2024年の3月に日本銀行のマイナス金利政策が解除され、17年ぶりに利上げが行なわれた。その後も2024年7月、2025年1月、2026年6月に利上げを実施。2026年9月には政策金利を1.0%から1.25%に引き上げる利上げを決定した。これは約31年ぶりの高水準となる。
このような日本銀行の利上げを受けて、銀行各社は預金金利の見直しを進める。メガバンク3行は2026年11月2日から、円普通預金金利を年0.4%から0.5%に引き上げることを発表した。その一方で、ドコモSMTBネット銀行は10月1日から利上げを実施すると共に、今後は政策金利の変更後、原則、翌月初に主な預金・貸出商品の金利を見直す方針を打ち出した。
他行よりも1か月早く金利が上がると、預金者は上がった利息を早めに受け取ることができる。しかし金利改定を早めることは銀行経営上、預金利息の支払いコスト増というデメリットがある。なぜ同行は金利の見直しに迅速に対応することにしたのか。その戦略について、常務執行役員 コーポレート本部長の佐高一光氏に話を聞いた。
金利上昇のメリットをできるだけ早く顧客へ
17年ぶりの日本銀行のマイナス金利政策解除に伴っては、銀行内部でもかなりの戸惑いがあったという。「キャンペーンなどで預金金利を見直すことはあっても、政策金利の変更は、ほとんどの行員が経験したことがなかったことです。政策金利の見直し後、どのくらいのタイミングで預金金利や貸出金利を上げればいいのか、そもそもどういうオペレーション・プロセスだったのかなど、手探り状態でスタートしました」(佐高氏)。
おのずと他行の状況をうかがうことになり、メガバンクの対応に伴って、政策金利変更から2か月後の月初に金利を改定することが、多くの銀行の慣行となった。しかしこの期間の設定に明確な根拠はない。
折しも今年から、日本銀行の利上げのピッチが速くなった。これまで多くて年2回だったところ、2026年は6月と9月に引き上がり、年内のさらなる利上げを見込む市場の見方もある。
「利上げのインターバルが狭まって、金利改定を2か月後にしていると、次の政策金利変更が来てしまい、いったいいつの金利変更に対応した利上げかがわからなくなってしまいます。それになぜ金利変更に2か月も必要になるのかと問われると、明確な答えが見つかりませんでした。社内でも何度も協議を行ない、ここはお客様への透明性と誠実な対応を重視するべきだと、政策金利の変更後、速やかに改定する方針に転換しました」(佐高氏)。
翌月初の見直しを原則化、金利運営の透明性を高める
2026年9月18日の金融政策決定会合において、日本銀行が追加の利上げを決定。これに対してドコモSMTBネット銀行は即座に対応し、同日の9月18日に、2026年10月1日より円預金金利を年0.40%から年0.50%に、SBIハイブリッド預金金利を年0.41%から年0.51%に改定することをリリース。そして政策金利変更後、原則として翌月初に主な預金・貸出商品の金利を見直す方針を発表した。
しかし金利改定を早めることは銀行経営上、預金利息の支払いコスト増というデメリットがある。ドコモSMTBネット銀行の総預金残高は11兆円を超えており、そのうち流動性預金(普通預金・ハイブリッド預金など)の割合は約75%の約8兆円。金利が0.1%引き上がると、1か月で約6~7億円の預金利息が発生する。つまり早めに利上げをすると、銀行にとって短期的には預金金利の支払い負担が増えることを意味する。
「利息が0.1%引き上がっても、お客さまの口座の預金残高が目に見えて増えるわけではありません。正直、あまり気づかれないのではないかと思います。そういう意味では、今回の対応によって普通預金残高や新規口座開設が大幅に増加するとは考えていません。とはいえ、『早めに金利を上げてくれて有り難い』といったお客さまの声が届いています。我々としては透明性を重視し、分かりやすい金利運営を行なうことで、お客さまからの信頼につなげ、中長期的には当社を選んでいただく理由の一つになればと考えています。もちろん、利下げの時も含めて、同様に対応していきます。この方針をしっかり宣言して、お客さまにご理解いただけるように案内していく考えです」(佐高氏)。
金利だけではない、ドコモ経済圏で選ばれる銀行へ
ドコモSMTBネット銀行(旧:住信SBIネット銀行)は、2025年10月1日にNTTドコモの連結子会社となり、2026年8月3日、ドコモSMTBネット銀行に社名変更。個人向けブランドを「ドコモの銀行」へと刷新した。
「dカード」や「dポイント」を始め、マネックス証券など、ドコモグループの金融サービスとの連携により、顧客接点が拡大している。8月21日からは、ドコモショップでの案内や口座開設などのサポートがスタート。当初196店舗の対応店舗は、今後5年間で1500店舗以上に拡大していく計画だ。また、8月28日から、マネックス証券との自動入金(スイープ)サービスも開始した。
「メガバンクの拠点は全国400~500くらい。それに対してドコモショップは全国で約2000店舗程度あります。リアルの接点があることで、ドコモショップ経由での新規のお客さまが毎日、口座開設をしてくださっています。また、dカードやマネックス証券など、グループ内の金融サービスとの連携を含め、新たなお客さまとの接点が着実に広がっていることから、ドコモグループのシナジーを感じています」(佐高氏)。
デジタルメガバンクとして、顧客により利便性の高いサービスを提供しているドコモSMTBネット銀行。今後はデジタルバンクとしての利便性と、対面での丁寧な説明を両立させるデジタルメガバンクを目指す。
文/綿谷禎子




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