アイドル、アニメや漫画のキャラクター、バンド、スポーツ選手、俳優、声優、芸人、はたまた鉄道や建築物など。自分が応援する〝推し〟をさまざまな形でサポートする〝推し活〟は、かつては一部の大人のたのしみであった。しかし近年、推し活グッズを『3COINS』や『無印良品』、100円ショップでも見かけるなど、市民権を得て久しい。
小学館の漫画雑誌『ちゃお』が主宰する、女子小中学生のリアルな生態を調査する『JS研究所』の調査によると、現代の小学生(ちゃおっ娘)の約7割が推し活をしているという。また、願い事の1位が「推しに会いたい」なのだとか。
そんな子どもにまで浸透した〝推し活〟を、さらに盛り上げる玩具を発見! 開発・販売を手がけるパズル・玩具メーカー、株式会社ビバリーの開発担当者に突撃した。
「おもちゃ大賞2026」バラエティ部門大賞に輝いた「パチェリエ推し活開発部」
出会いは、一般社団法人日本玩具協会が主宰する「おもちゃ大賞2026」である。これは名だたる玩具メーカーが新商品を出品するもので、授賞式会場には甲子園のような熱戦を勝ち抜いた玩具がずらり。
その展示で、ひときわ目立っていたのが株式会社ビバリーの「パチェリエ推し活開発部」である。
〝推し〟の写真やバッジ、ぬいぐるみ、アクスタ(アクリルスタンド)などを入れた、きらきらと輝くカラフルなバッグやポーチ。ずらりと並ぶ様は、まさに祭壇である。聞けば、「パチェリエ推し活開発部」は、こうしたバッグやポーチの手作りキットだという。
SNSで検索すると、オフィシャルが認めた「#痛パチェリエ」というハッシュタグには、ユーザーの力作が多数投稿されている。中には3万リポストされたものもあり、めちゃくちゃ盛り上がっているではないか!
トレンドを扱う筆者としては、正体を突き止めねば。そこで東京・銀座に本社を置く株式会社ビバリーにコンタクトをとった。
ジグソーパズルの知見を活かした「パチェリエ」
取材に応じてくださったのは、企画部の主任・原野鈴奈(はらのすずな)さんと早坂灯子(はやさかとうこ)さんのお二人だ。原野さんは、入社して1年目で「パチェリエ」を開発したという。
「弊社は日本製のジグソーパズルを手がけるメーカーで、2027年で50周年を迎えます。そんな中、パズルメーカーらしい女児向け玩具に挑戦したいと、2018年に『パチェリエ』を発売しました」(原野鈴奈さん)
「パチェリエ」は、針や糸を使わず、ピースを専用のジョイントでつなぐことで、立体的なバッグやポーチをつくることができる。対象年齢は6歳以上だが、未就学のお子さんでも、親御さんのサポートがあれば制作可能だ。
あくまでも、「パチェリエ」は子どもの玩具である。だが、開発するうえで最も大切にしたことは「ちゃんとしたものをつくる」ということだった。
「もともと弊社が大人向けのものづくりをしていたこともあり、子どもの玩具=安い、買って終わりといったイメージを払拭する、本当に使える実用性を考えました。
その中で注目したのが〝メイキングトイ〟というジャンルです。これはアクセサリーやキーホルダーなどを手づくりできるもので、当時からさまざまな種類がいろんなメーカーから発売されていました。
でも、意外にもバッグはなかった。そこで、パズルメーカーの知見を活かし、ピースをはめていく『パチェリエ』を開発したんです。バッグですから、ある程度の重みや動きにも耐えられるものでなければなりません。とくにジョイントの強度とはめやすさは、いまもアップデートを続けています」(原野さん)
バッグを皮切りに、ポーチやペットボトルホルダー、スマホショルダーなど。つくって楽しく、使って嬉しい「パチェリエ」シリーズは、小学生女児を中心に火がついた。2028年には10周年を迎える。
「『パチェリエ』は、開発4名、営業1名の、20~30代の若いメンバーでつくっています。
開発・販売で大事にしていることは、お客様の声です。毎月お客様から届くはがきを集計して、遊んでいる年齢層や好きな色はもちろん、気に入らなかった点にあるリクエストは次のシリーズに生かしています。
やはりお子様向けですので、手先の器用さや力加減の難しさもあり、『作りにくい』というお声をいただくことも多いです。あとはデザインも、『もっときらきらしたものが欲しい』というお声が多いですね。お客様の求めるものをつくっていきたいと考えています」(原野さん)
小学生女児のトレンドを活かした「パチェリエ推し活開発部」
ユーザーの求めるものを追い求めた結果、誕生したのが大賞を受賞した「パチェリエ推し活開発部」である。こちらを手がけたのは、入社3年めの早坂灯子さんだ。
自身も推し活に励む早坂さんは、前述した『ちゃお』の調査を知り、思う存分に推し活が楽しめる「パチェリエ」を1年かけて開発した。
「今は3人に1人に、推しがいるといわれています。
『パチェリエ推し活開発部』がこれまでと違うのは、缶バッジがズレずにつけられるクリアポケットや、14枚ずつ入れた6色の推しカラーのピース、専用の中袋なども販売しているところです。また、『パチェリエ』はキットごとにレシピに沿ってつくっていくのですが、これは工夫次第で世界に一つのオリジナルバッグやポーチをつくれる推し活仕様です」(早坂灯子さん)
例えば、公式からはグッズなどが供給されていないキャラクターを推す人もいる。そんな場合も、自分でつくったアクスタやカードなどを入れることで、推しをアピールすることが可能だ。また、推しが2人いるとか、チームカラーと推しカラーの2色を使いたいなどといった場合も、色の組み合わせ次第で推しを一気に推せる。なんとも推し活がはかどるではないか!
実際、「パチェリエ推し活開発部」は小学生のみならず、大人の女性にも大好評だという。その証拠が「#痛パチェリエ」の盛り上がりというわけ。
オールエイジが愛せるものに
「パチェリエ」シリーズは、2028年で10周年を迎える。また、「パチェリエ推し活開発部」が大人にも好評なこともあり、原野さんは「パチェリエ」を「3世代で楽しめる、オールエイジが愛される玩具に育てたい」と意気込む。
「『パチェリエ』は、一度つくって終わりではありません。ジョイントを外せば、またちがう配色や形にして楽しむこともできます。もっと自由に遊べるよう、パーツ売りや拡張パックなど、唯一無二のデザインができるようにしていくのが目標です。
そのためにも今は、玩具売り場にサンプルを置き、試着できるようにしたり、イベントで体験会を開いたりするなど、『パチェリエ』に触れてもらう機会をつくっています」(原野さん)
子どもの頃、夢中になっていた玩具やキャラクターを、大人になり再び愛するキダルトが増え、平成女児ブームもきているように。「パチェリエ」とともに子ども時代を過ごした人たちが、自分の子どもと一緒にまた遊んでほしいと、原野さんは続ける。
「パチェリエ推し活開発部」は、その想いを後押しする存在にもなりうるのではないだろうか?
取材・文/ニイミユカ
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