今年も9月にアップルの新製品が多数発表、発売された。注目を集めたのは、アップル初の折りたたみモデルである「iPhone Duo」だが、すでに発売されているもので、個人的に注視していたのが、「Apple Watch Series 12(以下Apple Watch 12)」だ。
ぱっと見の変化はほぼなく、バッテリー持続時間も変わっていないため、旧モデルからの買い替えをためらっている人もいるだろう。筆者も、昨年Apple Watch 11を購入したばかりであり、今年は見送るつもりだったが、興味深い新機能が多数利用できることから、結局1年で買い換えている。
ここでは、2026年10月初旬時点でのレビューを、期待値込みでお届けしていく。1年での買い替えを推奨するわけではないが、中古の旧モデルを買うか、思い切って新モデルを買うか迷っているといった人の参考になれば幸いだ。
ヘルスセンシングシステムの刷新と「準備度」の追加
見た目の変化は乏しいApple Watch 12だが、大きく変わったのがヘルスセンシングシステムだ。

例えば、緑色LEDが皮膚に向けて光を発し、血流の変化を検知するフォトダイオードは、従来の4つから8つに倍増。心電図などの検知に使われる電極は、従来の2極から32極へと増加している。
これにより、短時間で正確な計測ができるようになった。自動心拍数測定は、5分に1回だったものが、5秒に1回に。心拍変動(HRV)の計測は、2〜4時間に1回だったものが、5分に1回にアップデートされている。
短時間での計測ができるようになったことで、新たに追加されているのが「準備度」という指標だ。アクティビティデータや日中と夜間のバイタル値、睡眠データを分析し、包括的な身体の状態を、0から10まで段階的に評価する。前日のデータだけでなく、直近のデータも参考にし、総合的な点数を出しているとのことだ。

これまでも睡眠スコアをはじめとし、身体の状態を数値化する機能はあった。他メーカーのウェアラブルデバイスにおいても、包括的なスコアを出す取り組みは行われており、近年のトレンドをしっかりと抑えた機能といえる。
Apple Watch 12の準備度は、ただスコアを出すというわけではなく、スコアをもとに、「これくらい身体が元気だから、今日はアクティブに動いていいよ」「身体が疲れているから、今日はゆっくり過ごしてね」といった形で、その日の行動指針にしてもらうためのもの。準備度の確認をヘルスケアアプリではなく、フィットネスアプリにて行うことからも、この思想が読み取れる。
身体の状態を表す機能ながら、iPhoneからはフィットネスアプリを開かなければ確認できないのは面倒だ。Apple Watchのフル機能を十分に活用するために、Watchアプリ、ヘルスケアアプリ、フィットネスアプリの3つを使い分けなければならないのは、流石にややこしいと感じる。
とはいえ、準備度のという新機能は、参考にするかは人それぞれだとしても、ウェアラブルデバイスのパーソナライズ化をはっきりと感じられる。個人に寄り添った機能は、高度化するAI機能との兼ね合いもいいため、計測したデータを、今後どのように活用していくのかという期待感もある。
なお、準備度を表示するためには、最低7晩以上の睡眠データを収集する必要がある。購入後すぐに利用できる機能ではないという点は、予め把握しておくべきだろう。
S11チップ搭載でジェスチャー操作が快適に
Apple Watch 12には、S11チップが搭載される。スマホと比較しても、処理能力の向上を感じにくいスマートウォッチだが、今年は確かなアップデートが感じられている。
チップ更新による新機能の多くは、これからアップデートにて対応していくものとなるが、現時点でも体感できるのが、タップ操作の精度向上だ。

Apple Watchには、人差し指と親指をタップすることで、画面に触れずに受話、スクロールといった操作が行える機能がある。この精度が向上しており、誤操作が明らかに減っている。
既存のApple Watchユーザーにおいても、タップ操作はあまり使わないという人もいるだろうが、片手が塞がっているシーンでも、スクロールといったコントロールができるのは便利だ。ワークアウトの開始といった操作も、両手でApple Watchを触る手間が省ける意義は大きい。
また、ジェスチャー操作の精度向上は、新たに追加された「Siriモジュラー」という文字盤との兼ね合いがいい。上に日時、下にショートカットが表示される文字盤で、中央にはスマートスタックの先頭にあるウィジェットが表示される。

スマートスタックは、タイミングごとにユーザーに関係のあるウィジェットが表に出てくる仕組みになっており、スクロール操作で、複数のウィジェットを確認できる。Siri AIがより賢くなり、パーソナライズ化が進めば、ジェスチャー操作を使って、サクッとチェックをする機械もどんどん増えていくだろう。
アップデートでSiri AIが日本語対応予定
肝心のSiri AIだが、日本語対応は10月中を予定しており、執筆時点では従来の機能しか利用できていない。
Siri AIが日本語対応すると、メールの記載内容など、パーソナルなコンテクストをSiriの結果に反映できるようになる。これにより、「⚪︎⚪︎さんとの食事はいつ、どこでだっけ?」のような、細かな情報までSiri経由で確認できるようになる。
新モデルの目玉機能であるAudio Intelligenceは、主要機能が4つ。うち2つは発売時点で利用でき、残り2つは年内に対応予定とされている。
現在利用できる機能の1つが、サウンド認識。ドアベルやサイレンなどを検知する機能だが、現時点では手元に通知が来ていない。
わかりやすい新機能が音楽認識。これまでもShazamアプリにて、周囲で流れている音楽を検索する機能は利用できたが、認識速度が飛躍的に上がっており、瞬時にサーチできるようになっている。

従来は、周囲の音楽をApple Watchで検索しようとすると、アプリやウィジェットからShazamアプリを起動し、数秒間かけて検索をするというフローが必要だった。Apple Watch 12では、音楽が流れている際に、スマートスタックにShazamが表れ、ワンタップで瞬時に楽曲情報が現れる。利用頻度は人それぞれだろうが、既存機能が高速化することで、実用性が向上している印象だ。
年内にアップデート対応予定となっている機能が、直近15秒の会話をテキスト化する「Live Rewind」、1日の会話内容を要約し、後から振り返れるようにする「Siri Recap」だ。
いずれもまだ試せていない機能であるため、使い勝手の紹介はできないが、期待値は高い。どこまでの会話をテキスト化し、どれほど要約するのかは未知数だが、これまで行われていた録音、議事録作成といった作業が、抜本的に変わっていく可能性すら秘めている。
筆者は仕事柄、取材時には録音をし、後から文字起こしをしたり、聞き返して原稿にする機会が多い。こういった作業も、概要はSiri Recapで確認し、細かな部分だけ文字起こしデータをチェックするといった流れに変わるかもしれない。
一方で、プライバシー面での懸念があるのも事実だろう。Audio Intelligenceの機能は、常に録音をしているのではなく、聞こえた会話をそのまま文字に起こし、テキストのみが残る状態になるため、音声データを保存しているわけではないものの、会話が全て残るという仕組みを快く思わない人も出てくるはずだ。
機能を理解し、納得して購入する人はともかく、Apple Watch 12を使っている人と会話をする人の発言も残ってしまう部分が課題といえる。この辺りは、アップルがどのような形で機能を実装し、残すテキストについて、ユーザーがどこまでの決定権を持てるようになるのかが重要になるだろう。
外観は変わらずも中身が飛躍的に進化したApple Watch 12
Apple Watch Series 12は、見た目やバッテリー持ちに大きな変化がないものの、ヘルスセンシングシステムの刷新による「準備度」の追加や、S11チップによるジェスチャー操作の精度向上など、日常の使い勝手を高める実用的な進化を遂げている。
筆者が1年での買い替えに踏み切った最大の理由は、日本語対応やAudio IntelligenceをはじめとするAI機能への高い期待値だ。会話のテキスト化や要約機能は、日々の作業や記録のあり方を根本から変える可能性を秘めている。
一方で、常に会話がテキスト化される仕組みに対しては、プライバシー面の懸念や周囲の心理的抵抗も予想される。今後のアップデートでアップルがどのような配慮や制御機能を提供するかが、普及の鍵を握るだろう。
取材・文/佐藤文彦




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