「麻辣湯」に続く〝ネクスト中華〟として、いま注目を集めている「ビャンビャン麺」。
中国・陝西省発祥の幅広い麺料理で、一本の麺を長く伸ばして作るのが特徴。モチモチとした食感と香辛料を効かせた味わいに加え、その難解な漢字も話題となった。
2026年に入り、「第2の麻辣湯」として再び注目を集めており、検索数はこの1年で2.2倍に増加。コンビニでも商品化されるなど、専門店の枠を越えて広がりを見せている。
なぜ、いまビャンビャン麺なのか。東京の〝ガチ中華〟の街・池袋と、日本有数の中華料理街・横浜中華街を訪ね、その人気の背景を探ってみた。
実は2019年から話題に!「ビャンビャン麺」がいま再注目される理由
日本でビャンビャン麺が知られるようになったのは、2019年頃からだ。首都圏を中心に専門店などで提供されるようになり、幅広の麺や独特の味わいに加え、「ビャンビャン」という名前や本来の漢字の難しさもSNSなどで話題になった。
また、2020年には、セブン-イレブンからビャンビャン麺を使った商品が登場。専門店だけでなくコンビニでも販売されたことで、徐々に身近な料理として知られるようになった。その後も冷凍食品などの商品が登場し、店で食べるだけでなく、自宅でも楽しめる料理として広がっていった。
こうした現在の広がりを支えている背景のひとつが、中国各地のローカルフードへの関心の高まりだ。これまで日本ではあまり知られていなかった料理も、SNSなどを通じて知られるようになり、「食べたことのない中華を食べてみたい」という人も増えている。
さらに、麻辣湯の人気によって、辛味や香辛料を使った中国料理への関心が高まったことも大きい。ビャンビャン麺は、こうした流れの中で「次に食べてみたい中華」のひとつとして、注目を集めるようになっている。
では、現在のビャンビャン麺は、実際の店でどのくらい人気なのか。まずは東京・池袋の〝リアル中華〟を訪ねてみた。
池袋のリアル中華〟で調査!ビャンビャン麺は本当に人気?
池袋の北口に着くと、中国語の看板が目に入る。通りを歩けば、中国料理店や中国食材を扱う店が次々と現れ、店先から中国語の会話が聞こえてくる。横浜中華街のような観光地とは異なり、中国人の暮らしが街の中に溶け込んだような雰囲気だ。
池袋に中国人コミュニティが形成され始めたのは1980年代後半以降。中国人留学生の増加などを背景に、1990年代末には中国人向けの店が増え、2003年には研究者の山下清海氏が「池袋チャイナタウン」と名付けている。
そんな池袋には、中国各地の料理を味わえる〝ガチ中華〟の店も多い。ここでは、ビャンビャン麺を提供する2店舗を訪ねてみた。
1店舗目は、若者だけでなく中国人にも人気の「凡記 西安肉夾饃(シーアンロージャーモー)池袋本店」。実際に筆者も、中国人の知人からおすすめされた店だ。平和通りを歩いていくと、周囲の喧騒から少し離れるように、こぢんまりとした店が現れる。店内はどこかほっとする雰囲気で、中国のBGMが流れ、本場・西安の料理を気軽に楽しめる。
今回は、「豚の角煮ビャンビャン麺」をオーダー。ビャンビャン麺を食べるのは初めてだったが、実際に食べてみると、もちもちとしていて柔らかい。なるほど、若い世代に受け入れられているのも納得できる。
食べる前は、名古屋の「きしめん」のような食感を想像していたが、実際にはきしめんよりも弾力があるのが印象的だ。スープも豚の臭みは感じられず、優しい味わいでクセがない。ビャンビャン麺を初めて食べる人にも、ちょうどいい味付けだと感じた。
2店舗目は、「友誼食府 (ユウギショクフ)」。まさに池袋の〝中華エリア〟を象徴する、フードコート型の中国料理店だ。複数の店舗がひとつの空間に集まり、中国各地の料理を楽しむことができる。
雑居ビルの4階に入っているため、初めて訪れると少々分かりにくいが、エレベーターを降りると、中国の食堂さながらの空間が広がっている。店内にはさまざまな料理のメニューが並び、中国語が飛び交う。池袋にいながら、まるで中国を訪れたような気分になれる場所だ。
訪れた時間帯にも、店内には次々と客が入ってきた。複数の店舗から好きな料理を選べることもあり、ビャンビャン麺だけでなく、さまざまなメニューを目当てに足を運ぶ人も多いようだ。
筆者がオーダーしたのは、「元祖つけビャンビャン麺」。1店舗目の「凡記 西安肉夾饃」の麺と比べると、こちらは本場さながらの太さと幅に驚かされる。
先ほどと同様に弾力のある麺だが、手打ちならではの力強い食感は、こちらのほうがより感じられた。つけ汁は辛さを覚悟していたものの、意外にも食べやすい。麺に絡めることで辛さがほどよくなじみ、まろやかな味わいになるのもいい。
ちなみに、「元祖つけビャンビャン麺」は、プラス200円で麺を1本追加できる。もう少しボリュームが欲しい人は、麺を追加するのもいいだろう。
また、同じエリアには「友誼商店(ユウギショウテン)」もあり、中国の食品や調味料などを気軽に購入できる。ビャンビャン麺を食べたついでに、店内をのぞいてみるのもおすすめだ。
2店舗を実際に食べ歩いてみると、ビャンビャン麺が注目を集めている理由も少し分かった。幅広でモチモチとした独特の食感は、日本で親しまれてきた麺とはまた違った面白さがある。こうした本場の味を気軽に楽しめることも、池袋の〝リアル中華〟の魅力だ。
中国の食文化に興味があるなら、今回訪れた2店はぜひチェックしてみてほしい。
横浜中華街ではどう食べられている?ビャンビャン麺のいま
池袋での「ビャンビャン麺」の人気が少しずつ見えてきたところで、今度は関東を代表する中華街、横浜中華街へ。数多くの中国料理店が軒を連ねるなか、ビャンビャン麺の評判が高い「東珍味(とうちんみ)」を訪ねた。
今回筆者がオーダーしたのは、「トマトと和牛バラ肉入りビャンビャン麺」。
こちらのビャンビャン麺は、池袋の2店と比べると、モチモチとした柔らかさがより感じられた。トマトの酸味に、柔らかな牛肉とパクチーが合わさり、女性にも好まれそうな味わいだ。スープもクセがなく、インバウンドの旅行客をはじめ、幅広い層に受け入れられているように感じた。
さすが行列ができるだけあって、満足度は非常に高かった。池袋の〝リアル中華〟が本場の味をそのまま楽しめる店だとすれば、「東珍味」は、より食べやすく、日本人の味覚にもなじむように仕上げられている印象だ。どちらも異なる魅力があり、その日の気分や好みに合わせて選べるのも面白い。
池袋では、中国人コミュニティを背景にした〝リアル中華〟の選択肢のひとつとして根付いているのに対し、横浜中華街では、観光客にも知られる中国料理のひとつとして提供されている。店によって味付けや麺の形にも違いがあり、「ビャンビャン麺」という名前は同じでも、店ごとに楽しみ方は異なる。
こうして池袋と横浜中華街の両方を訪ねてみると、ビャンビャン麺は突然現れた新しい流行というより、以前から日本に存在していた料理が、いまの食トレンドと重なりながら、改めて注目を集めていることがわかる。
麻辣湯をきっかけに、中国のローカルフードに興味を持つ人が増えている。次にどんな料理が日本で広がっていくのか。その候補のひとつとして、ビャンビャン麺はこれからさらに身近な存在になっていくのかもしれない。
取材・文/Tajimax




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