数多くのタイトルが世に出た2026年のゲーム業界。ゲーム原作の映画やアニメが相次ぎ、往年の名作のリメイクがメインタイトル級の扱いで登場するなど、目を引く動きが続いた。こうしたトレンドからは、ゲーム業界が新たな時代に突入しつつある姿が見えてくる。
欧米が苦戦するなか、日本メーカーが元気な1年に
いま、欧米のゲーム業界が苦境に立たされている。マイクロソフトはXbox部門で3200人を削減する大幅な組織再編を発表。『アサシン クリード』シリーズなどで知られるUbisoftでも、6作品の開発中止と2つのスタジオの閉鎖に踏み切った。
一方、日本の大手メーカーは躍進を遂げている。カプコンの2026年4~6月期の連結決算は、純利益が前年同期比69%増の291億円。スクウェア・エニックス・ホールディングスも、純利益が同175.7%増の132億4400万円と大きく伸ばした。
この明暗を分けたのは作り方の違いだと、ゲームメディアAUTOMATON編集長の川瀬鮎郎さんは指摘する。
「欧米のゲームメーカーは、映像の美麗さや表現のしかたといった芸術性をかなり重視しているように感じます。芸術性を追求するほど、作品の質とともにコストも上がっていく。その結果、ゲーマーが求めている以上のところにまで、お金をかけてしまっているんです」
これに対し、日本メーカーの強みは開発の足腰が安定していることだ。
「雇用が比較的安定しており、開発チームが腰を据えてものづくりに取り組める環境があります。また、業績が上がれば循環が生まれるので、新しいチャレンジもしやすくなるんです」
ただ、強さの理由はそれだけではない。カギを握るのが、ゲームタイトルやキャラクターをIPとして生かす戦略だ。その背景には遊び手側の変化があると川瀬さんは分析する。
「いまは発売されるゲームの数が多すぎて、遊ぶ側は新しいタイトルを追いきれない。だからこそ、すでに知っているシリーズや作品を選ぶ傾向が強まっている。今後、ますますIPの時代になっていくと思います」
その流れを象徴していたのが「相次ぐ映画化」と「リメイクの大作化」だ。
ゲームの映像化は〝もうひとつの新作〟
26年4月に公開された『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』は、全世界累計興行収入が1600億円以上、日本国内では79億円を突破する大ヒットに。10月にはハリウッド制作の実写映画『ストリートファイター/ザ・ムービー』も公開された。
27年には映画『ゼルダの伝説』や『ポケモン:ワイルドカード』が控え、さらには『キングダムハーツ』のアニメ制作も発表されるなど、ゲームの映像化に関するニュースが相次いだ。
これほどまでに各社が映像化に力を入れる背景には、ゲーム開発の長期化があると川瀬さんは語る。
「大作ゲームの開発には莫大な費用と時間がかかり、買い切り型だと新作は4年に1本ほど。その間はどうしても、ファンも売上も伸ばしにくいんです」
その空白を埋めるのが、映画やアニメといった映像作品だ。
「ファンの熱量を保つのはもちろん、映像をきっかけにゲームの売上も伸びる。違う形で新作を出している、という捉え方もできますよね」
デジタル販売が主流になった現在、過去作が売れるケースも少なくない。映像化を入り口に過去作の売上につなげる手法に、いち早く取り組んだのがカプコンだ。2002年には映画『バイオハザード』が公開され、その後もシリーズ化されている。『デビルメイクライ』も2007年にアニメ化された。

「こうした作品をきっかけに入り口にファンになった人たちが、過去作を買っていく。これがモデルケースになり、各社も追随しているのではないでしょうか」
新作までの繋ぎだけでなく、眠っていた過去作にも光を当てる。映像化はいまや、IPを長く育てるための欠かせない一手となっている。そして過去作を生かす動きは、ゲームそのものにも広がっている。
守りの選択が攻めの一手に。リメイクが広げる新たな市場
過去作を現代に蘇らせるリメイクは昔からよくある手法ではあったが、最近ではメインタイトル級の扱いで登場するケースが増えている。
例えば26年2月発売の『ドラゴンクエストVII Reimagined』は初週売上が45万本超とヒット。日本ファルコムが同年9月に発売した『空の軌跡 the 2nd』も初週売上4万6477本と好調で、Steamのユーザーレビューでも好評率95%以上とプレイヤーからの支持も厚い。
さらに26年11月に『ゼルダの伝説 時のオカリナ』のリメイク、27年4月には3部作の完結編『ファイナルファンタジーVII リベレーション』の発売が控えるなど、今後も大型リメイクは続く。

なぜいま、看板級のリメイクが相次いでいるのか。川瀬さんは、その背景にコロナ禍の〝反動〟があると話す。
「巣ごもり需要のバブルが弾けて業界全体が冷え込み、新規IPのような攻めの企画は通りにくくなりました。代わりに選ばれたのが、ある程度の売れ行きが見込めるリメイク。それがちょうどいま、形になって出てきているんです」
ただ守りに入ったわけではない。ハードも遊び方も大きく変わったいま、往年の名作をリメイクとして再び世に出すのは理にかなっていると川瀬さんは解説する。
「15年以上前のゲームだと、いまの人はなかなか遊ばない。でも、それがシリーズで一番人気の作品だったりする。リメイクしなければ、新しいユーザーがシリーズの面白さの原点に触れられないんです」
中国など海外市場の広がりも追い風となっている。
「昨今は中国向けにリリースしやすくなり、市場規模は大きく広がりました。以前、浜口直樹さん(リメイク版『ファイナルファンタジーⅦ』シリーズディレクター)に取材した際も、簡体字圏のファンは熱量が高く、リリースのたびに新しいファンがつくのを実感していると話していました」
一方で、リメイクできるタイトルには限りがあるのも事実だ。
「各社その点は当然認識しており、カプコンが26年4月に発売した『プラグマタ』のように、意欲的な新規タイトルへの挑戦も行なっているのです」
既存のIPを様々な形で磨きながら、次の大型IPの種も撒く。「IPの時代」へと突入した日本ゲームメーカーの次の一手に注目したい。
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取材・文/桑元康平(すいのこ)
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