BMWの新しいクラスとなるノイエ・クラッセ第一弾はBEVのクロスオーバーモデルiX3
BMWの新型車、ノイエ・クラッセの第一弾モデルとなるBEV(電気自動車)のiX3が登場した。ノイエ・クラッセとはBMWが1961年から1972年まで製造していた中型車の総称であり、その成功体験を現代に蘇らせたドイツ語で「neu新しい Klasseクラス」という意味である。日本に上陸したノイエ・クラッセ第一弾がこのiX3で、まずはBEVの2モーター4輪駆動となるiX3 50 x Driveが投入されている。
BEVならではのキドニーグリルや埋め込み式ドアアウターハンドルなどデザイン性に富むエクステリアが際立つ
新しいBMWのBEVらしいグリルレスのイルミネーション付きキドニーグリルや照明付き埋め込み式ドアアウターハンドル、電動開閉式充電フラップなどが特徴的なエクステリアは全長4780×全幅1895×全高1635mm。ホイールベース2895mm。試乗車のiX3 50 x Drive M sportの車重は2330kgに達する。
前後モーターによるシステム最高出力469psのハイパフォーマンスを発揮する。フロントモーターは167ps、26.0kg-m。リヤモーターは240ps、44.4kg-m。BMWらしくリヤ駆動に重きが置かれていることが分かる。システム最高出力は469ps、65.8kg-mという強力なもので、最高速度は210km/hだ。
一充電走行可能距離は国内で手に入るBEV最長の906km(835km)を達成
iX3はBEVであり、気になるのが一充電走行距離だが、20インチタイヤを履くBMW iX3 50 x Drive(982万円)は国内で売られているBEV最長となる906kmを達成。この21インチタイヤが奢られるiX3 50 x Drive M sport(1034万円/OP別)で835kmという十分な航続距離を実現。交流電力量消費率は150Wh/km(WLTCモード)とされている。なお、最大320kWの高速充電に対応し(日本では昨夏から最大280kWの充電器が設置され始めている)、速やかな急速充電が可能。これなら長距離ドライブも安心であり、無充電で往復できるケースがほとんどだろう(例/東京・軽井沢往復約360km、東京・那須高原往復約400km)。
ダッシュボード左右いっぱいに配置されるBMWパノラミックビジョンの機能&デザイン性も大きな魅力
エクステリア同様、デザイン性の優れたインテリアも新鮮かつ超先進的だ。新しいオペレーション・システムX、BMWパノラミックi Driveを採用し、ダッシュボード奥にレイアウトされた左右のAピラーをつなぐBMWパノラミックビジョンはメーター機能のほか、様々な表示内容がドライバーの好みによって表示できる。また、新型3シリーズにも搭載される、デザイン的にも特徴的なドライバー側に17.5度傾いた17.9インチの異形センターディスプレイも採用され、乗り込んだだけで新時代のBMW、ノイエ・クラッセを実感できるというわけだ。
試乗前にBMWの広報スタッフからステアリングスイッチ、ディスプレイのタッチによって行える様々な機能をレクチャーしてもらったのだが、その内容は多岐にわたり膨大。オーナーになっても「どこまで使いこなせるか!?」である。その一例を紹介すると、MY Modesにある走行にかかわるパーソナル設定でSPORT、EFFICIENT、SILENTがチョイスできる。が、いわゆるNORMALモードというのはない。そのパーソナル設定では駆動系をECO/COMFORT/SPORTから選べるほか、走行レンジDでの回生、ステアリングのCOMFORT/SPORTも設定可能。フーッ、走り出す前にやること、覚えることは盛りだくさんすぎる・・・。
17.9インチの異形センターディスプレイで様々な機能を設定できる
BEVに不可欠な充電の項目では充電モード、バッテリーに最適、ロードルートの設定、出発予定、バッテリーの準備、AC制限などの項目が並ぶ。走行システム画面では電費はもちろん、駆動システム、エレクトロニクス、エアコン、バッテリーマネージメントの項目があり、BEVとしての車両の状態が一目瞭然となる。
細かい話ではエアコン吹き出し口の風向き、インテリアライト、今冬から開始されるAssisted Driving Pro の130km/hまでのハンズオフドライブ、オートマチックレーンチェンジアシスト、疑似エンジン音、シート位置メモリー、ヘッドアップディスプレイ、そして運転席のマッサージ機能などまでが、ディスプレイで設定、調整できる。
目線でドアミラー調整やレーンチェンジアシストが行える新機能を搭載
しかし、それ以上にiX3らしいのは、BMWの新機能である目線による各種設定機能だ。例えばドアミラーの角度を調整する場合、ドライバーが左サイドミラーを見ればドアにあるミラー調整スイッチが左用になり、右サイドミラーを見ればスイッチが右側用になるという仕組み(ルームミラーのカメラが認識)。また、レーンチェンジアシストもACC起動、目的地設定済みという条件下で目線を右サイドミラーに向ければそれがスイッチとなり「車線変更しますか」という案内があり、それに応えればレーンチェンジアシストを行ってくれるのだから先進的だ。それだけしっかりドライバーの状態をモニタリングしているということでもある。
キーを携えて運転席に乗り込めば、スイッチ操作なしでiX3は起動する。ブレーキを踏みながらセンターコンソールにあるシフターを手前に引き、Dレンジに入れればスタート。その周りにはパーキングブレーキ、ハザード、ボリューム、デフロスター、デフォッガーの物理スイッチも並んでいて分かりやすい。
車重2330kgを感じさせない軽快で人車一体感ある走りはさすがBMW
21インチタイヤを履くiX3 50 x Drive M sportを走らせれば、車重2330kgを感じさせない軽やかさで発進し加速していく。走り出しからそう感じさせるのは、さすが強力なモーター駆動によるBEVらしさだろう。街中のカーブ、交差点でステアリングを切れば、なるほどBMWらしい正確で軽快な回頭性と操縦性を披露。人車一体感が強く、車幅を感じにくい走りやすさがある。クルマの姿勢は基本的にフラットに徹し、アクセルペダルを踏みつければ息をのむリニアな加速を、FR感覚に近いドライブフィールとともに味わせてくれるから痛快だ。なお、日常走行ではブレーキング操作の98%で摩擦ブレーキを使用しない回生ブレーキ(エネルギー)で実現しているという。前車との接近、カーブ、信号などで自動減速してくれる機能もありがたい(アクセルOFF時)。
また、正確なボイスコントロールも行ってくれるセンターディスプレイのナビも優秀。周囲の車両はもちろん、人や自転車などの存在、動きもかなりリアルに画面に映し出してくれるから安心・安全だろう。カメラの認識機能はかなりハイレベルということだ。
静粛性と21インチタイヤの乗り心地は1000万円級のBEVとしてはいまひとつ
ただし、BEVとして恐ろしく静かか? 素晴らしく快適か?と聞かれれば、YESとは言い難い。21インチタイヤのロードノイズは抑えられているものの、1000万円級のBEVのライバルのように車内が外界と完全に遮断されたかのような静かさに包まれるか、と言われればそうでもない。
そしてもっとも気になったのが乗り心地。良路なら文句なく快適なのだが、一般道、高速道路のジョイントや路面の突起を乗り越えるシーンではけっこうな突き上げ、音と振動、揺すられ感に見舞われる。ここは乗り心地が硬い、柔らかいという話ではなく、1000万円級の先進BEVとして厳しい評価とならざるを得ない。
聞けば、20インチタイヤを履くiX3 50 x Driveのほうは乗り心地面で優位とのことで、乗ってもいないのにこう言うのもなんだが(現時点でその試乗車は我々には提供されない)、この素晴らしいデザインを全身に纏った、BMW流の走る歓び、運転する楽しさを携えたiX3を快適な超先進BEVクルーザーとして乗るのであれば、20インチタイヤ装着グレードの試乗、両グレードの比較試乗が欠かせないと思えたのも本当だ(あるいは叶うのであればM sportのタイヤのダウンサイズか)。20インチタイヤを履くiX3 50 x Driveの試乗が叶えば、改めて報告させていただきたい。
文・写真/青山尚暉




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