2025年10月から、ふるさと納税のポータルサイトでのポイント付与が禁止されました。これまでポイント還元を理由にサイトを選んでいた人にとっては、大きな変化です。本記事では、ポイント廃止の前後で寄付の動きがどう変わったのかを、各サイトや自治体の公表データをもとに整理します。人気の返礼品に変化はあったのか、寄付額はどう動いたのか。さらに、年収別の控除上限額の目安や、ポイント以外で得をする選び方の考え方も紹介します。
ポイント終了前の「前倒し寄付」
2025年10月1日、寄付者にポイントなどを付与するポータルサイトを通じた寄付の募集が禁止されました。総務省が2024年6月に示した指定基準の見直しを受けた措置です。対象外とされたのは、クレジットカード会社などが決済時に付与するポイント。こちらは今も変わらず受け取れます。
禁止を前に大きく動いたのは、寄付のタイミングでした。さとふるでは、2025年7~8月の寄付額が前年同期の1.8倍以上。8月最終週に限れば3.1倍以上に達しています。同社が2025年8月に約7,000人を対象に行った調査を見ると、その年の寄付予定額を9月末までにすべて済ませると答えた人は36.6%で、前年の14.6%から2.5倍に増えました。理由のトップは「ポイント付与が禁止される前に寄付したいから」で、71.5%を占めます。
もっとも、誰もが駆け込んだわけではありません。ふるさと納税の情報サイトを運営するGroovが2025年7月に1,009人に聞いた調査では、9月までに駆け込みで寄付すると答えた人は27.4%。「12月まで急がず寄付する」の34.0%を下回っています。さとふるの調査でも、ポイント禁止を機にふるさと納税をやめると答えた人は2%以下でした。ポイントは寄付の時期こそ動かしたものの、人を制度から遠ざけるほどの力はなかったようです。
駆け込み期には、寄付の仕方にも変化が見られました。さとふるによれば、9月に大きく伸びたのが、寄付だけ先に済ませて返礼品をあとから選べる仕組みの利用です。返礼品を伴わない「寄付のみ」の掲載数も、2025年10月時点で2022年の3.2倍以上になっています。
寄付総額は過去最高を更新
総務省が2026年7月31日に公表した現況調査によると、2025年度(2025年4月~2026年3月)のふるさと納税の受入額は約1兆3,314億円。前年度から4.6%増え、過去最高を更新しました。受入件数も約5,963万件と、1.4%の増加です。2025年中の寄付で住民税の控除を受けた人は約1,151万人で、前年の約1,081万人から約70万人増えています。住民税の控除額も約9,524億円と、前年の約8,741億円を上回りました。
サイト離れも見られません。2025年度の受入額のうち、ポータルサイトを経由した寄付は97.2%。前年度の94.5%から、むしろ上昇しています。ポイントが消えても、寄付の窓口はやはりサイトだったわけです。
同じ調査では、寄付を集めるのにかかったお金も公表されています。2025年度の募集費用は合計約6,382億円で、受入額の47.9%。内訳を見ると、返礼品の調達が約3,528億円、事務費などが約1,809億円です。自治体が実際に使える財源は約6,932億円で、受入額の52.1%でした。ポータルサイトの運営事業者への支払総額は約2,433億円と、サイトを経由した受入額の18.8%に相当します。総務省がポイント付与の禁止に踏み切った背景には、自治体が仲介サイトに支払う経費がかさんでいることへの問題意識があったとされます。
自治体別の1位は大阪府泉佐野市で、約230億円。北海道白糠町、宮崎県都城市、北海道別海町がいずれも200億円台で続いています。
とはいえ、年度の数字には9月の駆け込みと10月以降の寄付の両方が含まれるため、ポイント廃止の影響だけを切り出すことはできません。前倒しされた寄付が、例年なら年末に集中する需要を先取りした可能性もあるでしょう。廃止の影響がはっきりするのは、駆け込みのない2026年の数字が出てからになりそうです。
人気の返礼品は「生活防衛」に寄った
返礼品の選び方には、物価高の影響がはっきり出ています。さとふるの2025年の年間ランキングで1位になったのは、岩手県宮古市の厚切り塩だれ牛タン。その一方で、ボックスティッシュが5位、トイレットペーパーが7位に入りました。同サイトの検索キーワードの年間1位は「米」です。同社は、日用品や訳あり品のように生活を支える返礼品と、牛タンやうなぎのような少し贅沢な返礼品に人気が分かれる「メリハリ消費」が見られたとしています。2025年1~10月の寄付件数では、カニが前年同期の約1.4倍、美容・健康家電は4.3倍以上に伸びました。
ポイント廃止後の傾向をつかむ手がかりになるのが、2026年1~5月を集計した上半期ランキングです。1位は静岡県富士市のトイレットペーパー、2位は栃木県小山市のボックスティッシュ。日用品が1位と2位を占めたのは、これが初めてでした。上位10品のうち4品が日用品で、米も2品がランクインしています。3位には宮城県気仙沼市の訳あり鮭の切り身、10位には山梨県富士吉田市の炭酸水が初めて入りました。日常的に消費するものが目立つ顔ぶれといえます。
利用者調査からも、似た傾向が読み取れます。オリコンの顧客満足度調査で2025年の利用者3,279人に聞いた結果、選んだ返礼品の最多は「魚介・海産物」の41.9%。「肉」が39.7%、「果物・フルーツ」が26.8%、「米」が25.6%と続きます。年代別に見ると、10~40代では米が3番目、50代以上では果物が3番目でした。2025年の年間寄付額は「3万~10万円未満」が53.3%と、半数を超えています。
ポイントという上乗せが消えたことで、返礼品そのものの実用性がより重く見られるようになった、とも読めます。トイレットペーパーや米のように必ず使うものなら、受け取った分だけ普段の買い物を減らせます。家計への効果が見えやすいのは、むしろこうした返礼品かもしれません。
年収別の控除上限額の目安
自己負担が2,000円で済むのは、控除上限額の範囲内で寄付した場合だけです。総務省が示す目安では、独身、または配偶者控除・配偶者特別控除を受けていない共働きの給与所得者の場合、年収300万円で2万8,000円、400万円で4万2,000円、500万円で6万1,000円、600万円で7万7,000円、700万円で10万8,000円、800万円で12万9,000円。配偶者控除や扶養控除を受けている人は、同じ年収でも上限が低くなります。
もっとも、これらはあくまで目安にすぎません。住宅ローン控除や医療費控除などを受けている人の上限は、この目安とは異なります。iDeCoの掛金などで所得控除が多い人も、上限が下がる場合があります。
ポイント以外で得をする選び方
まず、決済時のポイントはこれまでどおり受け取れます。規制されたのはサイトによるポイント付与で、クレジットカードなどの決済で貯まるポイントは対象外だからです。オリコンの調査でも、ポイント廃止後にサイトを使った人の44.0%が「決済時にポイントが貯められるか」を重視すると回答。最も多かったのは「返礼品の探しやすさ」の66.0%でした。
同じ返礼品でも、寄付額は動きます。さとふるによると、千葉県大網白里市はコシヒカリ10kgの寄付額を2026年3~4月に2万円から1万6,000円程度へ引き下げました。3月の寄付件数は前月の7倍以上です。市場の米の在庫が増え、価格が見直される局面では、返礼品の寄付額も変わり得ます。ポイント還元率を見比べていた手間を、寄付額と内容量の比較に回すという考え方もあるでしょう。
使い道を示して寄付を募るクラウドファンディング型も、存在感を増しています。総務省の調査によると、2025年度に実施した自治体は516団体。寄付額は約333億円で、前年度の約227億円から大きく増えました。
2026年のふるさと納税攻略法
今年は10月から、返礼品のルールがもう一段厳しくなっています。寄付を集めるための経費に使える上限は、寄付額の50%以内から47.5%以内へ。総務省は2029年からの指定で40%以内まで段階的に絞る方針で、地場産品の基準も厳格化されたとされます。寄付額の引き上げや内容量の見直し、受け付けの終了といった対応をとる自治体が出てくる可能性も指摘されています。毎年同じ返礼品を選んでいる人は、寄付の前に条件が変わっていないかを確かめる必要がありそうです。
寄付のペース配分は、今年の年収が前提です。控除上限額はその年の収入で決まります。年収が固まらないうちに上限いっぱいまで寄付すると、超えた分は自己負担になりかねません。上限の7~8割程度を先に寄付し、12月に年収の見込みが立った段階で残りを調整する、という方法も紹介されています。
年末は、決済のタイミングにも気を配りたいところです。控除の対象となる年は、一般に申し込んだ日ではなく入金が完了した日で決まるからです。クレジットカードなら申し込みと同時に決済が済むことが多いものの、銀行振込などは手続きに日数がかかり、年内の入金に間に合わない場合があります。
手続きの期限も見落とせません。確定申告が不要な給与所得者で寄付先が5団体以内なら、ワンストップ特例を使えば確定申告をせずに控除を受けられます。この場合は、所得税分も含めて翌年度の住民税からまとめて差し引かれる仕組みです。申請書は、寄付した翌年の1月10日必着。ただし、医療費控除などのために確定申告をするとワンストップ特例の申請は無効になり、ふるさと納税の分も確定申告に含めなければなりません。
高所得者にとって、今年は特例控除に定額の上限がかからない最後の年です。2026年度税制改正で住民税の特例控除額に193万円の上限が設けられ、2027年の寄付分から適用されます。とはいえ、給与収入1億円程度に相当する水準。影響を受けるのは、ごく一部の人だけです。
「お得」の物差しが変わった
ポイント廃止で、ふるさと納税の「お得」は、サイトが上乗せするポイントから返礼品そのものの価値へと戻りました。寄付総額は過去最高を更新し、ポータルサイト経由の割合も上がっています。制度の利用が細ったとは言えないでしょう。変わったのは、選び方の基準のほうです。控除上限の範囲内で、家計に効く返礼品をどう選ぶか。ポイントを探す手間が消えた分、比べる対象は寄付額と中身に移りつつあります。
※本記事は公表データに基づく情報提供を目的としたもので、個別の税務判断を勧めるものではありません。控除上限額は収入や家族構成、ほかの控除の有無によって異なるため、詳細はお住まいの自治体や税務署にご確認ください。
鈴木林太郎 経済ライター テックと経済の”交差点”を主戦場にやさしく解説。企業・自治体の取材とデータ検証を重ね、現場の課題を言語化する記事づくりが得意。難解な制度や技術を、比喩と事例で”今日使える知識”に翻訳します。




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