元テレビ朝日アナウンサーの松井さんは大のプラモデル好きとして知られている。本書はその名の通り、プラモデルと共に歩んだ松井さんの軌跡を綴ったものだ。今ではタミヤの模型史研究顧問を務めるほどだが、そこには多くの縁があったと語る。
「最初のご縁はやはりタミヤのプラモデルとの出合いですね。小3の時、初めて買ってもらったんです。それも、吟味を重ねて選んだものでした。当時は動かして遊べるプラモデルが流行っていましたが、私は走りも動きもしないジェット機を見て、〝これだ!〟と思ったんです」
木製模型メーカーだったタミヤがプラモデル事業に参入したのは1960年。松井さんが初めて手にしたのは12年後の72年のこと。「当時、完成度の高さと造形の美しさから、すでに〝世界のタミヤ〟と呼ばれていました。私も子供ながらに機関誌の『タミヤニュース』を小6から定期購読するぐらい魅了されていて。その後、プラモデルから少し離れた時期もあったのですが、アナウンサーになって生活に余裕が出てきたこともあり、機関誌のバックナンバーを取り寄せようとしたんですね。そしたら、私の名前を見た社員の方から連絡が入り、『タミヤニュース』で取材を受けることになって。そこからタミヤさんとのお付き合いが始まりました」
松井さんの活動はプラモデル制作だけにとどまらない。独自にタミヤの歴史を調べ、社員すら見逃していた間違いを自身のサイトで正していったことで、当時の田宮俊作社長も一目を置く存在となる。一方、本職でも思わぬ形でプラモデラーとしての技術を発揮することに。
「テレビ朝日では報道番組で模型を使って解説することが多かったんです。その制作を私が担当しました。市販のプラモデルで応用できればいいのですが、なければ自分でゼロから作るしかない。北朝鮮の万景峰号のほか、東日本大震災時は福島第一原子力発電所原子炉1号機をフルスクラッチで制作しました。おかげで船や原発の仕組みにも詳しくなるなど、思わぬ相乗効果も生まれて。こうした仕事と趣味の結びつきも、不思議な縁だったなと思います」
松井さんは3年前にテレビ朝日を退職。現在はフリーでアナウンサー業をしつつ、地元の富山県南砺市で地域創生活動を行なっている。
「ほかにも、石坂浩二さんたちと結成したプラモデルクラブの『ろうがんず』では、幅広い世代にプラモデルの面白さを伝えていくイベントを開催しています。運のいいことに、今は好きだったことがどれも仕事につながっています。こうした背景には、自分が昔から積極的に行動する性格だったというのがあると思います。失敗してもいいから飛び込んでみる。そのちょっとした行動が、思わぬ結果を生み出すんですよね。その意味でも、もし今セカンドキャリアに悩む人がいたら、この本を読んでいただき、行動に移すきっかけになってくれたらうれしいですね」

元テレビ朝日アナウンサー 松井康真
ついやすまさ/1963年生まれ。富山県出身。元テレビ朝日アナウンサー。2023年、OFFICE ユズキを設立。24年、タミヤ 模型史研究顧問に就任。著書に『タミヤの動く戦車プラモデル大全』(大日本絵画)など。

『私とプラモデルの半世紀 大事なことはタミヤが教えてくれた』
著/松井康真 中央公論新社 1056円
タミヤのプラモデルと運命的な出合いをはたした幼少期、アナウンサーになるために留年した大学時代など自身の半生に影響を与えた出来事の数々。夢や趣味を仕事につなげていった著者の厚く濃い記録が一冊に。
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