%から50%の回答者がいたが、「技術革新」は多くの地域で回答が少なかったという。特徴ある地域の回答では、オセアニア、北米、中東は「再生可能エネルギー・インフラ転換」、メキシコ・中米・カリブ諸国、西欧、東欧・旧ソ連は「経済制度改革・市場メカニズム」という結果になった。アフリカは、「教育・啓発」と回答した割合が56%と高く、中東(48%)やメキシコ・中米・カリブ諸国(46%)でも高い割合だった。
現在の「環境危機時計」の針を戻すためには、指導者や中央政府のリーダーシップが重要だが、果たして来年は何時何分を指しているのだろうか?
第35回「地球環境問題と人類の存続に関するアンケート」概要
調査対象:世界各国の政府・自治体、非政府組織(NGO/NPO)、大学・研究機関、企業、マス・メディアなどで環境問題に携わる有識者(旭硝子財団保有データベースに基づく)
調査時期:2026年4月から6月
送付数:約4万5000(海外約4万2500、国内約2500)
回収数:1464
回収率:約3.3%
https://www.af-info.or.jp/questionnaire/result.html
構成/KUMU




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