鍵や財布、バッグなど、大切なものの紛失対策に役立つ「紛失防止タグ」。スマートフォンで位置を確認できる便利なアイテムだ。
わが家でもAppleの「AirTag」を愛用しているが、ある日、思いがけない場面でその実力を思い知ることになった。
買ったばかりの自転車が、初乗りの日に盗まれた!
自転車を買ったばかりの家族に、思いがけない災難が降りかかった。
購入した自転車に初めて乗って出かけたその日、なんと自転車が盗まれてしまったのだ。
買ったばかりの自転車を、そう簡単に諦めるわけにはいかない。家族は近くの交番へ向かい、事情を説明することにした。
「自転車の鍵は?」と聞かれ、挿したままだったことにも、そこで気がついたらしい。
ただ、家族には強い武器があった。盗難に備えて、自転車本体と鍵に、それぞれAppleの「AirTag」を付けていたのだ。
わが家ではちょうど「AirTag」ブームといってもいい頃で、財布をはじめ、さまざまな「なくしては困るもの」に取り付けていた。買ったばかりの自転車に付けるのも当然のことだった。
交番で警察官とアプリ上の地図をのぞき込む。すると、2つのAirTagは隣の駅に向かって、ゆっくり移動していた。
「自転車はここにあります!」と、主張する家族。
ところが、交番では「ここはほかの警察署の管轄なので、こちらでは……」と、すぐには対応できない様子だった。
そこで、家族はわたしに電話を入れた。わたしは管轄の警察署に電話をかける。
その間にも、アプリの地図上ではAirTagの位置が変わっていた。しかも、今度はすごい勢いで都心へ向かっている。自転車が勝手に移動している!?
こうなると、追いかけようがない。万事休すだ。
まるでサスペンス!2つのAirTagが示した謎の動き
確かに鍵につけたAirTagは都心に向かって動いていたが、もうひとつ、自転車本体につけたAirTagはある地点から動かなくなった。
サスペンスドラマ並みの推理を働かせれば、鍵をもった人は電車に乗り、自転車本体はどこかに乗り捨てられたのか。自転車本体を追って、地図が指し示す地点に行くと、そこは駅の駐輪場だった。
ほっとしているところに、管轄の警察署から連絡を受けた警察官2人が、その自転車置き場に到着。「盗難届」を出すように勧められた。
見つかった場所はまた別の警察署の管轄で、駆けつけてくれた警察官では対応できないのだそう。
警察署の管轄区域は、人口や地理的条件などを考慮して決められているという。東京には多くの警察署があるだけに、今回のように移動を伴う事件では、管轄をまたぐこともあるのだ。
とりあえず、自転車は予備の鍵で解錠し、無事に自宅へ持ち帰ることができた。
一方、鍵に付けたAirTagは、その後も移動を続けていた。
都心の駅まで到達したかと思えば、今度は方向を変え、再び郊外へ向かっている。
もしかすると、鍵を持ち去った人物が電車内でAirTagに気づき、そのまま車内に置いていったのではないか。そう考えれば、電車の動きに合わせて移動しているように見えることにも説明がつく。
もちろん、これはあくまで推測。鍵が実際にどうなったのかは、今もわからない。
紛失防止タグは本来、大切なものを守る便利な道具
最近、紛失防止タグを悪用したストーカーまがいの犯罪のニュースを耳にすることがある。しかし、紛失防止タグは本来、大切なものをなくさないため、そして、なくしたものを見つけるための便利な道具だ。
例えば、外出先で大切なものをなくしたとき。スマートフォンで位置を確認すれば、どこに置き忘れたのか、手がかりを得られる。訪れた店や施設にあるとわかれば、そこへ連絡して取り戻せる可能性もある。
急いで出かけた日に、財布を持っていないことに気づいても、自宅にあるとわかればひと安心。最近はスマホ決済が普及しているので、財布がなくてもなんとかなることは多い。なくしたのではなく、家に忘れてきただけ。それがわかれば、その日一日、安心して過ごせる。
そして今回の自転車盗難事件のように、思いがけない場面で力を発揮することもある。AirTagがなければ、買ったばかりの自転車を見つけることは難しかっただろう。
本当にありがたい道具だ。
キーホルダー型からカード型まで!紛失防止タグの種類
ところで、紛失防止タグには、どのような種類があるのだろうか。
調べてみると、形状も使い方も実にさまざま。大まかには、キーホルダー型、カード型、貼り付け型などがあるようだ。
もっとも身近なのが、鍵やバッグなどに取り付けるキーホルダー型。Appleの「AirTag」のように、専用のケースやホルダーを使って取り付けるものもある。鍵やバッグはもちろん、スーツケースなど、さまざまな持ち物に使える。
財布やカードケースに入れるなら、薄いカード型が便利そうだ。クレジットカードに近い形状の製品もあり、財布のカードポケットなどに収められる。外側にぶら下げる必要がないのもいい。
さらに、粘着テープなどで持ち物に直接取り付ける貼り付け型もあるという。リモコンや電子機器など、ストラップを付けにくいものにも使えるようだ。
最近では、財布やスーツケースなど、製品そのものに位置確認機能を内蔵したものも登場している。別途タグを取り付ける必要がなく、見た目もすっきりしている。
こうしてみると、紛失防止タグは思っていた以上にバリエーションが豊富。なくしたくないものに合わせて、使い分けるのもよさそうだ。
便利な紛失防止タグ、犯罪に悪用されることも
ふつうに使えば、とても便利な紛失防止タグ。しかし、紛失防止タグを使った事件が発生しているのも事実。
こうした問題を受け、2025年12月30日には改正ストーカー規制法が施行され、紛失防止タグを使った位置情報の無承諾取得なども、一定の条件のもとで新たに規制の対象となった。
では、知らないうちに自分の持ち物にタグを取り付けられていた場合、気づく方法はあるのだろうか。
調べてみると、iPhoneやAndroidには、AirTagなど一部の紛失防止タグが、自分と一緒に移動していることを検知し、警告する機能があるという。警告が表示された場合には、音を鳴らすなどしてタグを探すこともできる。
実は以前、家族の自転車の鍵を持って移動していたとき、わたしのスマートフォンにも見慣れない通知が表示されたことがある。そのときは「何だろう?」と思ったものの、深く考えずに画面を消してしまった。
あれが紛失防止タグに関する警告だったのかはわからないが、こうした通知は安易に見過ごさないほうがよさそうだ。
ただし、ここで注意したいのは、すべての追跡機器をスマートフォンで発見できるわけではないということだ。
例えば、GPSと通信回線を利用して位置情報を送信するタイプの機器は、AirTagなどを対象としたスマートフォンの検知機能では発見できない場合がある。
つまり、スマートフォンに警告が出ていないからといって、追跡機器がないとは言い切れないのだ。
身に覚えのない追跡機器を見つけたり、不審な追跡が疑われたりした場合には、ひとりで判断せず、警察に相談したい。
今回、わが家ではAirTagのおかげで、買ったばかりの自転車を無事に取り戻すことができた。道具が便利なものになるか、危険なものになるかは、結局のところ使う人次第なのだろう。
もっとも、わが家の場合は、AirTagを使いこなす前に、自転車の鍵を抜き忘れないことから始めなければならないのだが。
取材・文/内山郁恵
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